第55話 消失:ケジメ
「...ほぅ、魔物でありながら強烈な自我で現世に留まり、英霊という形で蘇る...か。ありえない話ではない、強い自我を保った生物は肉体の死後新たな生物に転生する実例はある。特にそのシアという英霊は肉体も魔剣として生まれ変わっている、この場合それは死を通し肉体と魂が分離して蘇ったと言った感じだろう。現にそのシアはいつでも肉体である魔剣に戻れるのだろう?」
「各々が進化した上でその肉体と魂が融合...英霊であり生物として戻る事で、それぞれが持っていた力を取り戻す事で爆発的な力を得る。昔に似た様な事を試そうとした人間がいなかったか?」
「うーむ...大昔の魔族でそんな事を試そうとした連中がいたなぁ、失敗じゃったが。」
「アレだろ?魂は高位ゴースト系の魔物で肉体はリビングアーマーだった鎧を強化した上で憑依という人工的な強化を施し使おうとか。」
ある時、私はクチナシ達にシアの事を話した。
意外と驚いていた。
ただの魔物が英霊となる例は初めてらしい。
「シアと離れてから英霊必殺が使えないからちょっと不便なんだよな...それにシアも[ロスト]の影響下だから私の事は忘れてるだろうしアレ使えるのはいつになるやら...。」
「うーむ、意外と早いかもしれんぞ?」
「え?」
「英霊はただのゴーストとかなんぞではない。魂や魔力エネルギー的な構成のみでこの世に存在するかなり特殊な存在じゃ。基本的に極めて高い魔力を持ってる故に人間やそこらの魔物と比べれば遥かに上位の存在と言ってもいいのじゃ。ワシら程じゃないがな!」
「お前の“おもちゃ”はお前自身と少しずつ同調し始めている。それにその魔剣に使われているのはソイツの体組織の一部だ。ロストの影響は規模こそ世界全体だが対象は生物だ、魔法やただの物体は対象外だ。」
「その傘と近づけば何か起こるかもしれぬ。」
「...!」
サフラの目が煌めいていた。
力を求める目ではない。
仲間とまた会える事が心から嬉しい、自然とそんな目になっていた事にクチナシ達は気づいていた。
同時に、やっぱり寂しかったのだと。
「よーし、今日は鍋じゃ!!」
「いいな、サラが教えてくれたあの料理は中々美味かったからまた食いたかったんだよなぁ!」
「今日はキムチ鍋で行こう。」
「あん!?鶏ガラだろ!」
「ごちゃごちゃ言わんと早よ準備せんか!」
ーーーーーーーーーー
時は現在...
「ぜあ!!これはどうだ!!」
「...。」
センカはサフラにとにかく斬りかかる。
「武法・ガードブレイク!!」
「その程度...私には届かない。」
「な...なんという魔力!!」
しかし、サフラから溢れ出す赤黒い魔力エネルギーが壁となり、剣が全く届かない。
「ただただレベルを上げただけの奴が超えられると思うなよ。」
(コイツは本来プレイアブルキャラクターとして主人公達を支える筈だった。だが歴史が変わりメリーとリズは彼を必要としない程強い。そして私がきっかけで変わり果てた。彼を変えたケジメはつけるべきか。)
「この程度本気じゃない!!貴様からもかかってきたらどうだ!!」
「そうか、じゃあありがたく。」
「ぅお!?」
センカの脚が浮き上がって...いや、滑る様に転ぶ。
「あれは!?」
見覚えが何故かある。
「糸だ!センカの足に括りつけてたんだ!」
「いつの間に...!?」
「君本当に何も見えてないね、首に括りつけてたら大変な事なってた。遊ぶつもりは無いんだけどせめて君の心をへし折っておきたいんだ。」
「ふざけるな!!」
「その攻撃は見飽きた。...魔剣使ってる意味がないな。」
サフラは魔剣をカメリア達に向かって放り投げる。
「シア、メリー達を守って。」
『了解だ!』
「シア!?」
魔剣が女性に変わった!!
『色々言いたい事はあるだろうが話は後だ!主様、こっちは任せて!』
「さぁ来いよ。」
「素手だと...舐めるのもいい加減にしろ!!」
変わらず単調な動きで真っ直ぐ来た。
馬鹿だ、動きが見えていれば対処する術の多い素手が上に決まってるだろ。
私は少し横に動き、顔に向かって重力魔法を自分にかけた上でパンチ。
変な方向にぶっ飛ばされた。
すかさずとにかく殴って蹴って地面に叩き落とす。
こんな奴相手に勝負が長引く要素なんて無い。
へし折れるにも時間の問題か。
知らない間に折れてた左腕の負傷部を踏み、見下ろす。
「もう虫の息か。」
「...ぉ..の...れ...!!!」
「私はただケジメを取りに来ただけなんだ。もう付き合う気はない。」
「...いいのですか、団長。」
「...構わない、あの少女がいなければ最悪死人も出ていた。」
「じゃ、バイバイ。」
「死ぬのは...お前だあああ!!」
「ん?」
胸元が光った...あれ、これ[ヨビヨセール]だ。
魔物襲撃が強制的に始まる魔道具。
「うわあ!?イビルスコーピオンだ!!」
「!?」
そう来たか、負傷者多数の状況でデバフのデパートなイビルスコーピオンは最悪。
ちょっとは死人が出るだろう。
「まぁ、想定済みだ。」
元のストーリーでもヨビヨセールを使い逃げようとした敵がいたからね。ちなみにそいつはボスに食われた。
飛びかかるイビルスコーピオンの数々に細い糸。
『準備OKだ、主よ。』
「それ。」
糸にロストの魔力エネルギーが流し込まれる、イビルスコーピオンは爆発四散、木っ端微塵になった。
「で、何がしたいの。」
「サラ危ない!!!」
突然の声、
「メリー...今なんて?」
パシッ、とそれはギリギリ掴めた。
イビルスコーピオンの変異種、フェイタルスコーピオン。原種と比べとても小さくめちゃくちゃ速い。(10cmくらい)
一部の個体は必ず先制攻撃が出来るスキルを持っている程に。
そこじゃない、
「あれ...私...。」
「...。」
もしかして今の...ロストの。
「...そんなに思ってくれてたんだ。」
そんな間もサソリはギチギチと暴れる。
「ねぇサソリさん、ちょっと手伝ってくれない?」
私はフェイタルスコーピオンを潰した。
「確率は5%...わお。」
左腕で潰れたサソリは形を変えてゆく。
「まさか...魔剣!?」
「フェイタルアーム...癖強武器ゲット。」
[フェイタルアーム]
攻撃力、10
切れ味、40
重さ、7
強度、(破壊不能)
属性、無属性
パッシブ、[痛毒付与]
[耐性弱体化毒付与]
[痛毒付与]
・継続ダメージの大きい毒を付与する。
[耐性弱体化毒付与]
・一定時間、
対象のあらゆる耐性を0.9倍化させる。
「赤い色、小さな1本の真っ直ぐな毒針の手甲。そして軽さ。...これからよろしくね。」
「あ..ああ...。」
私はセンカの腹にこの針を刺した。
「っっっっっっ!!!!???」
「激しい痛みと苦しみを持ってこの世界から退場を願うよ、さようなら。」
2分、もがき、苦しみ、泡を吹き。
何もかも動かなくなった。
実績[騎士様殺し]を取得しました。
ーーーーーーーーーー
「...ふぅ、終わった。」
『主...。』
「さて、私はそこで休んでるからとりあえず話したい事話しといていいよ。」
『...うむ。』
「団長さん、これ。」
回復のポーションがいっぱい入った袋を渡した。
「早く治してあげて、手伝いますよ。」
「...大丈夫だ、君は休んでいるといい。」
「そっか、何かあったら呼んでいいよ。」
「感謝する。」
私は木陰に座り込んだ。
シアは向こうの木陰で二人と話している。
...シア自身は記憶を思い出した訳じゃない、でもこの場の誰よりも私が忘れ去られた存在である事を理解はしている。
...寂しいな。
「君、強いね。」
「ハイビス殿下...。」
「殿下はやめてくれ。」
...そのままだな。
「君、十聖だよね。」
「...どうしてそう思うの?」
「どう見ても僕らと同年代だ。それにあの二人の行動予測が出来ている。僕には君があの二人の親友、それ以上の関係に見えて仕方ない。」
相変わらず凄い眼だ。
「そうか...二人は元気?」
「ああとても。最近は俺の婚約者と会わせて見たがすぐ仲良くなった。ヒマリといってさ、高位の貴族だから親友と言える奴があんまりいなかった、でもあの二人とはすぐに打ち解けあって今じゃ町によく遊びに行ってる。」
「...君が二人の友達でいてくれて良かった。ありがとう。」
「でも真に幸せとはいかない、君は何故...呪いか。」
「!」
「やっぱり...昔一度、禁書庫に忍び込んだ事があった。その時見た本に誰からも忘れ去られる呪いの宝石が書いてあった。あれを見て当時の俺は怖くなって禁書庫を出た。...禁書庫自体基本開いてないが俺はあれ以降一度も禁書庫に入っていない。誰からも忘れ去られる辛さは想像を絶する、なのに。」
「この呪いも想像を絶する程だ。今の会話もいつまで覚えていられるかな。」
「3年経っても完全に忘れ去られていない、何か秘密があるんだろ?まぁそこまでは聞かないよ、知りたい事は知ったし。」
「...メリーとリズをよろしく。」
「任せろ。」
私はハイビスと強く握手を交わした。
『主よ。』
「!」
『カメリアから話があるそうだ。』
メリーから?
「サフラ・アコニリン...3日後の夜、学園の競技用試合会場で待ってる。」
「...話はその時でいい?」
「ええ。」
「シアは...。」
『主と共に戻るよ。』
「そっか。」
私は転移石を使い、帰った。




