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行き当たりばったり勇者譚  作者: 青い傘
第四章 聖女機関と聖女
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聖女機関  右の道 前編

 やや時は遡り、分かれた先では勇者が聖女に命の尊さについて説教をしつつも、一部屋ずつ確認していた。


「いい?君は聖女の前に一人の人間なんだ。君に聖女の役割を押し付けてくる人たちがいても

 最終的に決めるのは君自身なんだから、必要とされるかどうかも関係ないんだ」


「んーと、その理屈だとあーし自身が自分を要らないと思っている時点でいつ死んでもいいことになりません?」


「……じゃあ、分かった。僕よりも先に死ぬことは許さない。僕の知っている人が死んでしまうことは僕の存在を否定することになる。だから、僕のためにも死ぬんじゃない」


 途中からは説得を諦めたのか、違う方向からのアプローチで聖女に死なないように説く。


「…はいはい。分かった、分かりましたー。勇者様のためにも死なないであげます」


 お互いが納得しない、しかし最大までの譲歩をしたような結末。そんな双方の意見の衝突も終えたところで踏み入った部屋は今までの部屋とは趣が随分と異なっていた。


 真っ先に目に入るのはいくつかの仕切りで区切られた牢。そして鎖に繋がれた若い女性たち。彼女たちは精々、10歳にも満たないくらいでないのだろうか。意識もないのが大半で、あっても虚ろな目でこちらや宙を見るものなどが多い。


「これが人のやること?」


 アイリスの言葉も思い出し、余計に機関に対しての感情はもはや殺意に変わりそうだった。


 それは聖女も聖騎士も同じようだが、その感情にはさらに気づけなかったことに対しての悔しい気持ちもあるのだろう。口のところに力が入っている。


 そしてそれは勇者にも伝播するように、彼の唇からも血が出ていた。


「……ごめんね。まだ僕たちじゃ助けられない。聖女様、この部屋に結界だけでも張っておいていただけますか」


 勇者もまた、自分では彼女らに何もしてられないことを理解できていた。だから、せめてこれ以上の悪化を避けるため、結界を張ってもらう。


「これで一安心。一応、結界内にいる人たちのみに回復魔法がかかる設定にしてあるんで、戻ってくる頃には落ち着いているんじゃないかなぁ」


「あぁ、助かったよ」


 そんな部屋をいくつか同じように結界を張り、とうとう廊下も行き当たり、恐らくは最後の部屋に辿り着いた。


 扉も金の装飾などが付いていて、重厚な雰囲気の両開きの扉。


 いかにも高そうな扉を押して中に入ると、三人の男女がいた。


「待っていたよ」


「お待ちしておりましたわ」


「……」


 順々に白髪でありながらもどこか若々しい男性、扇子で口元を隠しながらも何処かニヤついているのを隠しきれていない妙齢の女性。そして、黙っているだけのやや筋肉質な青年が勇者たちを出迎えた。

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