第75話 空蝉:隣国のファン
消失?→空蝉
「はわあぁ....!」
「眼福...眼福よ!!!」
「...。」
私は今舞台衣装を着て決めポーズ。
目の前にははしゃぐオタクカップル...であり、
隣国の王子とその婚約者。
ハイビスとヒマリとなんかキャラ被りしそうな二人がなぜ目の前にいるのかと言うと...事は遡る。
ーーーーーーーーーー
origin...
「あ?なんだよお前...。」
「クランさん、現在を含め連日立ち入り禁止区域への侵入の報告を受けています。直ちにご退去をお願いします。」
「んだと!?」
素行不良の隣国王子クラン。
ゲーム内彼氏候補でありプレイアブルキャラ。
彼は隣国ローザスの第一王子。
根は真面目だが学の為に隣国に行かされた事を不満に思っており婚約者とは仲が悪くよく従者を撒いて人が立ち入らない場所や立ち入り禁止エリアに居座っていたりする。
ーーーーー
「何?」
「ラーズさん、目の周りが赤いですが...?」
「放っておいてください...。」
ベーリ公爵令嬢ラーズ。
男子主人公プレイでは彼女候補。
女性主人公では友人候補。
クラン王子の婚約者だが仲が悪い。
本人は婚約者ではなくかけがえのない友人として付き合って行きたいのだが複雑な心の内は彼には届いていない。いつも彼の心配をしている。
ーーーーーーーーーー
real...
数週間前の事...、
(久々に見たなぁ死火山の岩場、生で見るのは初めてだけど。)
カフェのマスターが奥さんに髪留めを贈りたいと考えていたところ、死火山の岩場の一部エリアで稀に採掘される宝石を使った髪留めを贈りたいそうな。
がしかしマスター、
ギックリ腰をやってしまった。
買い出し中にギックリやって病院に運ばれたせいでエリクサーとかは使えてない。そんな訳でカフェは臨時休業。
病院には奥さんが血相変えてやってきた。
旦那は任せておいてと言われ私は先に帰った。
しかしその後で聞いたのだが、今その宝石が魔物襲撃の多発もあって量が減っているそうだ。故に値段が高騰して物も少ない。
宝石さえあれば宝石細工を作ってくれる職人をゲームの頃から私は知っている。
そんな訳で私はマスターの言ってた事っていうか、ゲームの頃からあった宝石採取エリアに向かう。カメリア達は近頃野外実習が多く夏休み前の割に会えていない、案外行けば会えたり?
そう思い私は支度をしてその足で向かうのだった。
(今の風の丘よりはいい景色だな。)
風の丘の修復は未だ目処が立っていない。
呪いの力が余程強かったのか植物魔法を使っても再生が中々出来ないらしい。
若い内に緑溢れてたあの景色を見る事は出来るのだろうか。
「...お、やってるやってる。」
ある程度進むと向こうで野外実習をしている学園生徒達がいる。...どうやら数クラス合同なのか人数がやたら多い。
だだっ広いエリアだけあっていい感じに見渡せる。まぁ私は邪魔しちゃいけないので離れた位置で隠れ見てる。
「...ん?あれは...メリー達だな?」
明らかに実力が突出しているのが離れていてもわかる。
さてさて、私はやる事やりますかぁ。
えーとこの道を逸れて降りて、さらに降りてそこから...あった。この洞窟はこの世界でも健在だな。
ここでごく稀に取れる[ローザサファイア]というバラの様な淡いピンク色のサファイアがお目当ての宝石だ。ゲーム画面越しでもあれは綺麗な宝石だった。きっとリアルではもっと綺麗に違いない。
ちなみに世間一般ではこの洞窟は枯渇した鉱脈だと思われてて誰もいない。実際はまだあるのだ。
ハイビスには許可を取ってるから盗掘とかにはならないのでご安心を。
そう思い洞窟に入ろうと...した時だ。
「待て、何者だ?」
「え?」
後ろから男性の声。
おかしいな、立ち入り禁止区域では無いはずだが...?
私は振り向く。
「え...ええ...!?」
男は私の顔を見るなりちょっと情けない声で驚く。
「ふええ!?」
横の岩場の陰からまたちょっと情けない驚きが聞こえた。
...え、待って。
コイツら...クラン王子とラーズ公爵令嬢!?
え、なんでここに...ってかなんで一緒にいるの?
「...クラン王子とラーズ公爵令嬢。」
「ぅええ!?俺達の名前知ってるんすか!?」
「な、なんて事でしょう!?」
え、何この反応!?
クランはもっと不良感あって、
ラーズはもっと悲しみの令嬢って感じ...、
なんてカケラもねぇ。
バカップルって程じゃ無いけどなんか...うん。
「...むしろ私を知っているのですか?」
「当然ですよ!?貴方“様”はかの有名な“リバイヴクイーン”、我が公国でも有名です!!」
え、何その二つ名?
いや消失新星よかまともだけど。
「あのーそれで、私に何かご用で?学園の生徒であれば実習中なのでは。」
「ああ俺たちのクラスは今休憩中で、それで偶然お見かけして声をかけたという感じです。」
「なるほど...私はただそこの廃坑にまだ宝石無いか来ただけだよ。ウチのカフェのマスター夫婦への贈り物にね。」
「この辺りの廃坑...もしやローザサファイアですか?」
「そうです。私の見立てでは鉱脈は完全に死んではいない筈なので。」
「ローザサファイアか...よし、俺達も手伝います!」
「え?」
「サフラ様の為に是非!!!」
「「お願いします!!!」」
どうやら私の強火ファンらしい。
マロウちゃんと何か気が合いそうだな。
「…では少々お時間をいただきますね。」
私は深々とお辞儀をした。
二人は慌ててそれを止めようとしたが礼儀だから止めない。
そんなわけで私たちは廃坑の中にレッツゴー。
「シア。」
『ほりゃあ!!』
ガツッ、
「…うん、小さいけど薔薇色の結晶がある。まだ死んでないねこの鉱脈。」
「ああ、ハイビスから聞きました。表向きは魔物襲撃の多さや枯渇寸前って事になってるけど実際は火山の大元の脈がまだ生きてるから魔法で刺激したら大災害につながる恐れがあるから採掘が中止になったって。」
そうだったの!?
「え、それ他国の重要人物に言っていいの?」
「ローザサファイアはうちの国でも採掘出来るんですよ。量もこっちが上っす。」
「なるほど、危険を犯してでも採掘するよか仲のいい隣国の輸入品の方がそりゃ安全だよね。」
いい裏話が聞けた。
「ちなみにその…サフラ様、おっしゃっておりましたカフェのご夫婦にはどのようなもので贈られるのでしょうか?」
「髪留めだよ。元々はマスターが奥さんに贈る予定だったけどマスターぎっくり腰やっちゃったからさぁ。」
「なんと...サフラ様、差し出がましい事ですが1つ提案してもよろしいでしょうか?」
「?」
「その髪留め、ベーリ公爵家の御用達職人に依頼してみませんか?」
「ダメ。」
「えっ!?」
ウチのカフェはヒマリの実家ことソレイユ公爵家の従者であるマスターが経営している。そして店自体公爵家の傘下故にその店に他国の公爵家が恩を売るって大丈夫か???
でも表には知られてない話でもあるしで...ああ。
ラーズ家御用達の宝石細工は舞台衣装で一個あるんだよね、物凄く綺麗なんだよなぁ...あのブローチ。
ぐぎぎぎぎ、いや国を乱す訳には...、
「あらあら、良いではありませんか。」
「げっ。」
その声はまさか。
「ごきげんよう、サフラさん。」
「ヒマリ...。」
はい来たよソレイユ公爵家令嬢ヒマリ。
「サフラさん、その提案に私は賛成いたしますわ。」
「へ、なんでヒマリさんが?」
「実はサフラさんのバイト先のカフェのマスターは、私ソレイユ公爵家の従者なのです。」
「ええ!?」
「言っちゃったよ...。」
「なので当家に恩を売ると言う意味になりますが私はそれを賛成しますわ。皆様に都合の良い見返りがございますわ!」
笑顔で何言ってんだって思う。
「と、言いますと?」
「サフラさん、来週公演がございますわよね?」
「...。」
...そう来たかあ!!?
「...あるよ。」
「では公演後、サフラさんを撮影してもよろしいでしょうか!?」
「!!!」
「...わかった。」
笑顔で中々酷い事言ってる気がするがヒマリは馬鹿じゃないし、なんか考えているのだろう。
「あ!」
「どうしましたクランさん?」
「サフラ様、これ!!」
「...!!!」
クランが見つけたのはどう見ても当たりの結晶。
「これなら...いい髪留めを期待出来る。ありがとうクランさん!」
「い、いえ!お役に立てて俺幸せです...!」
「じゃあラーズさん、お手数かけますけどお願いします。」
「お、お任せください!!」
こりゃ、二人へのお礼に思う存分撮影させてあげなきゃ。
ーーーーーーーーーー
そして現在へ戻る、
流石は王族と高位貴族だけあってか魔法道具のカメラを持っている。イベントのコスプレイヤーを撮るオタクと一緒だこれ、推しへの愛が凄い。
今日は一段とボディラインの出る衣装だからかポーズ変えるたびにめっちゃ写真撮ってくる。
「ああ、サフラ様。髪留めなのですが来週には完成しますわ。もう少々お待ちください!」
「早いな、流石ベーリ公爵家です。」
コンコンコンッ、
『主人よ、客人捕まえたぞ。』
いつも通りスタッフ姿のシア。
いや待て客人捕まえた?
「サフラさーん!」
「マロウちゃん!?」
元気いっぱいのマロウちゃん、
飛びついてきたので抱きしめてぐるぐる。
「久しぶり!元気してた?」
「元気でーす!!」
以前の病弱さなんてカケラも思わせない元気の塊。
可愛くてたまらない。
「あらあらまぁ、元気でよろしいですわ。」
「やほ、ヒマリ、ハイビス。」
「私もいるよ!!」
「おお、メリーとリズ!」
知人がわらわらと。
「あれー、ラーズとクランさんだ。」
「こんにちは、皆さん。」
「えーと、初めまして先輩!第一学年のマロウって言います!サフラさんファンクラブのリーダーです!!」
「ファンクラブのリーダー!?」
「え、何それ知らない。」
ヒマリがヒョイヒョイと私に手をまねく。
(実は以前マロウちゃんがファンクラブ立ち上げたいとおっしゃりまして。私も興味が湧き一緒に立ち上げましたの。知ってます?マロウちゃんをはじめ色々な生徒が既に加入しておりますの。」
大規模非公式ファンクラブ...。
(アレ、そういえばヒマリ。今回マスターの奥さんへの髪留めのお礼としてこの撮影会って訳だけど、公爵家としてはなんかその...大丈夫なの?)
(友好国との交流を考えてた所でしたので。それにファンクラブという形で国に関係なく味方を増やせばここ最近続く魔族に関連した事件の情報もより多く手に入るでしょう。生徒と友人いうコミュニティもあってこそ可能な情報網と言えるでしょう。)
(す...凄い。)
(加えて生徒目線の情報というのも視点的な良い点もあります。サフラさんの影響力があってこそなのです。)
あらかじめ地盤を用意していたからこその行動力...恐るべしや。
結局クランとラーズもファンクラブに加入。
本来の世界であればギスギスしてた二人も何があったか私を推す同士のカップルとなっていた。
まぁ良いか。
メリーの悪い虫じゃなさそうだし隣国重鎮とのコネも得られそうだ。
しかし非公式ファンクラブねぇ、アイドルじゃあるまいのに...まぁいいか。




