タコとイカ
現れたのはタコとイカのような姿を持つ二匹の怪物であった。怪物というのはその大きさが家ほどの大きさを誇っているからだ。
「タコとイカ?」
「タコとイカだな」
確認をするように頷きあった彼らに返事をするようにして、相対する二匹も声を発する。
「おいらたちはタコでもイカでもねぇ」
「おらたちは真タコと真イカだべぇ」
それがタコとイカである何よりも証拠であるということに誰もが気づくが誰もそれについては指摘しない。誰もが面倒くさいであろう気配を感じたからである。
「いいか、おいらたちは魔王様に仕える海の女王様たるレヴィア様の忠実なしもべ。レヴィア様の命によりお前たちの聖剣の入手を阻止し、始末しろとのことだぁ」
「そうだ。おらたちは最悪、足止めでもいいから、命を懸けて勇者たちを止めるのが仕事なんだべよ」
それを受けて、レオナンドは「ここは俺が話そう」と一言告げながら、船の先頭に立ち二匹へと話しかける。
「それで、お二人さんは俺たちを足止めすることで何を狙っている?賢い海の魔物であれば、もちろん知っているのだろう」
「そんなに褒められても何もでねぇべよ。ただ、そうだなぁ。レヴィア様はまるで戦をするかのように慌ただしくしていただな」
「なんか街を攻めるだか何だかつってたな。勇者であっても人質がいれば上手く戦えないとかなんとか言ってただな」
右目を赤く光らせながら、と言いかけた質問に思っていたよりも素直に大事な情報をペラペラと喋る二匹に少し心配を覚えながらも、目的を割り出せたことに安堵する。振り返り、後ろの仲間たちにこれからの方針を告げる。
「こんな雑魚どもにかまってられん。都に急ぐぞ」
「うん?いいの?放っておいて?」
「あぁ、多分な」
もう一度二匹に振り向くと、レオナンドは息をするように嘘を紡ぐ。
「聞いてくれ。まず、俺たちは勇者ではないし、聖剣とやらも良く分からない。それよりも急いでいるんだ。先を通してもらってもいいか?」
「ん?そうなのか。なら通してもいいべか」
「い~や、ダメだべ。ここに来た奴は誰も生きて返すなって話だったべな」
もっと簡単に抜け出せると思っていたレオナンドではあったが、さらに嘘を続ける。
「頼む。どうせ殺されるなら、愛する家族たちと最後の時を過ごしたい。あなたたちだってそうだろう。それにこんな一般人を返そうがばれることはないだろう。どうかどうか通してくれないか」
口調も丁寧に、嘘だらけの説明に加えて、頭も下げる。どんな顔をしていても、その顔が二匹に見られることはない。
「うぅ、そんならしょうがないべな。行っていいよな?」
「しょうがないべ。絶対に内緒にすんだぞ?おらたちがおこられちまうからな」
「すまない。恩に着る」
頭を上げ、黄色のバンダナの聖騎士、ロイに船を出すように指示を出す。
こうして、聖剣を手に入れ、都に帰還する勇者たちであった。




