第82話 空蝉:火山強制活性化阻止作戦②
(ジーッ。)
「なんですリクスさん、顔になんか付いてますよ。」
「そこは自分の顔じゃないのか。」
といいつつほっぺに付いたご飯粒をとるリクス。
「というか君やっぱりどこかで会っているよね!?カメリアちゃんとスリジャちゃんと友達でその喋り方とムカつく感じ、絶対会ったよね!?あとおにぎりありがとう。」
「いつの間に二人にちゃん付けを...。あ、おにぎりまだありますよ。」
「あむあむあむ!」
さっきの通信後、何故かこっちにきた彼女は騎士団諜報隠密特殊部隊のアスター。
通称暗殺部隊である彼女とは過去に会った事がある。本名はリクスといい、表では騎士として活動、3年経ってもボーイッシュな容姿の僕っ娘でその割にちょくちょく、
「(ほわぁ...。)」
可愛い、結構可愛い人なのだ。
ふっ、おにぎり作るのは前世から得意なんで。
「事情があり過ぎますが貴方なら話せる側の人なんで話しますね、アスt、むぎゅっ!?」
「むー!?むむー!?」
「口の中に物入れたまま喋らないでください...。」
「んんっ...やっぱり僕の裏の名前知ってたのか。なんでだ、僕は一体どこで君と...?」
「...長くなりますよ。」
私は3年前からの事を簡潔ながら話した。
クチナシ達の存在はぼやかした。
リクスも当時捜査に関わったらしく、神様の事ぼやかしてるのに3年間私がした事をちゃんと聞いてくれた。
どっかの盗賊団や阿保騎士共の暴走行為とか。
彼女は3年の間に何度もメリーとリズの特訓に付き合っていたらしく、時間ある時に騎士団の戦闘技術を教えていた様だ。
体術が主だった様で、武器も魔法も無しでそこらにいそうなナンパ男程度をいい感じにギタギタのズタズタのグシャグシャに出来るくらいに出来る力加減の技術を叩き込んだのだとか。
Chapter進んでないのに二人が異常に強化されたのも彼女の協力もあったからだろう。3年ぶりに会ったあの時も二人の身のこなしは実際見事だった。
本当にいい人だ。
「...言ってしまえば君はもう人間じゃないって事だよね。その上、君の親友や僕らも君のことを思い出したわけじゃ無い。まぁエキナ様は例外過ぎるけど...はっきり言って辛くないのか?」
「...。」
「...辛いなら言えよ、君は味方が多い。特にあの二人は僕らを頼るよりもずっといい仲間なんだろ。」
「自分で言うんですね。」
「君に手を出したド阿保な騎士が何人もいたからね。さ、休憩はここまでにしておこう。」
「...。」
私とリクスは黙る。
...ザッ...、
「足音、大きいね。」
「殺気もダダ漏れだ。」
「「素人だ。」」
私が足を掛け、リクスはソレを斬る。
隠密系の魔法を使った魔族だった。
どうやら相手も単純な方法では来ないようだ。
「こちらバイオレット、予想通り敵は透明化も使う事を確認した。プランBに移行、レインは星魔法による探索を可能な限りの使用、敵の位置通達を願う。」
〈了解。〉
「レインと合流した騎士達はポイントCへ。私達は山頂に向かう。」
〈気をつけてね。〉
「じゃ、行きますか。」
「ああ。」
ーーーーーーーーーー
サラから聞いた作戦はこうだ。
・下記の作戦は魔族の襲撃数が予想を超えた場合
に行う。
・エキナさんのツテで騎士団の援軍の用意。
ただ強ければどうにか出来る問題じゃない点が
あり、ドジれないので援軍を早期決断。
・援軍到着次第、サラとその合流メンバーは
山頂へ。おそらくその内今回の事件の首謀者が
直接出張ってくる可能性が高い。
・相手はゴリ押しも厄介な手も色々使ってくる。
隠密系がいる可能性は高いから気を引き締めて
欲しいと。リズの星魔法支援も惜しまず
使ってもらうんだって。
そしてサラの予想はかなり早くに超えた。
私は今の状態もあってマロウちゃん達と引き続きここで戦う。私は登山道ルートエリアにいる。
現在騎士団が入山規制を行っているので一般人は入ってこれない。しかし当然ながらここは登山する上で最も安全なルートである、故にここを無理矢理突破しようとする魔族が既に何人かいたのだ。
魔族とは過去に接触したことがある。
サラがいない3年間で中立、平穏派の魔族の人達に何度か会った。3年前の...えーと騎士団の特殊部隊過激派による学園襲撃事件がきっかけで王国が彼らの安全の為に動き出したのだ。
罪もない者を虐げる様な国ではない。
会ったことはないけどハイビス曰く話のわかる人らしい。
そんな魔族と今対峙する魔族から感じる何かが違う。今攻めてくる魔族は明らかに殺気に満ちている。
本能的に倒すべきだと、何故か感じる。
「すげぇ...。」
「魔族をあんな紙を切るようにあっさり...。」
「凄いなぁ...ね、モフィラおばあちゃん。」
『...妙じゃのう。』
「?」
『考えてみたんじゃが、この魔族達はどこから現れとる?』
「え?」
『気づいておるか、こやつらの遺体。』
「遺体って...え?」
私達、騎士団が今になって気づいた。
「...無い。」
「というか...消えていってません?」
斬った魔族の死体がだんだん消えていく。
「これじゃ魔族っていうより....魔物だ。」
「何が起こってる...!?」
『...召喚とも転移とも違う。古き時代の人造人間に似通ったなにか...ああ思い出した。これは禁術の一種じゃ。』
「禁術...?」
『生成魔法から派生した魔法でな、術者や素材となる生物の体組織を元にその組織を複製、または生成する。例えば“失った手足や内臓を遺伝子情報を元に再生”、...まぁこれは高レベルの回復魔法でも出来る。だがこの禁術はそれだけでは無い“生まれつき無い部分を他の人間の組織の一部を使い遺伝子を上書きし生成する”、始まりは再生と生成による画期的な医療用魔法として使われる予定じゃった。』
「でも今のは....。」
『そう、魔力を使い体組織を増植、構築、そしてソレを生成する。それは何も腕の一本や二本だけとは言ってない。...魔力次第で生物を丸ごと生成出来る、今起きている様にな。』
「...魔力と素材があれば兵士や実験体を幾らでも作れるって事だよね。それに他生物の遺伝子を掛け合わせれば合成生物だって作れる。人間という種族が素体であれば知能が確保出来る、...倫理観度外視もいいところだね。」
『ああ、それで大昔に禁術となったが...おそらく今ある医学技術も結構な割合がこの禁術を使った上でやっておるかもな。脳や脊髄と目にハラワタと体のあちこち...死体じゃ見れん情報取り放題って訳じゃ。まぁ“本物の人間を拉致して実験するよりはマシ“じゃな。...ま、”その禁術を使えた者は割と少なかった“らしいがの。』
その場にいる全員が絶句した。
多分モフィラさんの言ってる事は合ってる。
あらゆる分野の歴史には影が付き物だが医学は特に闇が深いとわからされてしまった。
しかしそこからもたらされた技術は多くの人を救っている。
騎士の一人も何を想像したか嘔吐を起こした。
この反応見ればわかる、禁術になって当然だ。
いや、禁術を盾に...理由に、...もう考えたくない。
『さて話を戻そう、相手...この似非魔族どもの本体は1人じゃ。魔力に似通った部分が見えてきた。おそらくワシらの体力を消耗させた上でどこかから襲ってくる気じゃろう。』
「でも相手の魔力は保つの?」
『相手本体も他の強力な生物と融合しておったらキリがないかもの。かと言って油断すれば終わりじゃ。ここを無理矢理噴火なぞすれば山頂はおろか、どこの脈からも溶岩が噴き出すか、火山灰も相当酷いと思う。』
「...あの、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
騎士の一人が質問する。
「そもそも魔族はどうやって火山活動を活性化させるのでしょうか?」
『魔力でもなんでもいい、確実なルートである山頂から地下内部へ進み刺激を与える。モノはさっきの話でわかるじゃろ?』
「ま...まさか。」
『兵士を魔力いっぱいに自爆させまくれば不可能でもない。』
...もはや魔族じゃなくてもえげつない方法。
そうまでしてヒト族を滅ぼしたいか。
〈こちらレイン、〉
!、リズからの通信だ。
〈レッドの付近上空に大量の魔力反応があるわ!〉
「!」
上空から現れたのは鳥でも魔族のでもない翼が生えた魔族の生成兵の数々。
『...良くも悪くも痺れを切らしたのは向こうらしいの。お陰で大元が何と融合したのかがわかったぞ。お主ら気を抜くな、アレは一筋縄ではいかんぞ!!』
モフィラの掛け声と共に皆は覚悟をする。
禁呪が使用されていた時代、
数々の実験施設がある地域周辺の街では、
孤児や迷子の子供がよく行方不明のままになっていたそうな。




