船上での話
夕食は確かに派手ではないが、教会で食べられるとは思えないほどに豪華な食事であった。普段はもっと節制に寄った食事ではあるが、在庫の処理や予算の処理、食に対するストレスの発散も兼ねて、こういう特別なタイミングに合わせて消費をしているとのことだった。
教会自体の運営はお布施が基本となっているので、そこまでの金額があるわけではないと見えて、実際には相当な金額が集まっているらしいとのことだったので、実際には毎日でも可能なのだろうがこれも体裁というものだろう。
その敷地の広さからも分かる通り、部屋も多く勇者たちは一人一部屋与えられたが、部屋はさすがに簡素であった。相変わらず白を基調にしているのは変わらず、最低限の家具しか置いていない。
それでも、野宿に比べれば天国な睡眠をとれた勇者たちの顔色は水の都、ウィンデルに着いた時よりもずっといい。
今日の予定は聖剣の回収。教皇が用意してくれた船で聖剣の封印がなされている島へと向かう。
「なんていうか、船っぽいね」
「お前が借りてきた船がらしくないだけだろう」
「そう捉えることも出来るかもねぇ」
既に乗船し終えたその船は実に船らしい造形であった。乗船人数も勇者たち四人に加えて、教会から貸し出された聖騎士三名。計七人。聖騎士の中で運転できる人がいるのでその人に運転してもらっている。
それだけの人数しかいないのだから、あまり大きい船とは言えないだろうが、勇者と仮にも王子を乗せるということで、貴族がクルージングでもするような船ではあった。しかし、そんな船は港には腐るほどあるから悪目立ちすることはない。
「それじゃあ、聞かせてもらおうか」
簡単な雑談のあと、船の一室では勇者たちが集まっていた。昨日の聖女機関の話をするためだった。
「その前に、会話が聞こえないようにして頂けますか」
アイリスがミーシャに問いかければ、小さく頷き、魔法を行使する。何かが変わった。そんな気は全くしなかったが、手で話を促しているあたり、もう大丈夫なのだろう」
「さて、どこから話しましょうか」
困ったように手を頬に当てながらもポツポツと話し始めた。
「聖女機関というのは、聖女を生み出すために作られた裏の教会組織です。聖女を生み出すためにはどんな手でも使うような下種ですよ」
下種なんて言葉は使うべきではありませんね。なんて、軽く微笑みながら続ける。
「私もその実験体の一人です。中でも、私は成功作なんて言われていましたが、果たしてどうでしょうね。まぁ、今の教皇様になって、聖女機関の排除活動が活発化しておかげで助けられたと言っていいでしょうかね。なかなか、酷いものでしたよ。食を抜かれる、暴力を振るわれる、四肢を切断されるなんてこともあります。」
卑下するように言ってのける彼女は話しながら、苛立ちがたまってきているのか少し怒りが伝わってくる。
「それでも、壊滅には至っていないと」
「そのようですね。なにせ世界のためっていうのを体のいい言い訳を利用しているわけですからね。何をしても個よりも全だと正当化していた人達ですから。多少の被害が出ても、関係ありませんよ。厄介なのは教会の内部にも賛同者が多いということです。聖女が無制限にできれば、教会の権威はどんどん高まるだけですからね」
黙っていた勇者だったが、話を聞いて改めて決めたのだろう。
「昨日もいったけど僕たちが潰そう」
「まぁ、そうなるよなぁ。だが、場所は分かっているのか?」
「教皇様なら分かるかもしれませんが、結局のところ、トカゲのしっぽ切りになっているのが現状でしょうね」
ああでもない、こうでもないと考えを出し合っていた時
「………気持ち悪い。吐きそう」
今まで黙っていたミーシャがぼそりと呟けば、またかと思う一同ではあったが、今回に関しては気持ち悪いから吐いて終わりというわけにもいかない。それに気づいたのはやはりというべきかレオナンドだった。
「まずい。この話は終わりだ。恐らく結界が解除される」
とほぼ同時に部屋の外に駆け出していくミーシャ。それをきっかけとしてこの話はひとまずの終わりを告げたのであった。




