最前線へと
水の都ウィンデルでの戦いの翌日、教会でもう一日泊まらせてもらった勇者たちは次の目的地に向かうため、港にいた。
昨日散々懲らしめたイカとタコは既に足が生えそろっており、器用に復興作業の手伝いをしている。
「おぉーやってるやってる」
「うるさいべよ」
「んだ。この恨みは忘れないべ」
勇者が声をかけるように、そちらを見やれば、恨み言のように文句を言ってくる。
「それでは行きましょうか」
黄色のバンダナを巻いた男が声をかけてくる。聖剣の回収の際に同行した聖騎士、ロイである。今回の船旅にも同行し、運転をしてくれるのことだった。
というのも今回の船を出してくれるのが教会自体で、以前の相談にあった聖女機関の話の続きである。表向きは教会が勇者に協力をすると言う体なので、同行する彼らもそうだと思っている。彼らというのも、以前と一緒のメンバーでバンダナもそのままだ。
「それでどこに行くのでしょう。教皇様に同行を命じられたままなので、私たちも行先しか知らないのです」
緑のバンダナのリミーナがそう尋ねてくる。聖女機関については教会内でも極秘。彼ら彼女らであっても、入る情報はとても制限されている。だから、聖剣の回収の手伝いをするのだと思っている。
「あぁ、次は魔族との戦争の最前線に行く。俺たちの役目は最前線でのサポート。それが落ち着き次第、魔族領に踏み込むことになるだろう」
「短い間だけどまた、よろしくね」
次は最前線へと向かう。そう決めたのはレオナンドではあったが、教皇の意思も入っている。一つが聖女機関の所在がそこにあるのではないかということ。もう一つは魔族領にも聖剣が封印されているので遅かれ早かれ、乗り込むことは確定していたからである。もっとも、最終目標の魔王討伐を考えるのであれば、順当なところであるが。
聖女機関の本部がそこにある。そう教皇が判断したのは調査の結果というのもあるが、聖女機関の狂気じみた方針にある。それが『どんな犠牲も聖女を生み出すのなら、必要な犠牲』というものだ。これは捕まえた機関の人員の全員の意思であった。
そんな意思を持つ彼らが今代の聖女を間近で見れるチャンスを見逃すわけがない。それに最前線であれば、誰が消えても不思議ではない。何なら魔族を実験に使うのも容易い。
これらが聖女機関の本部が最前線にあるという根拠であった。
「では、我々はそこでお役御免ということになるのでしょうね。足を引っ張ってしまうでしょうし」
「そうですね。我らは最前線で留まり、少しでも力をなれるようにしましょう」
先に発言したのが黄色のバンダナのロイで次が赤のアンドレだ。聖騎士の実力も低くはないが、どうしてもこの場にいる四人に比べると足りない。
船に揺られること数時間。それから陸路で数時間。彼らは最前線に踏み入れた。




