帰都
行きよりも急ぐようにして船を飛ばせば、行きよりも短い時間で着くが、その分スピードが出る。それはすなわち、
「うぅ、気持ち悪い」
このような犠牲者も出やすいわけである。
「………バカ」
彼女はもう学習をしたようで、酔い止めの魔法を馬車と同じく使っている。だが、勇者は速さによる酔いの恐ろしさを知らなかったらしい。まぁ、速さに興奮していたのもあるのかもしれないが。
とにかく都に着いたわけだが、幸いというべきか、そんな戯れが通用するくらいには平和であった。
「とにかく急いで、お偉いさんには伝えるべきだろうな」
レオナンドが次の方針を決め、それを実行しても尚も顔色の優れない勇者であったがその時は無情にも訪れようとしていた。
恐らくは港、海からの襲撃が予想出来る。が、その時までは軍も聖騎士も出すことが出来ないというのが都としても教会としても同じ見解であった。理由は言わずもがな、港を封鎖すれば、商売も何も成り立たない。しかも、襲撃が行なわれなかった場合、その行いは行政への不信感にも直結する。
ならばと、比較的身軽で情報源である勇者たちが港付近で待機することとなった。もちろん、いままでの警備の人数も増えてはいる。
「ほんとに来ると思うか?」
「うーん、まぁ来ないに越したことはないけどね。遅かれ早かれ来るのなら、僕たちの待機できる今来てほしいけれどね?あーいや、もう少し気分が優れるまで待ってほしいかも」
「それは少し不謹慎に聞こえませんか?」
「………何か来る」
行き来する船を眺めながら、雑談をしていれば、ミーシャの探知魔法に何か引っかかったようだった。だが、その言葉に反応をするよりも早く事態は進んでいた。
いま、出発したばかりの一艘の船が沈んだ。と、同時に到着した船からも人のシルエットでありながらも異様な雰囲気を纏う一団が現れる。
「ミーシャ!」
「………やってみる」
慌てて飛び出していきそうな勇者の先手を取るようにレオナンドがミーシャに船の救出を頼む。
「俺たちはあっちだ」
怪しきものが現れた方へ急いで向かう。
遠目では人にも見えたものは生粋の人間であればあるはずもない、鱗や鰭が存在していた。顔色も赤い血が通っているはずもなさそうな緑色の肌で獰猛な牙がその口から覗かせていた。
そうなれば、騒ぎは避けられない。ましてや、陸に上がると同時に近くにいた人に襲い掛かるのだから、味方ではないことも明らかである。
「あれは敵ってことでいいんだよね?」
「あぁ、問題ない。分かりやすいくらいだろう」
「私は負傷者の介護を」
各々がやるべきことを見据えて動く。単純な話であった。




