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行き当たりばったり勇者譚  作者: 青い傘
第三章 水の都 ウィンデル
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水の都の戦い 男二人 前編

 ミーシャが魔族を実験の対象としているタイミング。勇者とレオナンドの二人は同じように海面から次々と現れる魔族を倒していた。


「ん~、さすがに多いね。ミーシャが半分以上請け負ってこれだもんね」


「あぁ。だが、お前は聖剣が新しくなって少しはやり易くなっただろう」


 まぁね、と返しながら、持っていた聖剣で魔族の首を斬り飛ばす。火山の時は鈍らの剣と同じくらいの切れ味であったが、今回の聖剣の回収によって切れ味の部分が聖剣に備わったらしく、固そうな鱗を持つ魔族ですら斬り屠っていた。


「これで終わると思うか?」


「分かってて聞いているよねぇ。どうせ親玉がいるんじゃないの。大体の物語の話にはだけどね」


 と、まぁ軽口も言えるくらいには余裕を見せている二人であったが、そうは簡単にいかない。なぜならば、これが誰かの意思で誰かが計画したものであったからである。


「もうよい。下がれ。この者たちは妾が直接、手を下そう」


 海に浮かぶ何艘かの無事な船が下から現れた二匹の海蛇とそれを使役するように従えている女性が勇者たちを見下ろしながらそう言った。


「ほらな。ボスの登場だぞ」


「レオナンドのせいじゃん。僕は左右のやるから、もう君がやりなよ」


 横目にお互いを見ながら、軽口を叩くが目線だけは目の前から離すことはしなかった。つまりはそれだけ目の前の彼女が脅威だということを認めていたことであった。


「妾は魔王直属四天王の一人、レヴィア。お前たち勇者を魔王様のもとに行かせるわけには行かない。…そう進言したのにも関わらず、魔王様は放っておけなどと仰る。危険な者を排除しないなど何故なのか」


 怒りが溜まっているのか、口調はどんどん荒っぽくなってきている。


「それに、他の四天王も傍観をするなんて、本当に魔王様のことを想っているのは妾だけ。だから、貴様らには消えてもらう」


 鋭い眼光と共に海の水が水柱としてそそり立つ。彼女が指を振ると水柱は勇者たちに生きているかのように襲い掛かる。鋭い牙をもったその姿は左右の海蛇のような形であった。


「いきなりだな」


 文句を言いながらも襲い掛かってくる水蛇を躱す。水であったはずのそれは勇者たちのいた地面を容易に嚙み砕く。だが、それだけで蛇の姿を崩しているのは吉報か。


「とんでもない威力だねぇ」


 続けて、第二、三の水蛇も襲い掛かるが再び回避する。


「どれ、次だ」


 彼女の方もいくら水で蛇を作ったところで避けられ崩れるのあれば、意味がないと感じたか、左右の海蛇が連撃に参戦する。水蛇よりも速く、威力も高い、それに加えて何度も何度も切り返し襲い掛かってくる。


「おい、勇者。何とか出来るか?」


「とりあえずはこの二匹を倒せばいんでしょ?多分斬れる」


 避けながらの会話。完全によけきれていないせいで体のあちこちに傷が出来ているが、余裕はまだあった。だが、気を抜けば、致命傷を負ってしまうのも間違いないだろう。


 だが、気は抜かない。気を引き締める。そして、斬る。


 勇者に襲い掛かった海蛇の首が無くなったのは次の瞬間であった。勇者が持つ聖剣が回避と同時に首に致命的な一撃を入れた。それにいち早く反応したのは、もう一つの海蛇であった。レオナンドに襲いかかっていたが落とされた首の復讐に駆られるように勇者に迫った。その速さは今までのどの蛇の頭よりも速い。


 しかし、その行為が二匹の海蛇の命の喪失を意味していた。勇者はその速さに追いついて見せた。最初こそ、傷を受けていたが今では余裕を持って躱していた。その速度が上がり、想定外の場所から攻めてきたとしても、回避し一撃を加えたのである。


「……妾の双蛇が敗れたか。甘く見くびっていたことをお詫びしよう。そして、やはり貴様らは危険だ。妾が自ら、殺してその首を魔王様に献上しよう」


 海の女王は確かにその両目に涙を浮かべていた。

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