第58話 笑顔:涙は無くとも
「...負けたかぁ。」
魔剣は元に戻り、メリーの髪色も戻ってた。
Chapter.1のボス戦にて主人公は英霊を得る。
歴史の修正力か、それともシナリオ通りか。
なんにせよ負けた。
多分リズ相手でも私は勝てない。
少なくとも彼女は私達の動きを完全に見えている様に見えた。
...私も努力が足りないな。
「うわっとと。」
しまった、ロスト魔力の過剰使用・チャージした影響で上手く動けない。ゴーレム回路の損傷が思ったより激しい、安定化するまではあまり激しく動けそうにないな。
「立てる、サラ?」
「...その呼び方。」
「思い出した訳じゃない。でも、思い出せないならまた築けばいいだけだって思ったの。」
「!...まずはニックネームからね、いいよ。ちなみに何欲しい?」
「え?」
「いや、勝った方が相手から欲しい物が貰える権利が。」
「...何も考えてなかったなぁ。」
「えー...。」
何か抜けてる所は昔から変わらないなぁ。
さっきの約束時間の件もそうだけど。
「んーちょっと待ってて、んーあー...。」
「なんかいい物持ってたっけな。」
「例えば...指紋とか?」
「は?」
「いやさ。指紋認証すれば学園の生徒だってわかるかなーって。」
「テルン先生の件は覚えてるでしょ?あのアマの作った毒のせいで肉体が遺伝子レベルで壊れてんの。色々あって今じゃ両手の各指の指紋バラッバラなんだ。」
「ぅえ...なんかごめん。んじゃあ...あ。」
「ん?」
「明日時間ある?」
「あるけど。」
「12時、東地区端の喫茶店メモリーに集合。私が欲しいのはサラの時間!」
私はやれやれと仕草をする。
「聞いたねハイビス?」
「ああ聞いたさ。それじゃあ今日はお開きだ。」
メリーとヒマリに肩を貸してもらい立ち上がる。
ゆっくり歩く途中、
「メリー、集合場所だけどさ。店内でいいかな?」
「いいよ、席取っとかなくちゃね。」
「はは、いい席を取られる心配はないよ。」
「?」
「そうそう、心配ありませんよ?」
「ヒマリまで...?」
夜8時半過ぎ、屋上。
「...3年経っても変わらないな、この景色。」
「そうなの?」
「シアがあちこちに張った蜘蛛糸トラップで経験値稼いでさ。」
「どういう思い出...?」
真っ暗な景色と夜空を照らす月と星々の下。
何も考えずただ3人で駄弁っていた。
「...不思議だよ、こんなにも早く2人と話が出来た事がさ。」
「サラ...。」
「2人にはそうでなくとも私にとっては3年もお預けだった。きっとこの身体がただの人間なら泣いていた。泣けない体がこんなにも辛いの初めて知った。」
「...寂しい時に寂しいと言えるのが命だと思うな。」
「そりゃどうも。ちなみに座学はリズに勝ったの?」
「そんな訳ないじゃん!!」
「おほほほ。」
デスヨネー。
「ああそうだ、今更だけどあの鎧って騎士団がくれたの?」
「そうだよ、以前誰かさんが考案した技術を発展させた物。」
「試作型だから大した容量は無いけど、小型化に成功した魔導コアを鎧に組み込むことでパワーアシストが出来る様になったのよ。」
「そりゃいいね、その小型化魔導コアを更に発展させれば戦闘以外でも幅広い活躍が見込める。例えば...魔法が一切使えない人でも何かしらの魔道具を使えたりとかさ。」
「私もそう思うわ。使い方さえ誤らなければきっとこれからも良くなるわ。」
ああ、懐かしい。
生身の人間だったら本当に泣いていた。
大粒の涙をぼろぼろ溢していた。
でもね、今の私はこのロストがなきゃ生きてないの。
今の魔導コア技術では生きることが出来ないの。
ごめん、
ごめんなさい。
「...感動の再会、と言い切れないのがもどかしいですわ。」
「そうだな、現状何かしてやれる事が少ないのが嫌で仕方がない。」
「禁書庫の件はどうなりました?」
「まだ説得中だ。あの呪いについて書いてあったくらいだ、えげつない厄ネタしか無いのだから母上も簡単には頷けないさ。」
「悲しいですわね。」
「ああ。」
「それでも乗り越えれるのが人間の強みじゃろ?」
「そうですわね。」
「そうだな。」
...。
「!?」
振り返るもそこには誰もいなかった。
「今...。」
「誰か...。」
「???」
「ハイビス、ヒマリ!そろそろ帰るよー!」
「え、あ、わかった!」
疑問符を浮かべた2人はとりあえず彼女らと帰路に着くのだった...。
「ねぇサラ、サラって今までどこに住んでたの?」
「テルン先生にどこに連れて行かれたのかも。」
「連れて行かれた場所付近に住んでる方に助けてもらったんだ。」
「へぇ、良かったわね。魔物の巣窟とかだったら死んでるわ。」
間違ってない。
「て事はいつも使ってる転移石は帰宅用?」
「そうだよ。でも私、最近この町に引っ越したんだ。」
「え!?」
「そこの2人がね。お陰で向こうは私の自立に駄々捏ねたもんさ、あはは。」
(駄々...?お子さんでもいるのかな、サラを助けた人って。)
「ていうか、ハイビスとヒマリ知ってたの?」
「聞かれてないから。」
「そう来たか...。」
「嘘は言っておりませんわ?」
「あはは...じゃ、私はこの辺りで。」
夜中でありながらサラは傘を開く。
風が吹き、月の光が人形を照らす。
でも...そこにいるのはどう見たって1人の人間だ。
「じゃあ、また明日。」
ようやく言えた。
「また明日、サラ。」
[絆が1上がった。]
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東地区、喫茶店メモリー。
現在12時前...。
「ねぇリズ、服乱れてない?」
「大丈夫よ。」
「僕らまで来て良かったのかい?」
「いいじゃありませんか、折角のお誘いですよ。」
「あれ、サラは?」
「店内にいますわ。」
え、そうなの?
なんか緊張する...。
だって、私服見せるのって...久しぶりなんだよね?ダサくないよね、ないよね!?
「ほらソワソワしてないで入るよメリー。」
「え、ちょ!」
カランカラン...
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。」
「あ...。」
「どうぞ、こちらの席へ。」
「似合ってるな、新しい店員さん。」
店に入りやってきた店員は、
黒髪赤目の少女だった。
「マスター、休憩いただきます。」
「どうぞごゆっくり。」
Chapter.1はこれでおしまい。
意外と早く叶った再会、待ち受ける未来は...?




