水の都 ウィンデル
「あー疲れた。流石に四天王とやるには早すぎるよね」
倒れたレオナンドを横目に見ながら、こちらの方に向かってくる二つの人影の方を見やる。ミーシャとアイリスだ。
「そっちはどうだった?あ、ヒールありがとね。僕らのためじゃないだろうけど、結果的にすごい助かったから」
「えぇ、お役に立てたら何よりです。こちらは…まぁ、特には何もありませんでしたよ。ミーシャさんは新しい魔道具をほとんど使いきったらしいですけど」
「………問題ない。再現性はある」
彼女の凄いところは魔道具も自作できるところにもある。今回、魔族に使った魔道具は優に両の指の数を越していたが、既に解析済みで自作も出来るということだ。だからと言って、すべてを作るわけではないが、それでもその事実が恐ろしいといえよう。
「それで、レオナンドさんは大丈夫なんですか?もう今日はヒールを使いたくないので、一刻を争うでもなければ使いたくないのですが」
「あー、大丈夫大丈夫。力の使い過ぎで気絶しているだけだから」
「………まだまだ未熟」
「…うるさいぞ」
「………事実」
いつから起きていたのか、レオナンドはミーシャを睨みつけるが全く意に介していない。それどころか言い返してくる。
「起きてたら言ってくれればよかったのに。」
「今起きたんだ。それで状況は?」
「そちらの頑張りで軒並み片付いたようで、残りも撤退したらしいですよ。聖騎士と兵士が事前情報のおかげでいつでも動けるようになっていたのが幸いでした」
レオナンドも起き、全員が揃ったところで教会にでも戻ろうとしたその時であった。木の軋む音がしたと思えば、かろうじて無事だった船が一艘、二艘と沈んだ。
「何だ。撤退したんじゃないのか」
「そのはずですが…」
さらにもう一艘沈んだところでその正体が分かる。どこかで見たようなものが海の下から現れた。赤と白の色を持った足。軽く見ただけでも十本は超えている。
「おいらたちを騙しただなぁ」
「おらたちを嵌めただなぁ」
タコとイカである。
「だから、おいらたちはタコでもイカでもねぇ」
「おらたちは真タコと真イカだべぇ」
「いや、何も言ってないが」
「いーや、おいらには聞こえただ」
「おらもだ」
無論、思ってはいたがこうなることが分かっていた。だから、言わなかったのにと彼らは思う。
「それで?お前らの親玉は倒したわけだが」
「もーう騙されないべよ」
「んだ。そう言って返す魂胆だろうがそうはいかないだよ」
話も聞いてくれない様子に呆れた様子の一行だったが、一人だけは違った。勇者である。
「そんなのはどうでもいいとしても、船壊した分は贖ってもらうね」
にこやかに見えて黒い笑顔が二匹に向けられた。
数分後、自慢の足を切られた二匹は、食べられるか、水の都の復興作業に尽力するかの選択を迫られたのであった。




