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行き当たりばったり勇者譚  作者: 青い傘
第四章 聖女機関と聖女
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聖女機関  左の道 後編

 レオナンドが持つ魔剣はいくつかある。消滅した赤の魔剣を含めて、3本の魔剣を帯剣していた。主に普段使いしているのは黒の魔剣。単に頑丈性に優れ、刃こぼれも血で切れ味が鈍ることもない。ただ使うことに特化した魔剣である。


 そして、今抜いているのが白の魔剣。この魔剣の特殊なところは魔法に対して圧倒的な力を誇ることが出来る点にある。例えば、バロンの繰り出した魔法を両断することは本来必要ない。何故なら、その剣で触れるだけで魔法を無力化、吸収できるからである。ただ、そのことを悟られないようにするための剣での対処である。


 弱点は魔法しか吸収しかできないため、竜によるただの炎や魔力操作によって打ち出されるレヴィアのような大波などの自然由来のものは吸収できない。


 だが、目の前のバロンであればその心配もないだろうと、白の魔剣を抜いている。


 バロンのところまで切り込んだレオナンドだが、その攻撃は上手く捌かれた。バロンがいつの間にかに手にしていたのは小ぶりのナイフで、こちらが一撃入れようとするたびに二撃、三撃とカウンターを仕掛けてくる。それでありながらも魔法の同時展開は留まることを知らない。


 さらに、後ろではゴーレムのようなものがアイリスやミーシャ、リミーナに襲い掛かっている始末。本当にけた外れの魔力量と緻密さである。


 アイリスとリミーナがゴーレムを捌き、ミーシャがバロン及び魔法への対処、迎撃。レオナンドはバロンとの斬り合いと誰かがドジを踏めばそれは即ち、死に直結する。


 まさに目の前のことに対処するのに手一杯。それがバロンの狙いでもあった。


 はじめに倒れたのはリミーナであった。実力もこの中では一番低いのだから当然である。しかし、その倒れ方は少々特殊であった。攻撃を受けたわけでもなく、前向きに倒れ伏したのである。


「………まさか睡眠魔法」


 あれほどまでの魔法の同時展開に合わせてもう一つ魔法を展開していたという。それもミーシャに気づかれないようなレベルまで効力を下げて。


 次に倒れたのは無論アイリスだが、ほぼ同タイミングでレオナンドも倒れた。これはミーシャが魔法に対する耐性が高かったことに起因するので何もおかしくはない。


「と、随分時間がかかってしまいました。空気にも混ぜるべきでしたかね?それにしてもこの鎖…飛んでもなく硬いですねぇ。上位系にしか効かない、この部屋でしか意味がない、限られた条件下でのみ発動するタイプ。これだけは人間をほめるべきですか」


 最期まで眠気に抗っていたミーシャも倒れたあと、バロンはすっかり眠ってしまった彼女らを集めるために浮遊魔法で浮かべることで自分のもとに運ぶ。


 最後の一人、ミーシャがその足元に運ばれる。


「中々、面白い人材ですからね。他の魔族に奪われるのも癪、殺すのにも勿体ない。持ち帰るしかありませんよねぇ」


 ニタァとそんな言葉がふさわしいほどに大きく開かれた口はもう二度と開かれることはない。


 何故なら、その口を裂くように斬撃を加えたのがレオナンドであったからだ。


「貴様ァァ」


 その言葉を紡ぐことは出来なくともその表情がすべてを語っていた。


 バロンが瞬時に生み出したのは全属性を混ぜただけの魔力の塊。その威力はこれまで見てきたすべての攻撃をも超えるであろう。


 まともに食らえばであるが。


「うぉぉぉぉ」


 気合を入れるように発した言葉と共にバロンの攻撃を叩き斬る。いや、これほどまでの至近距離だ。十分にバロンにまでその刃は到達する。


 まさしく一刀両断。あんなにバロンが苦労した鎖ごとレオナンドはぶった切る。


 だが、さすがは魔族。その生命力も桁外れで、真っ二つにされた状態でも意識があるようだ。


「ぐぬぬ。まさかこのバロンが人間ごときに敗北を喫することになるとは。だが、魔王様はそう簡単に倒せはしまい。その圧倒的な力の差に自分たちの無力さを知るがいい」


 まだ、言いたいことがありそうなバロンであったが、力尽きたようで屍と化したようだ。


「とはいえ、こいつらも当分は目を覚まさないだろうし、後は勇者に任せるしかあるまい」


 レオナンドも緊張の糸が切れたのか、少しの時の後、目を瞑ったのであった。


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