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行き当たりばったり勇者譚  作者: 青い傘
第三章 水の都 ウィンデル
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不思議な家

「よ~うこそ。わが家へ。歓迎す~るよ」


 少し間延びした声がさらに彼らを驚かせた。


 反射的に先頭のレオナンドは飛び退きながら、扉を閉めた。後ろの勇者たちを見ると、ギョッとしているようではあるが、何が起こっても対応できるような体制にはなっている。


「ひっど~いじゃあないか。おいしいお菓子に温かいお茶、久しぶりのお客様なんだから、中においでませ~ってね~」


 家越しでも聞こえる。中からのような壁を一枚隔てているような声とは思えない。まるで、家自体から声が発せられているような。


「ほ~らほら。遠慮しないで~。入る入る~」


 扉も開く。が、扉の向こうには人影一つ見えない。


「おいおい、まさか本物か」


「………燃やす?」


 不穏な意見も出たが、今のところ、そのような手段を取る気はさらさら無かった。それを示すかのように、勇者は扉の向こうへと踏み出す。


「う~んうん。ありがとありがと。いや~、実に二年と四か月ぶりかな」


 パーティのリーダーが入ってしまったからには入らないわけにはいかない。罠だとしても人数がいれば対応も楽になるかもしれない。そんな考えのもと勇者の後に続く。


 今のところ、危害が及ぶ気配はない。それどころか、入ったときには無かったはずの長机と湯気の立つティーカップ、クッキーの入ったバスケットとまるでお茶会のような光景に目を疑う。


「………どんな魔法?」


 ミーシャがそう呟いていることからも新手の魔法か、はたまた敵の幻覚か。レオナンドは注意深く目を凝らし思考を巡らせる。


 しかし、どんなに考えても不審な点は見つからない。そこまで考えていた時、勇者はというと


「ん、おいしいね。これ。君が作ったの?」


 と、机の上のものに手を出していた。気づくと、それをニコニコと笑みを浮かべながら見ている少年がいる。いつの間にそこにいたと驚いていれば、その少年は話し始める。


「も~ちろん。口に合ったようでうれしい~よ。なにせ、レシピは数百年も前のものだ~から。材料も魔法で時間を固定したものだから、安心し~て」


 レオナンドの判断は早かった。人であれば、真偽の魔眼が使える。目を閉じ、即座に真偽の魔眼を起動させる。


 真偽の魔眼の結果は真。偽りを述べている場合、その人物が赤い空気に包まれているように見え、真を述べているときはそのままの姿で見える。その濃さでどれくらい嘘をついているかが分かるわけだが、全くの赤みもない。


「あ~、真偽の魔眼だ~。いいよね、それ。嘘をつ~いてないってわかったでしょ」


 少年に話しかけられ、周りの仲間からもそうなのかと言わんばかりの視線が送られる。その視線にこたえるように一度頷く間に、勇者はお茶も楽しんでいる。


「くそっ。俺の分も残しておけよ」


 それを皮切りに不思議な家でのお茶会は始まった。

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