聖女
目の前の彼女は見るからに高そうなソファに横になり、煎餅を頬張っている。
「うぅん?あ、勇者じゃんね」
よく見ると書類が木製のテーブルに乱雑に置かれている。聖女でも書類仕事をするらしい。
「どーも。あーしが聖女です。ま、その辺に腰かけてくださいなっと」
アイリスと同じような金髪だが、瞳の色は薄い緑色。そんな彼女は随分と砕けた口調でこちらに接してくる。親しみやすいという噂は本当のようだ。
「それと第三王子のレオ君とアイリス様にミーシャン。後は、聖騎士の人たちは……ちょっと分からないなぁ。多分本部の人だしょ?あーし、ここから動けなくて詳しくなくて、ごめんね」
「よく知っているな。変な呼び名だが」
「まーあね。結構情報が入ってくんのよ。それにあーしも興味があったし?それで、どこまで話していいの?」
見た目、口調に似合わない目線で後ろの聖騎士を見つめる。彼らの知らない情報を話すかどうか決めかねているのだろう。それは勇者たちにしても迷っていた。
「まぁ、いーや。とりあえずは今の話をするとして……」
そう言いながら慣れた手つきでお茶を入れてくれる。彼女が使用した魔道具から温かいお湯が出てきたのにはミーシャが食いついていて、お茶を入れ終わった後、その魔道具に張り付いていた。
そんなミーシャは置いといて話は進む。
「んーと?確かここミクスの前線のサポートって聞いてるんだけど……最近は大分落ち着いているしー。この機に乗じて攻め込もうっていう馬鹿な輩がいるからその意見をねじ伏せてほしいくらい?」
「んじゃ、すぐに聖女機関とやらを潰しに行けるね」
「………バカ」
勇者の失言が部屋を少しの沈黙を呼んだ。
「しょうがないですから、聖騎士の皆さんにも協力をお願いするしかないんじゃないでしょうか」
「あぁ、そうなるな」
聖女機関について、現時点で分かっていることを聖騎士ともすり合わせを行う。
「オケオケ。あーしから追加の情報。多分、地下にいると思うよ。理由は、隠れるところがそこしかないのと、あーしの結界が上手く通らなかったことがあるのが下だったからねー」
最近、ここミクスでの調査が始まったこともあって、地下はまだ調べ切っていないらしい。後はどこにあるかだけだが。
「まぁ、あーしの結界魔法とミーシャンの魔法でちょちょいのチョイでしょ」
「………どういうこと?」
「ん?使えるでしょ?空間把握する系の魔法。あーしの場合は結界に触れたものが何となく分かるから、それで空間把握をするの」
「………なるほど。考えたこともなかった」
驚いた顔をして聖女の顔を見ると、見つめ返されたのが恥ずかしかったのか俯き、ぼそぼそと独り言を呟く。
「………なら今回は地下を探すんだからいつもみたいに視界を飛ばすのは難しいかも。なら結界系の魔法で真似をする?でもそれだと同じような魔法になるから結果が同じになってしまって上手いこと行かないかも。どうせだったら違う方向性の魔法の方が信頼度的にはいい?じゃあ音はどう?音の反響で空洞があるかは分かるはず……」
「どーう。出来そ?あーしは本職じゃないから。出来れば確実性も上げたいしね」
「まぁ、こいつのことだ。出来るだろう。それじゃあ、二人で協力してよろしく頼む」
いまだにブツブツと言ってるミーシャだったが、レオナンドがまとめるようにそう言った。




