教会本部
教会。この世界において、宗教と言えば一番多いのはこの世界の神―――ミレスの名前からミレス教である。他の宗教は無いわけではないが宗教というよりは邪教、背信者とも言われるほどには宗教の統一は進んでいる。唯一例外ともいえるのは無神論者だろうか。そこに関しては寛容で特に言い含めることもない。
そんな教会の本部は水の都にあった。なぜ水の都にあるのかは一説によれば、女神ミレスと相性のいい精霊が水の精霊ウンディーネであることに起因するとされる。だが、水の都が先か協会が先かは判明していないため真偽のほども分からない。
それでも、水の都においては最大の大きさを誇り、簡素な見た目ではあるが規模で言えば、王城にも負けず劣らずであるといえよう。その中でも水の都の特性を活かした噴水や水の細工物は都内でも一、二を争うものだろう。
「立派な建物だねぇ」
「私も久しぶりに来ました」
勇者の気の抜けた感想に返すはアイリスの言葉。
今回は礼拝をしに来たわけではない。そのため正面から行くことなく、裏口からお邪魔することになる。
「お待ちしておりました。アイリス様と勇者様方」
そういって迎えたのは、アイリスと同じように白の修道服を着こんだ、やや高齢の女性であった。皺が少し目立つ顔だちをしているが、肌自体はまだ艶がある。
そんな彼女の案内に付いていく。廊下も外見と同じく、白を基調としたもので、汚れも目立つ造りであろうに、ゴミ一つ落ちていない。
「そういう魔法をかけております」
関心しているレオナンドに気づいたのか、そう答えが返って来ればいち早く反応するのはミーシャであったが、とある部屋に通されて、その質問は発せられることはない。
部屋の中も白を基調にした色合いであったが、夕焼けの光が反射して、やや夕日色になっていた。応接間だろう。ソファとテーブルが置かれている。
「ご足労いただきありがとうございます。教皇を務めさせていただいております。ディゴロと申します。よろしくお願いいたします」
どうぞ、と差し出されたお茶や菓子を食しながら、会話は進む。
「お話の方は伺っております。聖剣の方は私たちも居場所は把握しておりますゆえ、場所を把握している聖騎士を何人かつけましょう。もちろん今日はこちらにお泊りになるとのことでしたので部屋は用意しております。あまり派手なお迎えは出来ませんが料理の方も腕によりをかけるとのことです」
「何から何まで助かります。それで?」
レオナンドの問いかけは彼にすれば当然のことだった。実はこの教皇がかなりのやり手だというのは知らないものも少なくない。ここまでの好待遇、言ってしまえばアイリスだって貸し出しているという言い方も出来なくはない。なにか裏がある。そう思っての言葉だった。
「いえいえ、そんな条件なんてあるわけもございません。世界の危機にはすべての人が手を取り合うべきでしょう?しかし、そうですね…、実は我々教会の一部で聖女機関というものが存在するらしいのです。なにか手伝っていただけるのであれば、この一件について少し手伝っていただけると助かります」
聖女機関。聞き覚えのない単語だったが、アイリスは知っていた。
「まだ、潰していないんです?」
やや黒い笑顔であった。ニコリとした表情であるのに見るものに戦慄を与えるようなそんな笑顔。
「すみません。中々、確実な証拠を押さえられておらず……」
「なんだ?それは」
「よし、やろうか。いいよね?」
またもレオナンドの意見は勇者に塗りつぶされた。
「詳しいお話は私の口からは言いづらいですね。聖剣の場所に向かうときにでもアイリス様からお話しお願いいたします」
ちょうどいいタイミングで夕食の報も届き、ひとまずは夕飯の流れとなったため、その場は解散となった。




