第50話 消失:魔剣と少女は突然に
「...ふぅ、一丁上がり。」
「お...おのれ...!ぼ..ボスが...!」
「うるさいよ。」
「ぐはっ!?」
-倒れた男の額に剣を刺す。
「たまたま賞金首の盗賊団見つけたからこの武器の性能実験がてら襲ってみたけど...あっけないもんだねぇ。」
「...派手にやったな。」
「賞金首に慈悲は要らない。万が一の為に本当に悪人かどうかのウラは取ってるから。」
「ウラって...ああ、ヒドラが教えた霊像を使ったのか?」
「うん、これで見える魂の気配や形は幻影魔法も意味を成さない。ある種心眼、真実の目と言えるね。」
「ほぅ、俺の技をそこまで使えるようになったか!大体今で...10分の1にようやく達したくらいか?」
「だといいけどねぇ。」
-外、少し離れた山の中。
周りは盗賊の死体の数々。
私の踏み付ける遺体は賞金首の悪党。
あちらこちらに血が飛び、森には今にも襲おうとこちらを見ている魔物の数々。
「しかし、ウチの金は潤沢だってのによ。なんでわざわざ小遣い稼ぎなんか。」
「自分で稼いだ金の方が使いやすい。」
「真面目だなぁ。」
「貴様はサラを見習え、そしてこの前貸した2万返せ。」
「まだ覚えてたんか!?」
「忘れるかアホ!!」
-基本落ち着いてるアジと明るいヒド。
別にすぐ帰るのになんかついて来た。
彼らが話した通り私は現在小遣い稼ぎ...金策中である。人ん家の金を使うのはなんか気が引けるっていうか...使いづらいので。
というかこの世界の通貨単位なんだっけ、ゴールドだったか?紙幣もあるけども。
「...その武器の使い心地はどうだ?」
「ん?」
私の手には血濡れた刃...を持つ日傘。
「お嬢の奴、また変なの作ったな...。」
「そうでもないよ、最近着てなかったこの服とデザイン合うし機能も悪くない。少なくとも2年前に使っていた魔剣よりも強い。」
「久々にその服を着たのはそういう事か...。」
ゴシック・ポイズン...
攻撃力、45
切れ味、95
重さ、20
強度、-(破壊不能)
属性、無属性
パッシブ、[酸毒付与][酸毒耐性]
[麻痺毒付与][出血毒付与]
[死毒付与][毒生成]
[死毒付与]
・即死性の毒を付与する。
耐性が無ければ速やかに死に至る。
[毒生成]
・“毒“を生成出来る。
ただし生成出来る自身の知る知識の
範囲内でのみ。
「改めて見ると本当に人形みたいだな。」
「人形と言うには呪いが篭り過ぎているがな。」
「お前ら...。」
-ゴシックポイズン...。
この魔剣が出来た経緯でも語ろう。
コイツらはただの金策の贄だからおしまい。
事は1週間前。
「のぅサラ、その短剣を見せて貰えぬか!」
「?」
-朝5時に叩き起こすじゃじゃ馬な神様(?)。
「...いいけど、どっちの?」
「毒の方じゃ。」
「蛮蜘蛛ね...。」
-私は寝ぼけてあっさり手渡す。
だって眠いもん。眠かったもん。
眠 か っ た ん だ も ん !!!
-その後ヒャッフーイやワシはてんさーい!とか声を上げて部屋を出ていった。うるさい。
直後よくわからない魔力が私の自室まで薄っすら流れて来た。鬱陶しい。
朝7時頃にヤッターワシテンサーイとか聞こえて来た。いや静かにして本当に。
-そして...朝8時。
「...なんだこれ?」
「自信作じゃ。」
-短剣が...日傘になってた。
なにこれ、生地は外が黒く内側は紫。
灰色のフレームというか骨組み。
持ち手は黒く全体的に細い。
そして陣傘部分が白銀の刃。
デザインのゴシックロリータ...、シアの好みが影響したのだろうか?
「...こういうのってさ?もっとこう...感度だったり、悲惨だのかっこいい展開でさ、覚醒なりなんなりしてなるものじゃないの?」
「さぁ?」
「...。」
こうして私の魔剣ゴシック・ポイズンは誕生。なんて薄っぺらくあっさりした展開なのだろうか、しかしこれが現実というものだろう。
うん、次に期待しよう。
ーーーーーーーーーー
-時は戻って盗賊狩り...の同時刻某所にて...。
「お、今回は俺が一番乗りかー?」
-ある盗賊幹部Aがある部屋に入る。
「遅ぇよバーカ、俺達がいるぜ。」
「あ、いたの?って事は...。」
-ある盗賊幹部BがAを煽る。
「そうよ、一番遅いのは貴方よ。」
「...気が弛んでいるな。」
-幹部C、Dが注意する。
「おいおいそりゃねぇぜー?俺はお前らと違って転移石は持ってねぇんだよ。なのにこんな早くに来やがって...。」
「貴様が弛んでいるのだと言っているだろ。20分早く着いていれば良いだけの事も理解出来ないとはな。」
「あ?やるのか?やりてぇのか?」
「...また叩きのめされたいか?」
「ちょっと、ボスが来たわよ。」
-大柄な男が部屋に入る。
「急に呼び出してすまねぇな。」
「いえ、ボスのご命令とあらば。」
「早速だが...さっきEがやられたと情報が入った。」
「!!」
「どういう事ですかい、Eはボスの側近。そう簡単にやられるとは思えない!!」
「信じられないのも無理はない...だが、隣の部屋にEの遺体を運んでいる。」
「....!?」
-幹部達は部屋に向かう、そこで目にしたのは何らかの毒で変色した皮膚、酸で溶かされた肉、苦しんで死を味わったかのような引き攣った筋肉...。
戦慄し、顔が真っ青になった。
「...おい、何だよこれ。何だって言うんですかいボス!?」
「ちょっとA!」
「いやC、無理はねぇ。俺もこれを見てすぐに理解出来なかった。...だがこれは間違いなくEだ。」
「E...一体これは何だ...毒か!?」
「ここまで複数の毒を...魔物に襲われたのか?」
「傷口から見るにこれは人間だ、それも少数...あるいは単独。」
「なっ!!?」
「ありえな....いえ、ボスが言うのであれば。」
「...でも、そんな人間知らないわ。Eを倒せるなんて並みの騎士で出来るものじゃないわ。」
「その通りだ、そして騎士が単独で現れた報告もない。冒険者だと思ったがこの辺りでそれ程実力がある奴はいない。転移石で逃げたと考えると探すのは難しい、...そこでだ。」
「私の出番でございますね。」
「そうだ、お前の探知能力見つけ出せる筈だ。」
「ならば早速参りますわ。どちらに向かえばよろしいでしょう?」
「Eのテリトリーだ。」
「承知しましたわ、ボス。」
-そう言ってCは転移石を使った。
「んでだ、これからお前らには、」
ゴトンッ
「ん?」
「何だ...ぁ....!?」
「ぁ...ぁああ!?」
-そこに落ちていたのは...Cの生首だった。
一瞬目があったと思えば途端に閉じる、床に血が広がる。
「あ...あああ!!!」
「...!!!」
ボスが気づく。
「転移石が使われたのか...まずい!!」
「みーつけた。」
ーーーーー
「...何だこれは...!?」
-早朝、騎士団に匿名の通報が入る。
場所は盗賊が占拠しているある山の奥。
怪しく思った騎士団は気を引き締め向かうもそこで目にしたのは、
一面血濡れた土地、それも盗賊の居た場所全て、全てのテリトリー、本部も。
各所から入る情報は全て血の話ばかり、
生存者などいない。
-騎士団の隊長は奥へ行き、盗賊のボスがいたであろう本部へ向かうも景色は同じ。
「...魔物の仕業か?」
「いや、人間の仕業だ。あまりにも暴れた形跡がない...いや違う、大人しすぎる。形跡を見るにこれは...単独だ。」
「そんな馬鹿な!?」
「...あ、やっと来たんだ。待ってましたよ。」
「!?」
-騎士団長が咄嗟に武器を構える。
「怖がらなくても良いですよ。私は今朝方匿名で通報いたしました者です。」
「...お前がやったのか?」
「はい、その通りです。」
「...。」
-騎士団長の手が震えている。
「私はただ賞金首を狙っただけです。無差別殺人鬼ではありませんがここまで派手にやらかしたので多少何を言われても構いませんが、ちゃんと報酬は出してくださいな。」
「...。」
-騎士団長は警戒心を一層強めるも...、
「...わかった、この度のご協力に感謝する。」
「団長!?よろしいのですか、このような奴を!」
「彼女が我々に危害を加えたか?」
「...!」
「怖いって理由だけで逮捕はごめんですよ。」
-そう言って私は騎士団に近づく、
その時だった。
「く、来るなぁ!!」
「な、馬鹿!!!」
-怯えた兵士が咄嗟に剣を抜き襲いかかってきたのだ。あまりの未熟さに私は笑いそうになった。
だから、
「...痛いじゃないですか。」
「化け物め!!」
「貴様ぁーっ!!!!」
-攻撃を掠める程度にわざと受けた。
それを見て騎士団長が激怒、未熟兵士は他の兵士に取り押さえられ、顔に深い痣が残る程に殴られた。
「放せ!!事件を、悲劇を、未然に防ぐのも我らの仕事です!!」
「...なんてつまらない、震えてまともに狙えてない。」
「!!」
私をみて他の兵士も構える...、すると騎士団長が頭を下げる。
「この失態は上司である私に責任がある。賠償金の話は、」
「お金は賞金首達ので十分です、私としてはそこの未熟者を処分していただければそれで良いです。」
-兵士達は武器を納めた。
「...寛大な言葉に感謝する。」
「賞金はすぐ近くの町で用意出来ますでしょうか?少し急いでるので。」
「ああ、私から連絡しておこう。...ああそうだ、匿名で通報だったが賞金の受け取りの場合は身分証明が必要になる。匿名で俺達に通報したと言う事は何か理由があるのだろう?このチケットを持っていくと良い、それが証明書代わりになるだろう。」
「ありがとうございます。」
ーーーーーーーーーー
一度時は “現在”...、
「あの時の...!待ってくれ、君はダマキ大盗賊団を殲滅した...!」
「ぅえ?...あれ、あの時の騎士団長さんだ。」
「何...お前が...大盗賊団を?」
-時はメリー達がスイーツ店イベントを解決した直後、騎士に襲われた際。ずらかろうとしたけど...、
「...そうか、間違いじゃなかった。お前のせいで...お前のせいで、ランダーは!!!」
「うわっ!?」
「な、センカ!!!」
-...思い出した。
ゲームの名前でランダーってのがあった。
目の前のセンカという、メインキャラクターの親友として。
ビジュアルも用意されていた、同じ顔だ。
あの時襲ってきた未熟兵士がランダーだった。
「...失せろ。」
「ガッ...!?」
-私は彼の顔面横を蹴り飛ばした。
センカは気絶、周りは唖然とする。
「...やっぱりつまらない。はぁ、観光していただけなのに襲ってくるとは。」
-私は転移石を使い帰った。
「...何と言うことだ。同じ方に二度も騎士団が刃を向けてしまうとは!」
-騎士団長は怒りを見せる。
「お見苦しい光景を見せてしまい申し訳ございませんハイビス殿下。」
「あ、ああ。...どうした、カメリア、スリジャ?」
「...。」
-彼は若くして騎士団のエリート、それを圧倒する実力...それが彼女。
けどそれ以上に...わからない。
彼女はサフラ・アコニリンと名乗った。
...近所にアコニリンっていう名前の家があった。
昔から近所付き合いのある家と同じ家名。
...いや、たまたま一緒なだけだろう。
わからない事は多いけど彼女は“あの子”の大切なシアを奪った、なら私は彼女を敵だと認識する。
次は逃がさない。




