第68話 消失?:一難去って一デイジー
トラブルがあった後とは思えない程に盛大な拍手に包まれ公演は幕を閉じた。
ゲーム基準ならあと1〜2回のサブイベントを済ませればストーリーイベントも発生するだろう。
それはそうと、だ。
なんとなく察していたけど今回の事件を起こしたのはトゥリパーノ家を良く思っていない貴族が差し向けた刺客だった。
今回は後方支援でガッチリ変装させた上でハイビスとヒマリには来てもらっていた。彼らが観て、危険な目に遭ったとなれば上がちゃんと動くからね。
伯爵とその令嬢、公爵とその令嬢、第二王子本人。
これだけ揃っているんだ、後は私が出る幕じゃない。
さぁ帰ろう...そう思っていた。
劇場の入り口↓
「声を聞かせてくださーい!!」
「是非インタビューを!!」
「自分、○○新聞の者ですが!!」
...と、マスコミやら噂を聞きつけた輩が押しかけてるんだわ。はえーよ。
もうメイク落としちゃってるし。めんどくせー。
「サフラさん...ありがとうございました!!!」
「ありがとうございました!!!」
一緒にいたから同じく帰れなくなっちゃったフヨウとマロウ。申し訳ねぇ。
でも兄妹揃って目をキラキラ輝かせている。
当然マロウちゃんにはサイン書いた。
「すっっっごかったわ!!ねぇサフラちゃん、今後も劇への出演を考えてくれない!?」
「落ち着いてくださいリップ先輩、都合が合えばですよ。」
「ありがとうサフラ君。君のおかげで娘を刺客から守る事が出来た。本来なら公演はやるべきではないのだが...トゥリパーノ家として劇を行えるなら何かないかと思ってもいたんだ。ここ数日君を見て感じたよ、君は相当な実力者だと。」
「ご慧眼です。」
「娘が信頼する君に大変な迷惑をかけた事には変わりはない。後日正式な依頼完了として報酬を贈る。」
彼らは演劇で生きる身だ。
逃げて生きるくらいなら劇で死ぬ方が本望と思う所があったのだろう。だがデモンズヴァルキリーと同じ、誰かに愛されているが故にそんな結末は迎えられない。
そこで私の出番という訳だ。
私としてもリップ先輩は私を世に広めてくれた功労者の1人だ、それに演劇部の先輩として色々教えてもらっていた。
大切な先輩だから今回の依頼を断る理由は無かった。だって私は普通のモブよりは強いから。
「こちらも上手くいきまして安心しました。」
「ヒマリ、ハイビスもありがとうね。」
「いいんだ、国を守るのが王族の務めだ。寧ろ協力の感謝は僕がしたいくらいなんだ。秘密作戦ってのも悪くなかったよ。」
「邪素の騒ぎが終わってすぐコレですから、サフラさんはしばらくお休みをとった方がよろしいのでは?」
「そうかな?」
「そうだよサラ。サラは色々動き過ぎなの!」
「トゥリパーノ伯爵様、サラにはしばらく休んでもらいたいです!」
「パパ、流石にサフラちゃん休ませるよね??」
「お父様もですわ。サフラさんに正式に休暇をお願いしますので期間中は危険な事に巻き込ませる真似はしないでください。」
「「はい...。」」
休暇ねぇ、
第一学年の頃は何か事件が終わればそれなりの確率で入院してた気がするしで妙な新鮮味。
でもそれはそれとしてここ最近魔力を使い過ぎたのもある。ロストストレージの魔力はもしもを考え極力使いたくない。私の回路に直接繋ぐ分には何も問題無いがただ外に開けるだけならエネルギーが飛び出して波動砲と化す。
...こういう時は食べ歩きだな。
無事帰れるなら。
「転移石はあるけど全員帰る場所が違うから困ったな...。」
「...そうだ!」
エキナさんが大きな声を出す。
そういやエキナさん達も残ってたな。
「ウチに来ないか?ウチなら全員分の転移石はある、なんならもてなしも出来る。」
「いやまぁそれはありがたいのですが...公爵様と伯爵様は...。」
「身分を隠せば私などただのおっさんよ。」
「その通りです。それに無断で訪れる訳じゃないから大丈夫さ。」
「ええ...。」
「なぁに、我々デイジー家は高位の貴族と同等の立場を有しているだけであって貴族じゃない。当主である私が許可しよう。」
いいのかそれ...?
「それに、君にも用があるんだ。(ガシッ)では行きたい人は集まれ!いざゆかん私の屋敷へ!」
転移する寸前、久しぶりに会ったワブキ先輩がやれやれ...って顔をしているのが見えた。
ーーーーー
これまたゲームには無かったエリアであるデイジー家の屋敷。位置的には王国近く。
エキナはかつての戦いに勝利を収めた事や様々な功績を持ち現在の当主となった。ゲームではその後の勇者チームの行方はわからなかったが...、
「ガベラやアイビー、リージア。それが私の大切な仲間達だ。」
前作主人公のガベラ、この世界での仲間は盾のアイビーと僧侶のリージアか。シンプル故にまぁバランス取れたらパーティだな。
今私は屋敷のエキナさんの部屋にいる。
食事後、なんか誘われたのでやってきた。
「ガベラは故郷の村で暮らしている。アイビーは今も世界を旅をしている。リージアはダンデ大聖堂の神官になっている。まぁみんな平和に生きているんだ。」
「...会いに行く予定はありませんがこの先会ったりは?」
「うーん...アイツらの事だし、案外ふとした事で会うかもね。戦ってみたいかい?」
「興味はありますが負ける自信が揺らぎません。」
「おいおいそういうなよー。」
今の私はレベルこそ無いが、鍛えられない訳じゃない。
私の推定レベルは67。
でも元がモブステータス故に技術は上でも単純な性能でレギュラーキャラには負けてしまう。
カメリア達に頑張って勝つならレベル的にあと10は欲しい。
加えて魔シリーズをもう2つ欲しいと思ってる。
ヒドから“破神竜ノ神眼”手に入れたいけど普通に言うと絶対ポンってくれるから困る、せめて戦って手に入れたい。
「あーそうだ...子猫ちゃん。いつでもいいのだが頼みが一つある。」
「なんでしょう?」
「再びワブキと戦ってくれないか?」
「え?」
「あの子もカメリア達に効率の良い経験値稼ぎを教えてもらったそうだが、3年前の戦いがどうも心残りがあったらしい。」
「...私の記憶は残っていない筈ですが?」
「私がワブキを退がらせただろう?その行動自体は君が存在しているのとはそこまで関係ない、誰かに負けるから退がらせた。だから断片的に記憶が残り、結果心残りとなったんだ。」
「そうでしたか。」
「でも、今君は休暇中だ。あまりそういうのは出来ないのだろ?」
「ですね、最低1週間は欲しいです。それにあの2人なんで大体の期間中監視されるでしょう。正直な話しばらく寝たいというか寝るのでとりあえず1週間後以降で予定とってください。あとこの話は皆んなにも通してください。」
「わかった。...さて話は変えるが、今の君って人間ではないんだよね?」
「!」
「流れる魔力が明らかに人間と違う。それに胸から溢れる悍ましい魔力...コアというなら君はゴーレムなのか?」
そういやエキナには言ってなかったか?
「人間素体のゴーレムと言ったところです。呪いとは別口で完全修復不可レベルに体を荒らされましてね。それが結果的にギリギリ生物はゴーレムに出来ないというルールから外れたのでしょう。」
「なるほど...そういえば昔、人の遺伝子を荒らす毒やら技術を研究していた一派がいてね。その内の一つに人の神経機能を破壊し、遺伝子をその状態で上書きする薬品があったとか...。」
「あー...確かに襲われた後、体から痛みを感じなかった。その時体も動かなかったし体も治んないし...多分それか、それに近い毒を食らったって事か。」
「だろうね。お察しの通り遺伝子を上書きする効果のせいで治療が出来ない。毒なんて生易しい物じゃないどう考えてもあってはならない物だった。」
「だった...もうその一派は無いのですね。」
「消されたね。使い方を考えれば遺伝子レベルの治療を可能とし、治療不可と言われる病気の数々を治せられる可能性が大きくあった。でも奴らは兵器として利用する事しか考えていなかった...だから消された。」
「...もし技術が残ってればワンチャン私のこの体も治せたかな?」
「わからない。でも希望はあった。」
「...そっか。」
私は席を立つ、
「おや、もう帰るのかい?」
「いえ、せっかくなので泊まってもよろしいでしょうか?」
「おーいいね!歓迎するよ!」
「カメリア達は明日授業があるので安全な所で休養取れるなら納得してくれるでしょう。」
「あとシア。」
『なんだ?』
「それまでワブキ先輩の相手してあげて。」
『承知した。』
「待った、シア。私と先によろしく頼む!」
戦闘狂め...。
クエスト[再会のデイジー家。]を受注しました。




