聖女機関 入口
「聖女様ー、バンザーイ」
バンザイの後に繰り出された言葉に衝撃を受けるも、目の前にいたはずの聖女の姿が無くなったのだ。信用するしかない。
「「「聖女様ー、バンザーイ」」」
世界が反転するようにグルグルと視界が回る。落ち着いた後、目を開ければ、今までとは違う空間にいた。そこは無機質で飾り気のない白い部屋。
「あと、揃っていないのは赤の聖騎士だから…アンドレか。それにしてもなんだあの掛け声は今まであんなことを自分の部屋でさせていたな。そしてなぜバレない」
「まぁ、あそこの部屋は、防音な上にあんまりあーし居なかったから」
「なんで?」
「意外と聖女って忙しい忙しいって感じでぇ。ほら、今日も煎餅食べてただけじゃなくて書類作業してましたし~?」
言い訳がましい聖女は放っておくとしてもアンドレの安否は気になる。
「アンドレのことは残念ですが、放って進みましょう。上手くここに転移できなかっただけかもしれませんし、もしも何かあったのだとしても私たち聖騎士としてその任に着いた時から覚悟は出来ています」
黄色のバンダナの聖騎士がそのように発言をすれば、もう一人の聖騎士であるリミーナも同意する。
「そうですね。私たちが勇者様や聖女様にとっての重荷になるのはとても嫌ですね」
「でもそれじゃあ…」
「いや、確かにここは進むべきだ。相手の本拠地で足踏み状態になるのは避けるべきだろう。しかし、彼のことも念頭に置いておこう。ここのどこかにいるかもしれない」
レオナンドの判断に従うように勇者は一つしかない扉を開けた。だが、その扉は人一人通れる隙間を生み出す間もなく爆発した。
扉だけでなく、近くの壁までが爆発によって抉り取られ、焦げたにおいを辺りに充満させる。
「やったか?っ!」
部屋の向こうから聞こえてくる声に動揺の声が混ざる。
「僕もさ。人間だからさぁ。怒る時だってあるんだよね」
煙が晴れるまでの時間であちこちから悲鳴の混ざったうめき声が聞こえる。
廊下が視認できるようになったときに立っていたのは、勇者ただ一人であった。
「殺しては……いないな。おいお前、これは一体どうなっている?」
倒れていた身近な一人の頬を叩きつけ、事情を話せと詰め寄る。
「誰が貴様らなんかに話すと思う?我らの遂行なる目的も理解できない野蛮な賊めらに話すことなど何もないわ!」
その男はにやりと不敵な笑みを浮かべると、その体を膨らませ始めた。
「なっ!」
「あーしを甘く見ないでください」
常人の三倍四倍の大きさまで膨れ上がった彼は一瞬の閃光を生み出した後、先ほどの爆発とは日にならないほどの爆発を起こす。
いや、起きたはずであった。実際に男のいたところには爆発跡が残っている。だが、その跡は明らかに規模が小さい。
「ふぅー、間に合ってよかったー」
聖女が結界を上手く張ってくれたらしい。お陰でこちらの被害はゼロで済んだ。
「狂っているなこの組織は」
「流石に許せそうにないかも」
勇者の怒りも最頂点に達したのかそのうち青筋でも立てそうな勢いであった。




