第54話 勇者:ギラギラ
お久しぶりです。
「ギラギラが誰か...気になるのはわかるが...ふあぁ。」
「ねぇメリー、いくら休日だからって今午前4時になったばかりだよ?早すぎるわ...。」
「...そこは本当にごめんって。」
ギラギラは別にいる。
だからクレイジーフェアリーに何かがあったであろう森の奥を調査する為に早朝リズとハイビスを呼んだ。
起こしたの自体は3時台なのです二人には“夜だろ”と言われたけど。
「レッドグリズリーはまだしもソニックビーは夜目が利かないから光魔法を使わない限りは心配ないわ。それでも警戒する事に変わりはないわ...。」
「ここどの辺りだ...?」
「前の授業でソニックビーを蹴散らした所だよ、足元気をつけてね。」
「クレイジーフェアリーってもっと奥だよな、下手に走れないの嫌だな。」
4時になったばかりだ、暗いので転ばないよう慎重に歩く。
そもそも事件の犯人を探す為に来ているのだから騒がしく動く訳にはいかないよ。
普通の女の子なら「うう...暗いよ...怖い...ねぇ帰ろうよ。」という所だが何も思わない。普通じゃないよ私達は、普通じゃ困る。
「グルルル...!」
「なんかいるな...どうする?」
「ナイトロゲン・フィールド。」
「ゲッ、窒素ガスか!」
魔物が隠れていたのでリズは穏便(?)に済ませようと魔物の周囲の窒素濃度を上げて掃討。
怖い。
「...待って。」
「!」
人の気配。
こっちに向かってくる、
殺気の籠った気配と視線!
キラリと光る目!
ガサッと飛び出す!
繰り出すチョップ!
避けたリズ。
「馬鹿野郎!僕も殺す気かこの見境無し!!」
「り、リクスさん!?」
騎士団特務隊リクス、現在大尉。
ーーーーー
「いくらなんでもやり過ぎだ!ナイトロゲン・フィールド使える時点で驚きだがいくら人がいないからって急に使うな!!一応巡回警備ぐらいいるんだぞ!!」
「うう、すみません...。」
「そもそもなんで特務隊のリクスさんが...もしかして例の件で巡回?前もそんな感じだったし...。」
「そうだよ...もう、もしかして君達もか?」
「そうでーす。」
「殿下...もう少し立場を...はぁ。...なんか不安だ、僕も着いていくよ。」
「ありがとうございまーす。」
パーティにリクス大尉が加わった!
「探しているのはギラギラってやつだろ?一応君達は光沢とかそういうのがある装備は武器はつけてないな?」
「はい、見ての通り。」
「剣も魔法で光沢を消しています。」
「...わかった、じゃあ行くぞ。殲滅作戦で騒がしくなる前に奥まで進むぞ。」
ため息つきながらも先陣切って私達と行く辺り面倒見が本当にいい人なんだよなぁ。
“あの子”もお世話になった。
久しぶりに会って今更だけどリクスさん昇格したんだ。
「ったく、大尉になってもこれか...あれ...“も”?前にこの子達と...なんだ、うまく思い出せない?」
「リクスさんもですか?」
「!...やはり3年前の事件で消えた子と関わりがあったのか、僕は。」
「はい、さっきと似たやりとりをしてました。」
「っ...はぁ。」
...このやりとりも実は何度かしている。
あの子の記憶が薄れる度に。
リクスさんもやりとり自体完全に忘れた訳じゃないらしいがあの顔を見るにもう容姿どころか声、会話内容すら思い出せないのだろう。
「...騎士団の調査では何かしらの呪いじゃないかと声が上がってる、でもこんな規模の呪いなんて聞いたことが無い。どうなってるんだか。」
「呪いの規模はものによりますからね。大昔の悪魔族は様々な呪術を開発したとされますから、その中に世界を巻き込める呪いが一つや二つあってもおかしくありません。城の禁書庫なら何かわかるかもしれないが、よっぽどでもなければ開けないからさ。いい加減開けてほしいもんだ、困ってる奴がいるのに。」
「殿下...。」
「禁書庫の権限を持ってるのは母さんだ、母さんは禁書庫の情報が何かの拍子で世に出回らないかととにかく恐れている。わからなくも無い、あそこにあるのは古代の技術関連が記された本もあるらしいからな、ものによっちゃ現代技術で再現出来てしまう...それは最悪大戦の火種になる。」
「呪いもその内に入るのは当然だな。」
「いい加減開けるよう父さんと説得してみるよ、知らない事ばかりがいい事じゃない。」
「...ありがとう、ハイビス。」
願わくば、私もその禁書庫の書物をみたい。
あの子とまた会えるきっかけがあるのかもしれないのだから。
それからしばらく歩いているうちに空も薄明るくなってきた。
「そういえばリクスさんは巡回なのに一人で行動なのですか?」
「僕が担当する巡回は特殊。普通の騎士の巡回と違ってあまり目立つ訳にもいかないのさ。現に装備も軽装型だろ?」
「なるほど。」
「以前は隊長達とでゴーレム熊を討伐したけど基本は後方支援だ、覚えておいて欲しい。だから...。、」
ズバッ
「ギギッ....!」
「真っ先に僕が怪我する様な行動はやめろよ?」
クレイジーフェアリー...もう出始めた!?
「ちょっと早いな...もしかしたらこの先に。」
「コイツラ、ナカマ!!」
「ギラギラ、ギラギラ!!」
「...可能性大ありだ!」
「誰か先に向かうか?」
「必要はないさ。」
もう皆んな全部倒したから。
すぐに加速魔法を使い、森の奥へと駆けた。
道中、現れる魔物は全てクレイジーフェアリー。
経験値フィーバー...なんて言ってる場合じゃない、数が多いしギラギラと言ってくる。
騒ぎを聞きつけ他の魔物も集まる。
「なんだよこれ!?」
「可能な限り討伐して目的地を優先だ!!走れ!」
「あいあいさー!!」
目的地に近づくにつれ、異様な魔力を感じる。
これに近い感覚を私は知っている。
「ソニックビー...?」
「おそらく、いや間違いない!上位種のバイオレンスビーだ!」
広い空間、レッドグリズリーがいるはずのエリア。
そこには蜂の群れ。
中央には明らかに大型で凶暴な見た目の蜂。
周囲には取り巻きとしてか大量のソニックビー。
「なるほど、先日のソニックビーとレッドグリズリーはあの群れに巣を追いやられたのね。」
「見ろよあの外殻、太陽も出てない薄暗い空だっていうのに不気味な光沢がギラギラ浮き出ているぜ?」
「あれがギラギラ...?今までどこに。」
「ソニックビーは群れの規模が大きくなると地中に造ることがあるわ!」
「なら見渡す限りあの大穴だな...。」
「どうする、戦う?」
「私達ならなんとか行けそうだけど。」
「規模が分からない、巡回中の第3騎士団へ信号弾を撃つが奴らも同時に襲いかかってくるだろう。あのバイオレンスビーを倒せば取り巻きのソニックビーはパニックを起こす、だから準備はいいか?」
「いつでも。」
「とんだモーニングコールだ。」
リクスは空に向かって信号弾を放つ。
蜂共はスイッチを入れたかの様に襲いかかってきた!
「いっくわよー、バーニングウォール!!!」
炎の壁がソニックビーを飲み込む!
「ハイビス!!」
「エアバレット!!」
ハイビスがバイオレンスビーに向かって撃ち込む。
バイオレンスビーの視線はハイビスに向いた。
「よっし、あとは頼むぜ!!」
「「魔融合武法!!」」
バイオレンスビーはハイビスに向かって襲いかかる!ハイビスはそれを予見して、
「かかったな?エアーマイン!!」
空気の置き爆弾...地雷を設置していたのだ!
衝撃波で仰け反るバイオレンスビー、
その隙が命取りだ。
「フラッシュ・エッジ!!」
「疾風・ツインスラッシュ!!」
二人の魔融合武法が叩き込まれる。
バイオレンスビーは何も出来ず動きが止まった。
「さぁ、ここからだぞ。」
問題はここから。
女王蜂を失った群れは基本崩壊する。
統率無くして群れが動ける訳がない。
ソニックビーはパニックを起こし動きが不安定になり始める、皆は広範囲攻撃をとにかく繰り出す。
まだはっきり明るい訳じゃないので一部の個体は木にぶつかり、羽を損傷したり絶命するのもいた。
戦ってる場合じゃない、
女王を失い何が正しい行動かがわからない。
カメリア達にとってそれはもはや動く的。
森に逃げた個体は援軍が倒してゆくだろう。
こうして薄明の森に潜むギラギラ騒動は終焉を迎えた...。
そう思っていた。
ーーーーーーーーーー
援軍が駆けつけ蜂の群れは鎮圧。
木々の隙間から朝日が差し込む。
「はぁ、疲れた。」
「まさか森にこんなやつがいたなんて驚きだよ。」
「バイオレンスビーは魔物であっても蜂だから巣を引っ越す習性を持つわ、それが今回ここだったのね。」
「...ん?」
4人に近づく一人の騎士。
「君は...第3騎士団のセンカ准尉か。」
「はっ!騎士団長からリクス大尉へ直接話しがあるとご報告致します!」
「わかった。君達、ちょっと待っててくれ。」
リクスさんが一旦離れた。
「...君達も無事かい?」
「ええ、まぁ。」
「バイオレンスビー...上位種が群れを引き連れ移動するのはたまにある話だが、レッドグリズリーに縄張りを捨てさせる程強力な個体はそういない。」
「クレイジーフェアリーを倒していたからかもしれません。」
「なるほど、経験値は人間だけが得られるものじゃないからね。縄張り争いでクレイジーフェアリーとも揉めていたか。」
「だからたびたびギラギラって...。」
「おそらくそうだろう。騎士団が巡回していた時間は巣の中にいたのだろう。だから気づくのに遅れた...こんなところだね。」
「...。」
「?...どうしたんだい。」
先程からリズは考え込んでいた。
「蜂の光沢と鎧の光沢...ギラギラ...何かおかしいと思いませんか?」
「!」
「リズ?」
「クレイジーフェアリーが襲ってきた理由を思い出してください。」
「ギラギラがどうかしたの?」
「クレイジーフェアリーは、ギラギラ”の仲間“って言ってたのよ?」
「!!」
肝心な事を忘れていた。
そうだ、クレイジーフェアリーがギラギラと言い襲いかかっていたのは人間だ、蜂とは大違いだ。
「ひとくくりにしているのじゃないか?」
「それにしては大違いよ。だって...、」
リズはアイテムボックスから食べ物を取り出し投げる。
「ギギッ、タベモノ!!」
「ギギッ、“ニンゲン”!!」
「“アカイハチ”、タオサレタ!!」
「ギラギラ、ドコカニイル!!ニゲロ!!」
...その場にいた誰もが今の言葉に驚愕した。
「...ねえ!ギラギラって誰かわかる?」
「な...!!」
「ギギッ?」
「...危ない!」
センカがリズを守ろうと駆け出す。
それをリズは待っていたかのように足を掛けたのだ。
「なっ!?」
センカは転び、クレイジーフェアリーが...、
「ギギッ!?」
「ギラギラ、ギラギラ!!」
「コイツ、ギラギラノ、ヤツダ!!」
「な...!?」
ギラギラ...今、
センカに向かってギラギラと言ったのか?
「え...今、なんて言ったの?」
「ギラギラよ...この事件の真犯人であるギラギラ...センカさんの事よ。」
「な...何を言っているんだ?ギラギラは誰かなんて...。」
「センカさん、騎士団はクレイジーフェアリーを殲滅作戦として討伐しています...ならなぜ貴方を見てギラギラと言ったのでしょうか。光沢のない装備であるにも関わらず。」
「っ...!!」
リクスがこちらに来た。
「昨日の殲滅作戦でクレイジーフェアリーをわざと数匹逃したんだ、ギラギラを知っているのはそいつらだけ。街道に被害が及ばないよう特務隊の監視下で泳がせていた。まぁ蜂の件は予想外だったけども。ちなみに立案者はそこのスリジャだ、知能がある魔物であればもしかすれば...だったがここまで上手くいくなんて。」
「誤解だ!!俺はそんな事...、」
「ええ、確かにセンカさんは光沢のある装備をしていますがギラギラと言うほどではありません。なんなら援軍の皆さんも光沢消しの魔法は使っていません...ですが。」
「あ...!?」
「一際、光沢の強い物を貴方は持っていますよね?」
「やめ...!!」
リズはそれを取り上げた。
「光鋼鉄の刃...ちゃんと手入れをすれば鏡の様に。」
「ヒィィッ!!」
「ギラギラ、ギラギラ!!」
「イヤダ、ギィィ!!!」
クレイジーフェアリー達が明らかに怯えている。
光鋼鉄の剣を知っているのだ。
「特務隊の調査で、騎士団で光鋼鉄の剣を使っているのは君だけだ。それに今まで君が巡回をしていた日、非番の日、そしてギラギラの出現時期や情報が異様に噛み合っているんだ。...説明の為にご同行願えるかな?」
...どうやらリズは私とは別で探りを入れていたのだ。後から聞いた話だが、クフェア先輩を経由して騎士団に協力を求めていたらしい。
ギラギラは巡回の騎士の可能性があると。
...もしかしなくても、リクスさんも暗殺部隊なのだろう。明らかに動きの筋が他の兵士と違う。
それに裏調査を進めるなら彼らが一番信頼出来るから。
「...はぁ。」
「センカさん...?」
「危ない!!」
センカが危機を知らせる...が、そこには何もいない。
「はっ!?」
騙された、取り上げていた剣を奪還されてしまった。
「...抵抗するなら容赦しない。」
「...なまじ知識を持った魔物は本当に嫌いだよ。」
「センカ...お前はなぜ、こんな事を!?」
「...騎士団は力だ、そう思わないか?」
「力?...なんの話だ。」
「サフラ・アコニリン。」
「!!」
「以前、貴方が斬ろうとした女性...物凄く強かったわね。」
センカの眉間に皺が出来る。
「まさかお前...ランダーの件にまだ納得いってないのか!!」
「当たり前だ!!!騎士団の仕事は脅威を未然に防ぐ事も一つ!!なのに...ランダーはなぜ追放された!?あの悪魔を斬ろうとして何が悪い!?」
「あの少女は我々や一般市民に危害を一切加えていない、それなのにお前は!!」
「黙れ、黙れ!!俺は次に会った時にあの女を殺す為に鍛えていた!!巡回先の経験値が多い魔物をとにかく倒し、レベルを上げあの女を殺す事しか俺は考えれない!!あの女は人の皮を被った悪魔だ、対峙して分かったんだ!!」
(シア...。)
「もしかして、ギラギラ個体のクレイジーフェアリーは隙を見て逃げた個体って感じ?彼程度じゃ群れを倒しきるのは難しいと思う。」
「仮にも市民を守る立場の人が後先考えず行動し、結果誰かに被害が及ぶとは...クレイジーフェアリーの経験値は魅力的ですが知能がとても高い分気をつけなけれなならない点が多いはずです。まさか、ただ経験値を稼ぐ事だけを考えこの辺りの時間を選んだのですか?」
「何か悪いか?レベルを上げる為ならこの時間を選んで当然だ。逃げた臆病者など知らないな。何よりこの辺りでクレイジーフェアリーが出現するのは街道を通る奴らには伝わっている。襲われたなら自業自得だ。」
「...もういい、事実を隠して経験値を稼いでいた辺り罪悪感はあったのだろうと考えたけど。」
「違うな、他の奴らに止められるのが面倒だっただけだ。」
「...今よりセンカを、事件の主犯として拘束する。全員...、」
「させるかよ。」
「!!」
速い、
「な...セン...!!」
「弱い...こんな雑魚どもに俺は囲まれていたのか。力のない騎士など必要ない。」
「貴様ぁ!!」
騎士達がセンカに一斉に攻める。
だが、センカは容赦なく騎士達を斬り伏せる。仲間だった事など一切思わず、作業でもするかの様に。
「...僕は貴様を生かす気は無い。」
リクスが飛び出す、
「ふん、アイツらと比べればマシだな。」
「一緒では困る。カメリア、スリジャ!!」
私達は既にセンカを“始末”する準備は出来ていた。
だが...、
「おっと!」
「なっ!?」
「あ...!?」
センカは私達に目掛け、リクスさんを蹴り飛ばした。しまった、これでは下手に攻撃が出来ない!
センカはその隙が命取りと言わんばかりに3人に向かって、
「魔融合武法...!!」
避ければリクスさんが危ない。
見捨てる事が出来ない。
「ブライトセイバー!!」
センカが迫る!
「ケジメは私が付ける。」
その剣は3人に届かなかった。
「な...!?」
「醜い鏡だ、ここに写ってるツラはさぞ酷いものだろう。」
弾かれた。
傘に弾かれた。
黒い日傘が開くとともに現れた人形の様な少女。
ギラギラ光る刃に写るのは驚くセンカと少女。
「気をつけて、練度は大した事ないけどコイツ、レベルは50を超えてるよ。リズ、勝負が終わるまでは強化魔法をメリーとリクスさんに常にかけておいて。」
「分かったわ!....え?」
反射的に出た言葉。
ふと我にかえる。
「...会いたかったぞ、サフラ・アコニリン!!」
「おはようございます、私の厄介ファンさん。私を殺す為に頑張ってたみたいだけどさ...ちょっとやり過ぎだよ?」
傘を閉じると同時に全身に赤黒いゴーレム回路が張り巡る。
その眼は流れる川より冷たく、飢えた狼より鋭い。
「プレイアブルだろうと、皆んなに手を出した罪は重いぞ。楽に死ねると思うなよ?」
「楽に死ねる?...ふざけた事を。ここにいる様な平和ボケした連中と俺は違う、俺の力が正しい事を証明する為に鍛えてきた!...いい景色だ、今まで従ってきたそこの騎士団は俺に手も足も出ない。弱いくせに俺の言う事が聞けない...そんな奴らがいつまでも騎士団にいられると思うと今度は気持ちが悪い。寄生虫を駆除すれば俺の力が認められる、いや認められて当然だ!力こそが正義、俺には力がある、お前はこの場で処刑する、俺こそが正義だからなぁ!!!」
「くだらない、今日の昼飯考える方が有意義だ。」
赤黒いエネルギーがゴーレム回路から溢れ出す。
「センカ・リユイローク...私がきっかけで変わり果てたと言うなら、私の手で終わらせる。」




