第8話 尋問
魔物蜘蛛襲撃から3日、私は怪我を治すため学校を休んでいたがようやく治ったので登校。
しかし...
「サフラ・アコニリンへの尋問を開始する。」
...なぜこうなった?
説明しよう、私は怪我が治りいつものように登校をした。しかし学園に入ると教師に呼び出され向かってみればこのザマ。
そもそもなぜ尋問か。
この学園では非常勤含めた教師8人以上の署名により疑わしき生徒・教員を取り調べる事が出来る決まりがある。
私は蜘蛛魔物の撃退について聞かれているのだとカメリア達は認識していると思うがそれは違った。
「サフラ・アコニリン、貴様は騎士団が討伐した魔物の群れの死骸を盗み、蜘蛛の魔剣を勝手に私物として扱った事に対し偽りないか!」
そう、謎の疑いが吹っ掛けられているのだ。
なんでも騎士団のメンバーが学園にこの事を話した事がきっかけで、ここにいる教員8名は私が泥棒やったと疑っているのだ。
妙だな、あの時の騎士団やカメリア達など証人は計30人はいたはずだぞ。騎士団長ともなればそれなり立場があるのにこの尋問を聞く限り証言が採用されてない...?
「証人はいますか?」
「あ?」
「私が盗んだ光景を見た証人はいるんですか?」
「それなら私が...。」
ん?
「私が監視魔道具で学園内の定期調査をしていた所、貴方が魔物の襲撃跡に向かい混乱に紛れ蜘蛛の素材、そしてその魔剣を盗んだ光景をはっきりと見ましたわ!」
この人確か魔道具の担任だったよな。
私そんな事してないぞ?
魔道具の先生ってハッタリ野郎だったのか...だがこんな奴いたっけか。ディスティニーブレイブⅢに。
「どうだ!彼女はこの学園内でも高い信頼と地位を持つ人間、その彼女が見たと言うなら間違いない!」
「いや状況証拠で何してるんですか。他の先生方は見ていないのですか、この事は学園長の承認はあるのですか?」
「うるさいごちゃごちゃ言うんじゃないよ小娘が!!私らは忙しいのよ!!あんたがさっさと罪を認めて私がその剣押収すればいいのよ!!」
なるほど...多分これ私の蛮蜘蛛の剣が目当てな気がするな。おそらく学園長の承認もしていなければバレる前にさっさと自白させ、レアドロップ品を立場利用し教師間で合法的に奪い取る...そんなところか?権力乱用で無理矢理奪い取ると印象が悪いからね。
そもそもこの部屋は監視の術式が無いから尋問部屋には向いていない、むしろ悪巧みに向いている。コイツら教師やる気あんのか?
盗視聴魔法[シースルーウォッチ]...
(ふざけんな魔女ババア!あの剣は第一学年統括のワシのもんじゃ!!)
(俺のもんだ、魔物襲撃のボス魔物が極めて稀に落とす装備を売れば数十年は遊んで暮らせる!!)
(出し抜いてでも手に入れてやる...取られたら殺してでも奪ってやる...!!)
(あの剣は私に相応しい。実用、コレクション共に優れたあの業物を手に入れてみせる...!)
...どうやら当たりだ。
こりゃ学園生活を始める前に大掃除をする必要があるようですな。
「剣を出しましょうか?」
「!!!...早く出しなさい。」
収納魔法[ボックス]
私は蛮蜘蛛の剣を取り出す。
「おお....おおお...!!!」
へっ、ボロが出始めてるな。
どんだけ欲しいんだよこれ。
さらにサービス、刀身も見せてやるよ抜剣!
「...なんて綺麗...!!!」
「でしょ?提案があります。」
「...!!、んんっ...何かしら、さっさと渡して欲しいんだけど?」
「勝負をしませんか?」
「...はぁ?」
「私だって騎士団を目指す人間、突然の魔剣の押収に踏み込まれると傷ついちゃいます!それにあの森での私の目撃者は結構いますよ?なのに私が魔剣を先生方に急に預けたなんて言えばおかしく思われます!だから正式な場で私がこの剣に相応しいかどうか決めたら良いじゃないですか!扱いきれないのであれば皆の前で預ける事で納得が得られるはずです。!」
「...おい、何を言ってるのかわかって言っているのか?」
「はい!私はまだ弱いって事ですよね?」
「そうだ!!貴様自身が絶対負けるような案を出す意味がわからんぞ!」
「何を言うかと思えば....私、勝ちますよ?私自身この魔剣を手放すつもりもありませんし勝てば正式な所有者と認められます。」
「バカを言うな!!貴様のような低レベルのガキが我ら1人にでも勝てると思うなよ!」
「でもその案には乗りましょう。貴方だってせっかく手に入れたい魔剣をもっと使いたいでしょう!」
「では一番弱い方を出してください。その人に勝てば少なくとも資格は得られると思うのですがー?」
「...!!?」
さーて仮にも相手は欲深い人間。
やってる事が悪ーい事なのを自覚しているのであればより安全かつ合法的な案を出されればその案に乗っかろうとするだろう。
それに加え先生方のお墨付き的なのを得れば公式の模擬戦として確立出来る。
でもまぁこの中で一番弱いのは誰かと言われれば...、
(お前が行けよ!俺はお前より強いんだからな!)
(私が弱いはずがない、早く声を上げてくれないかな?)
(なんでコイツら名乗りあげないの!?早くしてほしいのですけど!?)
ほーら荒れてる。
認めたくないよねぇ、自分が弱いって。
私は自分から弱いって言ったのにこの大人ら認めようともしない。大変だな、保身って。
「私はこの剣の譲渡に意味を持たせているのですよ。今日中に出来る事ですから出来ればお早めに...。」
「もういい俺が行く、だが弱くはないぞ!!」
あーあ、今私の言った事にこの反応じゃもう悪い事してますって認めたも同然だよね、あっはーおもしろ。
名乗りあげた教師は剣を持った。
「さて、どうぞ!」
「どぅをおおおりゃあああ!!」
...おっそ。蹴りで倒せる。
「剣を使うまでもありません。」
「ごふっ!?」
「...!!!」
さてさて教師さん達も動揺しましたねぇ、
なにせ強いのか弱いのかわからない人が名乗りあげた挙句負けたんだ。
焦るでしょ?
模擬戦は1vs 1だからもし魔剣を確実に手に入れるならば...。
「資格がある事を確認しましたわ。...この私、魔道具授業担当のテルンが模擬戦を担当致します。」
この人が出て来るよな。
もしこの人に勝てば....おっと。
「ではいつ始めましょう?先生方がお認めになられた模擬戦なのですから手続きが一応いるはずです。」
「では昼食後試合用の会場に来てください。」
だろうな、公式で奪い取れるならちゃんと人の目を取れる場所を用意するよね。特に立場のある人間であるこの人ならそれが可能。
より確実にこの剣の所有者を決める状況を作って勝つ...あの先生ならこのくらい簡単な事だ。
「では私は授業がありますのでこれで!」
まぁもし負けて奪い取られた後教師達はどんなふうに剣を取り合うか...それも楽しみだけどこの剣を誰にも渡す気は無い。
さーて...楽しみだなぁ。