街の入り口
普通の街であれば、街の入り口には兵士が立てられ、身分などの照会などが行なわれる。水の都も例に漏れず、兵士が見張りを行っている。他の街との違いを強いてあげるとするならば、入口が一か所しかないということだろうか。
大きな港町である、ウィンデルでは主な輸出入が港で行われる性質上、地での輸出入は多くない。加えて観光客も海での出入りが多い。そのため、陸地の門は一つで事足りるというわけだ。
もっとも一番の理由は防衛の際に一か所だけを見ればよいという理由なのだが、建国以来ウィンデルで争いが起きたことはない。
「………やっと着いた」
ぼやくように呟いたのはミーシャであったがそう思っていたのは他の三人もだろう。野営の後とは違うような疲れた顔だった。
というのも、ものすごく混んでいたからなどではない。なにかとイチャモンを付ける人がいたらしく、永遠に進まなかったからだ。聞いているこちらもうんざりするような内容でイチャモンを付けるものだから、誰であっても疲労するだろう。
そんな出来事はあったが、勇者たちは水の都、ウィンデルに到着した。
「これは……すごいですね」
「なんだ。来たことはないのか?」
「えぇ、幸いなことにここは平和ですから」
ウィンデルの最大の特徴。それは、水路が主な道となっていて、移動も船や橋で行われることだ。地面もあるが、道の割合で言えば水路の方が多いのではないのであろうかというレベル。
入口こそ地面が少し続くが、もう少し歩けば水路の入り口に出る。船をレンタルするものもいれば、乗り合いのような船、案内人付きの船と、水路が一つの商売として上手く成り立っている。
「よ~し、船を借りよう」
二人の会話の隙を突くようなタイミング。ウキウキした顔で、勇者が船の貸し出しの場所に駆けていく。後ろではレオナンドが制止の声を上げるが、勇者は気づかない。アイリスもレオナンドの方を見ながら、諦めとも同情ともいえる視線を向けている。
「………ドンマイ」
この世で一番苦労しているのは俺なんじゃないか。レオナンドはため息をつきながらそう独りごちる。
対照的な笑顔でこちらに手を振るのは勇者。借りてきたのが見た目的には上等なものを借りてきているのは僥倖なのだろうか。
「くそ、それは見た目だけの古い型だ。どうせだったら自動で操縦してくれるやつをもってこい」
良くなかった。悪態とため息を付きながら渋々と勇者の後に続いて船に乗り込む。それは絨毯のような船だった。流石に布製ではないが船底の模様などが上層階級のそれだ。それにちゃんと船のように水が入らないように反った設計になっているので水が入る心配もない。
だが如何せん、旧式であった。すべての作業が手作業。ウィンデルの水路が一方通行で水路が整っているとは言え、方向転換や停止はあくまでの本人の手によって行う必要がある。
それに比べて、自動で操縦してくれるものは目的地を設定すれば、その場所まで連れて行ってくれるという何とも嬉しい機能だ。
「よし、しゅっぱ~つ」
勇者がその運転を辞めないことをただただ祈るレオナンドであった。




