プロローグ
勇者。それはこの世界において魔王の復活と共に生まれ、魔王を討伐する定めを担った人物のことを指す。一般に戦士や盾使い、僧侶に魔法使いなどの職業からパーティを組むことが多い。近年は、占巫女と呼ばれる者が魔王討伐の最適な人を選出する。過去には異世界から勇者を召喚するという儀式によって、勇者を選出していた過去もある。
第13代目勇者である彼のパーティも例にもれず、占巫女の導きによって勇者を戦士として、魔剣士に僧侶、魔法使いと比較的王道的なものが結成された。まずはその面々を紹介する。
勇者。彼は帝国と王国の国境に存在する小さな村の出身である。そんな知られてもいない人間に勇者が務まるのかと最初は疑問視され、庶民からの人気も少なかった。
しかし、実際に勇者として活動を始めてからは先々で人々を助けて回ったとされ、そのような印象はすぐに払拭された。そしてその人気は歴代勇者の中でも随一といえよう。
続いて、魔剣士。人間が住む地域の中で最も大きいとされる国、通称王国の第三王子。王国内では4番目の王位継承権を持っていたが、魔王討伐の任により、その権利を剥奪される。また、次期勇者と噂されていたが、実際には選ばれたのは違う人間だった。しかし、彼は全く気にすることなく、自分の領分を果たすだけだと言ってのけたという。
その両目には異なる魔眼を持つ。使用する武器は魔剣だが、天は二物も三物も与えた。どんな武器であっても一流の腕前をもち、さらには芸術、音楽などにおいてもという多芸である。
僧侶。彼女の名前はアイリス・フィルフェール。教会において、もっとも高い回復魔法を持つとされており、死んでさえいなければどんなケガ、病でも癒すとまで言われている。そのため、僧侶という職業としてではなく、聖女とまで言われていた。その性格も聖女そのもので酷い対応をとる人間であっても真摯に対応したという。
戦闘において戦闘力はほぼ皆無に等しいが、その回復魔法の力で大きく勇者一行を支えたとされる。
魔法使い。彼女はミーシャ・ミドガルズ。どこかにあると言われている魔法使いの村の長の一人娘とされる。村の場所をどうやって特定したかは分からないが今回の旅の一員となった。口数が少なく、彼女と話すことが出来た人は加護がもらえると民衆の中では話題となった。
派手な魔法をよく使うとされているが繊細な魔法も得意でパーティの火力面として優れたメンバーとして名を残す。
以上、この4名が魔王討伐に参加したメンバーである。また、以上に述べたのはあくまで世間一般で得られる情報なのでこれから示す本編である「行き当たりばったり勇者譚」は他の勇者譚とは異なる描写もあるが、気にしないで読むことをお勧めする。