第61話 勇者:妹さんの為に
本来はいわゆるサブストーリー感覚のお話。
origin...
「...カ、カメリアさん...!」
「?...どうしたのフヨウさん。」
▶︎(先生が呼んでたのかな?)
・(何かご用でしょうか。)
「先生が呼んでたの?」
「え?あ、はい!4限目の後に職員室に来て欲しいって。」
「わかったわ、ありがと。」
「あ...。」
カメリアはその場を去った。
この時下を選んでいればフヨウは劇場へのチケットを渡していた。カメリアはその日特に用も無く、羽伸ばしにはいい機会と考える。
それをきっかけに、カメリアはフヨウと距離が縮まり始めるのだ。
ーーーーー
real...
「ねぇリズ、公演まであとどのくらい?」
「1時間きったところよ。そろそろ劇場に向かい始めてもいいわね。」
「わかった、妹ちゃんにいっぱい話してあげなきゃね!」
事は昨日、
「カ...カメリアさん!」
「?...どしたのフヨウ。」
「これ、どうぞ。」
「これ...明日王都でやるっていう公演のチケット?」
「はい、妹と行く予定だったのですが...妹の具合がちょっと悪くなりまして。」
フヨウには病弱な妹がいる。
この学園の生徒ではあり、入学した頃は体はとても安定していたが、最近になってまた悪くなり始めたのだという。家も遠く下手に移動も出来ないので近くの病院でしばらく入院しているそうだ。
「そっか...。」
「もし良かったら感想を妹に聞かせてほしいんだ、あの子は演劇が好きなんだ。」
「いいよ、私達に任せて。」
「これ転移石です。良かったら使ってください!」
「ありがとう!そうと決まればすぐに支度だね。」
「では、お願いします!」
と、握手をした。
そして現在へ戻る。
久々の王都を巡る2人、
「そういえば喫茶店メモリーって今日休業だったんだっけ。」
「そうよ、サラもどこかに出かけたみたいだわ。...誘いたかった?」
「かなぁ、いやあの劇場はあまりいい思い出は無いのはわかってるけど劇場が悪い訳じゃないしサラもまた行きたいって言ってたからさ。」
「チケットはこの2枚だけだからね、サラにもいっぱい話してあげましょう。」
「うん、そうしよ。」
話している内に劇場が見えてきた。
王都の劇場で公演するだけあってか人が多い。
なんでもリップ先輩が出るのも理由らしい。
「あら、カメリアさんとスリジャさんではありませんか!」
「ん?」
そこにいたのはいつもの2人。
「ヒマリ、ハイビスまで!?」
「あーれー?2人も来てたのか、やっほー。」
そういえばヒマリは演劇が好きだとか言ってた気がする。
「お二人も公演のチケットを持っていたのですか?」
「ああいや、これは(略)。」
「そうなのか、妹さん早く元気になるといいね。」
「であれば私達もしっかり目と耳に焼き付けなければですわ。」
「賛成だ。」
「ちょっとー、列が進むわよー!」
「ああ、ごめん!」
どうやら会場が開いたらしい、
そこから一気に人が流れ始めた。
「...!?」
「どうしたのメリー?」
「なんだろ、悪寒じゃなくてこう...妙な予感?」
「?」
「あら、これを見てください。」
「“予定の演者の変更...?“」
「...これだけ大きな劇で急な役者変更...、面白そうですわ!」
「なんだろ...“前にも”あったのかな...?」
「?」
「えーと、私達はこっちだね。」
自分達の席へ向かうのでヒマリとハイビスとは一旦別れる。通路が近いな、妹さんに何かあった時にすぐ助けられるようにしていたのか、いいお兄さん持ったじゃないか妹ちゃん。
妹か...そういえばサラにも...。
(そろそろ始まるね。)
(え?あ、うん!)
この公演はある悪魔族の悲しき物語を描いたもの。
王族に生まれたが故に自由がなく押し与えられた使命でのみ生きる事しか許されなかった王女の物語。
形に違いはあれど、悪魔族も自由に青空の下で生きたいと願う気持ちはある、現に魔族と同様一部が中立や和平を考えている傾向がある。
争いばかりでは真に平和は訪れ無いのは彼らだって知っているのだ、わかっているんだ。
「私達は少しでも、少しであっても変わらなければいけないの!争いばかりの今では平和なんて訪れない、なんで民に目を向けないの!!」
「黙れ!!いくら犠牲が出ようとも全ての争いを超えた先に平和は必ず存在する!!例え王女であろうと女王の命....と...あらば!!!」
女王の近衛騎士団に狙われた王女、
本当は女王の行く末に平和があるとは思えない、王女を斬りたくない騎士団長、
彼の目がとても辛そうなのを王女は気づく、
彼だって今すぐにでも争いをやめたい、
もう誰も殺したくないと。
「...うわあああああ!!!」
もうだめだ、その時に彼女は現れる。
刃を片手で受け止め王女を救う者が!
(厄災の女神、クチナシが...!)
「こーらー、ダメじゃん。誰よりも争いが嫌いな君が大切な人を手にかけちゃ。...笑止千万、己を滅ぼせば世界を救えると?」
「!!!???」
本来この役はリップ、
だがこの目に映るのはどう観たって...!!
「人の革新は積み重ねてこそ、潰して何がしたい。...愚か者共が。」
(サラーーーーーーッッ!!??)
(なんで!?)
(あらあらまぁ!!!)
(こりゃ一体どうなってる?)
(なんで私ここにいるんだっけ...?)
遡る事1時間以上前...
「え、え、どこに連れ...あれ、劇場?」
「私、クチナシ役だけど貴方以上にクチナシ役にピッタリな存在はいないわ!!私は今からでも別の役でも構わないわ!!!」
「はああ!?」
は?
なんつった、ク チ ナ シ ? ? ?
「記憶になくてもこのトキメキは忘れない、早く来て!!」
「いや引っ張られてる現状で言われても。」
「あはぁ...!!素晴らしい日だわ!!」
やべぇ目だ、厄介オタクもいいとこだ!?
これはまずい、冷静になってもら...えるわけがない。
こうして劇場に到着、
バァンッとドアを開けリップが皆にそれを伝える。
はぁ!?となる皆、
なんかアレなんで役者全開で台本通りに魅せる、
「...こ...これは...!!!」
「ああ...ここで巡り会えるなんて...!!」
「逸材だ...ああ、なんという!」
「ははぁー...!!!」
「え?え?」
...クチナシと一緒に住んでたせいでクチナシの演技に磨きがかかったのが拍車をかけた、リップ先輩なんて滝のような涙だぜ?
『これを着るといい、もしもに備えて他にも衣装を作っておいたのだ!』
「もしもって何!!?」
シアまでノリノリじゃん...。
もう着たけど。
「あーーっもう!!!いいよやってやるよ!ひれ伏せ愚か者共!我が直々に出向いてやる、しかとその目で観るがいい!!!」
「ははあ!!!!」
なんでこうなった。
時は現在に戻る、
「き...貴様は何者だ!!」
「ふふ...王女よ、ここは退くぞ。騎士団長とやら、相手を間違えぬ事だな。」
ここで劇は一度休憩に入った。
「...なんで?」
「なんでだろ?」
「まじか...。」
「あらあらまぁまぁ...!」
3人の頭はハテナでいっぱいになった。
1人はときめいていた。
その後、無事劇は終盤へ。
「貴方は...何者なのですか?」
「教えない、でもすっごい偉いヤツだよ。だから君も...あの女王みたいにならないでよ?」
「!!...誓います。」
「...ま、大丈夫だよね、君なら。」
クチナシは最後に振り返る。
「新たな時代と新たな王女に命ずる、生きよ!!」
「はい!!」
盛大な拍手と共に劇は終わる。
最後に役者達が舞台に集まり挨拶をする、
そこにサラの姿は無かった...と思ったら、
リップ先輩が先に舞台裏に行こうとしたサラをがっしりと掴んで、“まぁまぁこちらこちら”と言わんばかりの表情で連れ出して来た。
(今の私は劇団員じゃないんですよ!?)
(まぁまぁ。)
って言ってる気がした。
結局ちょっと不機嫌な顔でサラは舞台中央で深くお辞儀をし、拍手が劇場を包んだ。
ーーーーーーーーーー
「...という事なのぉー!!」
厄介気味オタク全開のリップ、
呆れる5人。
「そういう訳さ、元演劇部だからこういうのは好きだけど無理矢理こうはねぇ。」
「別にいいじゃなーい!私達なら貴方をいつでも歓迎するわ!!」
歓迎じゃなくて反省せいと5人は思った。
「しかし、サフラさんが出たとなるとお父様とお母様は悔しがりますわね...。」
「みんなサラが出演した衝撃で記憶吹っ飛んでいないよね?」
「なんとか大丈夫よ...。」
「?」
「実は(かくかくしかじか)。」
「なるほど...ちょっと待ってね。」
サラはアイテムボックスを開く。
「これ、使えると思う。」
「何これ?」
「1個だけ持ってた中級のエリクサーさ。妹さんの持病を治す事は難しいけど回復に向かわす事は出来る。超級なら1発なんだけどね...。」
「いや、中級でも持ってるだけでも十分凄いわよ。」
「まぁ持っていってよ。元気になってその目で劇を見れるようになって欲しいからね。それともし出すなら事前に言ってくださいよ、役者の皆さん?」
「ははー!」
「まだその返事か...。」
(ソレイユ公爵家がスポンサーとして動いてくれるから生活自体は困っていない、でもこの感じだとリップ先輩のトゥリパーノ伯爵家も動くだろう。うーん...この際再び役者として動ける様両家に話してみるか。)
「リップ先輩とヒマリ、ちょっと来て?」
「?」
「...私達どうする?」
「ここに居ていいらしいし、しばらく待とうか。」
「そうだ!後で奥で打ち上げ会があるから殿下達もいらっしゃいませんか?」
「え、いいのか?」
「殿下やヒマリ様が来ていただいたのですから、それだけでも俺たちゃ嬉しいんでさぁ!」
「うーん、まぁそうだな。ヒマリを置いて帰る訳にもいかないからな。甘えていくよ。」
「私達もお腹空いたし何か食べて行こっか。」
「そうね。」
フヨウと妹さんに話す思い出、
いっぱいになっちゃったな。




