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行き当たりばったり勇者譚  作者: 青い傘
第三章 水の都 ウィンデル
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小さき村

 結果から言えば、馬車が見つかることはなかった。正確に言えば、載せてもらえる馬車がないというべきか。みなみな、荷物や先客などがいるために四人も余分なものを載せることなどできないというわけだ。最初の運が良かっただけの話。


 しかし、不幸かと問われれば、そんなこともない。太陽が頂点を回り、気温が最高潮になるくらいの時間に彼らは村を見つける。


 村ともいえるのかどうか分からないほどの大きさの村。集落と言い換えてもいいかもしれない。目で確認することの出来るくらいの数、広さ。逆に狭すぎて、泊まるところもあるのかといったところだったが、家を回って尋ねれば、少し離れたところに誰も住んでいない空き家があるという。


「てな感じでそこをお借りしようと思うんだけどどうかな?」


 ただし、いわくつき。そんな追加条件を勇者は何故か言わない。


 その空き家は確かに少し離れた小高い丘の上にあった。木々も手入れしていないのか、好き放題のせいで、一見すれば確かに見つけることは出来ないだろう。


「思ったよりもぼろくないな」


 しばらく使われていない。それはすなわち、酷い有様になっていてもおかしくはないということ。蔦が張り巡らされていることもなければ、家壁にひびが入っていることもない。まるで、誰かが住んでいるかのような。


「まぁ、出るらしいんだけどね」


「おい、聞いてないぞ」


「言ってないからね」


「もしかして怖いのですか?」


「………というより信じてるの?」


 ぼそりと呟くように放たれた言葉に反応したら、思っていたよりも食いつかれてしまうレオナンドだったが、そういった類の感情でないことは確かだった。


「そうじゃない。それに幽体化したという意味でならいるだろう。面倒なことになるのが嫌なだけだ」


 そう。死んだ霊というのは子供だましのものでしかないとされている。レオナンドのいう通り、存在が確認されているのは死んだ霊などではなく、単に物理攻撃が無効で半透明なモンスターは存在しているということである。


 もっとも、それらが元々人ではないという証明をしたわけでも、誰かが保証したわけでもないのだが。人というのはそういうものだろう。


 木製の扉を軽くノックしたのちにドアノブをゆっくりと回す。勢いよく開けるのではなく、出来るだけゆっくり音を立てないように。もちろん恐れを覚えていたわけではない。


 仮に盗賊などの住処になっていることも容易に考えることが出来たからである。むしろ、条件としては絶好の場所である。目立たない場所で人が寄り付かない場所にあり、自分たちの拠点ともいうことが出来る。


 幸い、扉は音を立てずに開いた。しかし、明かりはもちろんついていない。ついてたとするならば、先住人がいることが確定するが、明かりが付いていない場合はまだいないと確定したわけではない。むしろ、明かりがついていれば、中にいるであろう先住人を軽く制圧する策を取れるわけで楽なのかもしれない。


 だから、さらに慎重に隙間を広げるように扉を開けていく。


 半分も開けていないくらいの時のことだった。


 パッと部屋中に白い明かりが点る。まだ、明るい昼間であったことも幸いし、目を刺すような光ではなかったが、さすがにゆっくりと開けていたレオナンドも大いに驚いた。


「よ~うこそ。わが家へ。歓迎す~るよ」


 少し間延びした声がさらに彼らを驚かせた。

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