第56話 消失:失うばかりが私じゃない
Chapter.1...既に大荒れだ。
・このChapterのボスであるレッドグリズリー
が負けイベントのタイミングで倒された。
・彼氏候補の第二王子のハイビスが
既に婚約済み。
相手は本来ライバルになる筈だった
ヒマリ公爵令嬢。
彼女もどうやら親しい友人となったらしい。
・あるイベントで助けに来た彼氏候補の騎士、
センカが私が間接的な原因(?)で悪役に。
逆恨みだけど。
・センカが死亡、というより討伐した。
自業自得な末路を迎えた。
・そもそもメリーとリズのレベルがラスボス討伐
可能な程になっている。
すっげ。
そして、カメリアと約束した3日後は本来
レッドグリズリーにリベンジを果たす日だった。
うん、物語自体は進んでいるけどなんかこう..、
なんだこれ。
チュートリアルと彼氏イベントで繋ぐストーリーがほぼ無くなってる。
それにChapter.1のボスが私になっちゃってるね。ただでさえセンカが敵になっちゃって殺す事になるのは衝撃的過ぎたのに。あのキャラ魔法面が弱いけど鍛えたら強いし終盤まで安定して使えるから、私がいない間にみんなの支えになってほしい筈が...上手くいくもんじゃないね。
おかげでバッドエンドルート後の実績である
[騎士様殺し]が手に入ってしまった。
ジェノサイドルートだけは絶対嫌だぞ?
はぁ、でも二人とも元気で良かった。
ハイビス王子とヒマリ公爵令嬢が味方でいるなら二人は動ける幅があるだろう。後ろ盾としても人間としても信用が出来る。
しかしリズがまだ通常装備なのが意外だ。
指輪かぁ、リズに合うのがドロップするのはまだ先だしクチナシ達から貰うのも面白くないし、どうしよ。
考えても仕方ない。
「お待たせしました。」
「どうも。」
人目を気にせず喫茶店で昼食。
ここサンドイッチが美味しいの。
(な...なんだあの格好?)
(異国のお嬢様か...?)
(でもなんか不気味...、)
「はむっ...んん〜!」
(...ではないな、あの顔。)
(めっちゃ幸せそう。)
(流石マスターの特製サンドイッチ。)
「...ご馳走様です。」
「ありがとう嬢ちゃん。どうだね、今コーヒーの準備をしているんだけど飲んでみるかい?昨日いいのが入ってね。」
「いいんですか!ありがとうございます、飲みたいです。」
「ふふ、少々お時間かかりますのでその間どうぞごゆっくり...、」
カランカラン...、
「おや、お嬢様。」
「?」
「...初めまして、サフラさん。」
「!」
ひ...ヒマリ公爵令嬢!?
「ふふっ、大変驚かれてますね。私を知っているのでしょう?」
「...ええ、まぁ。マスター、席を移動してもよろしいですか?」
「かしこまりました。」
ーーーーー
「...私に何かご用ですか、ヒマリ様。」
「様はつけなくてもいいですよ、同じ学園の生徒で同級生はありませんか。」
「...ハイビスか。」
「ええ。」
やはり今朝の事を聞いたか。
この端麗な容姿とお嬢様オーラ。
本物だ...なんか萎縮しちゃう。
「今朝、彼から話を聞いて会ってみたいと思い。」
「...千里眼ですか。」
「まぁ!ご存知ですのね!」
「私は魔法が不得意なので憧れるのですよ。千里眼も夢見た事ありますが今は今の自分の方が好きですね。」
「そうおっしゃらずに、全く使えない訳ではないのでしょう?どんなに魔法や武法が不得意でも使い方と分を理解していれば力任せの愚か者に負ける事はありません。今の貴方が正にそうではございませんか?」
「はは、そうですね。」
ヒマリ・ソレイユ、
ハイビス王子ルートで現れるライバルキャラ。
正規ルートは主人公と結ばれ、バッドエンドはヒマリと結ばれる典型的なパターンのストーリーのキャラ。
ただしハイビスルートをちょっと齧って彼氏にせず彼女と会い友情を築くとハイビス共々友達としてプレイアブルになる。ルート次第では主人公の恋の味方として動いてくれるぞ!
この世界では既にハイビスと婚約済みで既に二人とカメリアは友情ルート上だ!
私としてはこっちの方が安心だ。
「今朝の件はお見事でした。あのセンカ元准尉を倒すなんて...とても気になって仕方がないです。」
「!」
来たか...、
「サフラさん、以前の貴方の活躍を私は覚えていません。ですがきっと凄まじい活躍をなさっていたではありませんか?」
「...。」
「一部、精神魔法耐性がある方からは貴方の活躍であろう記憶が抜け落ちた感覚がありました。きっと3日後の試合で何かあると思います...なので。」
ヒマリは手をヒラリと。
3人の大人が席を立ち、こちらにやってきた。
ロングソード、レイピア、軽斧か。
「前哨戦としてこの方達と模擬戦をお願いしたいのですが。」
ヒマリ公爵令嬢友情イベント。
相手の実力を知りたい令嬢はまず雇った冒険者を使い戦わせる。
ちなみにこの店のマスターの正体はヒマリの従者であり、彼女との話し合い場を作ってくれる。
私がここに来ていると伝えたのだろう。
「お嬢様のご命令とあらば。」
「もう、ヒマリと呼んでください。」
店前の大通りはヒマリの手配で騎士達が人が入り込まない様にしていた。何が始まると人々が集まっているが。
さっきの店の客も窓越しに私達を見ている。
「あら、その魔剣はお使いなさらないのですか?」
「これ、複数の毒を有しているので模擬戦で使うには物騒なのですよ。」
「そうでしたか、それは失礼致しました。」
疾風ノ短刀を久々に手に構える。
「見ろ、あれ。」
「貴族に目をつけられたか、あの少女。」
「こりゃ見ものだな。」
「ルールはお嬢様がどちらかが敗北と判断するまでだ。」
「大丈夫です。」
「皆さん準備はいいですか。」
(お嬢様が目をつけた少女...何者だ?明らかに只者じゃない。)
「では始め!!」
レイピアが前に出る、
「ほいっ。」
「ん?」
ナイフを上に投げた。
見たな?隙ありと顔面肘打ち、ノックアウト。
「せやあああ!!」
後ろから軽斧が攻めかかる。
ナイフを掴み振り下ろす!!
「な...!?片手サイズとはいえ斧をナイフで!?」
これぞゴーレムパワーよ。
驚いてる間回り込み首元にナイフを置く。
軽斧は降参で手を挙げた。
あとはロングソード、
「...参る!!」
彼、レベル高いな?
「おい見ろよ、どうなってるんだ?」
「ナイフ片手でロングソードと打ち合ってやがる。」
「化け物だ...なんて怪力。」
(なんだこの少女!?こっちはロングソードだってのに堂々とナイフで打ち合ってくる!!片手でだぞ、どんな筋肉つけたらこうなる!?)
(興じるのもこの辺でいいかな。)
ロングソードを大きく打ち返し、構えた。
「それまで!!」
「お。」
「ふふ、実力の一端を拝見させていただきました。私が想像していた以上です。」
「それは光栄です。」
「コーヒーが出来ましたわ、店に戻りましょう。」
ーーーーー
「...今なんと?」
「このお店に住んでみてはいかがでしょうか?」
え、どゆこと?
「一つ、貴方は貴方で拠点がある様ですが転移石を使っている辺りかなり遠い場所ではございませんか?」
「いやまぁそうですが。」
「転移石も無限ではないでしょう?」
...そうなんだよな。
クチナシ達は転移使えるから転移石は使ってないしで余ってる物をくれてるけどもらい続けるのもアレだし。
それに私は神出鬼没のミステリアスキャラになりたい訳じゃない。ストーリーに沿って物語介入したいのだ。
今の荒れ模様でストーリーと言っていいかアレだけどね。
「二つ、ソレイユ家として支援をさせていただきたいのです。」
「え?」
「サフラさん貴方...女優を演じた事ありませんか?」
「!?」
「やっぱり、3年前の消失新星事件で消えたのも貴方...実を言いますと私の両親は貴方のファンなのです。」
「ふぁ?」
「勿論私もです。あの事件までにも小さな公演にご出演した事はありましたよね、二人とも貴方の才能に目を光らせそれはそれは強く興味を示していましたの!」
「...いつ目をつけられたの?」
「私達が部活動入部日の公演でしたわね。」
最初からかよ!!!
「何せ役者家系として有名なトゥリパーノ家が目をつけていたのが、貴族間で話題になっていましたの。事件が起きてからは“将来有望な役者の卵”がいたという事実だけが残りました。」
私という“存在”だけが消えた事で穴の空いた 事実が残った。現に事件が起きたという事実が残っている。
「貴族は有望、有名な人物を支援する事で自らも名誉を欲するのです。簡単に言いますとお互に得のある良い関係を築きたいのです。」
要はスポンサーでその主は私のファン。
推し活ってやつだ。
「ハイビスから聞いた話では、貴方の呪いはある程度の度合いで止まっていますわね?」
...合っている。
クチナシら三柱の認識下でいる為存在の消滅までは免れている。
ハイビスにいつまで覚えていられるかなとか言ったけど多分大丈夫なんだよね。
「私はソレイユ家当主代理として再びお伝えします。...我々と手を結びませんか?」
「よろこんで。部屋に家具は持ち込んでいいですか?」
「ええ勿論。」
「では、入居祝いにこのお菓子をどうぞ。」
「まぁ、まぁ!」
「おお、マスター特製のドーナツ...!」
「一応時間があればここで働くことも出来ますが、」
「服の採寸表を後で用意するのでお願いします。」
「あらあら、こちらでお任せください。マスター。」
「ええ、お嬢様。」
後日、黒髪赤目の美少女が喫茶店の新しい店員として働いていた。
ちなみにクチナシはサフラの新たな拠点に
駄々捏ねたとか。




