第44話 Very gone crazy girl.
Chapter.0はこれでおしまい。
「さぁ、ここなら誰も来ないわ。そろそろ終わりにしましょう。」
赤黒く曇る空、暗い森、怪しくざわめく木々。
...ここ、どこだ?
「本当ならあの試合会場で貴方に仕返しをって考えてたけど、まだロストの効果が発動したばかりだから出来ないのよねぇ。まぁ、しょうがないしょうがない。」
(おま..えは...。)
「あら?」
(覚えて...いる...んだな、まだ。)
「驚いたわ。まだ念話が使えるなんて。」
(ギリギリね。)
「加えて“まだ”...ね、貴方はロストの事を知っているわね?これって古の時代の遺物ではあるけど教科書に載る様なちっぽけな物じゃないのだけど?」
(教えるかよ。)
「...まぁいいわ、これから殺す相手だし興味もそこしかないわ。」
...ここはどこだ?
どこかの森であるのはわかる、だが近所ではない。景色は...って体動かせないから仰向けだし起き上がれないし。
「グルルル....!!」
「邪魔しないでよ。」
「グゥッ!?」
あれは...三つ目狐?
ゲームの魔物だ、アイツが現れるのは...。
(カース・バレーか...。)
「あら、もう場所がわかっちゃったの?流石は優等生ってところね、ロストもどこかで知ってても案外おかしくないわ。」
勝手に判断してくれて助かるよ。
(ふざけた...場所に運搬...して..くれ.....た...な?)
...あれ、魔力が...。
「流石にそろそろ限界みたいね、痛めつけるのは満足したからこのまま誰にも気づかれず永遠に寝転がってるといいわ。惨めな最期、終わらない苦しみの両方を味わいなさい...これが私の復讐よ。」
心臓は止まってるがロストの呪いで死ねない。
多分魔力が切れたら仮死状態程度で留まり誰にも見つけて貰えないまま永遠に寝っ転がってるのだろう。
または仮死状態中に魔力が回復して意識だけは戻るだろう。でもそれだけだろう、ロストの呪いは他人からの認識すら忘れさせる。
...考えてみれば怖いな。
「何をしている。」
ん?
「あら、来てたの?」
「わざわざこんな小娘の為にロストを使うとはな、勿体無い。」
「欲しい情報は抜かりなく提出したわ。今更文句つけるの?」
「いいや、約束は約束だからな。...独り言だ。」
「あらそ。」
...なんでいるんだ。
「それにしても本当に良かったの?私ならあの場で王様殺せてたわよ?」
「今の王を殺したところで無駄だ。厄介なのは王女だ、王を殺せば余計に警戒されていた。」
「ふーん...興味ないけど。」
なんでお前がいるんだ。
「...なんだ、そこの小娘。我を見て随分心が荒げているが?」
一体これは、私は何を見ているんだ?
今現れたこの男を...私は知っている。
[リリーロク]...シリーズⅡの魔王配下No.2。
「そりゃ貴方の魔力を浴びればこの子程度じゃ。」
「...それもそうか、てっきり我の事を知っているかと思ったが...考え過ぎだな。」
「考え過ぎよ。」
「フンッ。」
「あら、もう帰るの?ロストは一個しかないのだから面白そうなデータはあるんじゃないの?」
「立ち寄っただけだ、お前の復讐とやらに興味はない。」
リリーは姿を消した。
「まー...いっか。見ての通りアイツは魔族...って貴方には関係無かったわね。」
テルンはアイテムボックスから何か薬品が入った試験管を取り出す。
バシャッ
...水?
「やっぱり感じない?実はそれ濃縮したカプサイシンなの。」
は?
カプサイシン...唐辛子の辛味成分。
辛味はそもそも痛み、痛覚反応。
「不随になった体が神経機能を止め始めてるの、必要ないから。」
(それがどうした?)
「でもね...。」
テルンは魔法陣を展開....ッグ!!?
(あ゛ぁあ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛ぁぁ゛!?)
「あっははははは!!!ごめんね、最後に使っておこうって思ったの。禁術[幻痛]...外傷を与えず神経そのものに痛みを与える...例え麻痺でも不随でも、相手が生きていれば使えるの。」
(...き...さま....!!!)
「あら?神経が刺激されて一部の肉体機能が動いてるのかしら?凄く怖い目だわ!頑張ってね、その禁術は意識のある時にのみ発動するわ。いつ効果が切れるかも知らない。」
(そんなこと...は...どうで...あ...。)
「今の叫びで魔力もほぼ使いきったわね...。ふぅ、まぁやりたい事はやったからもういいわ。」
(ぁ...ぁ...。)
キラッ
「...あら?」
(あれは...。)
「...そういえばあの蜘蛛が投げてきたわね...なんて綺麗!」
(....!!!)
「へぇ...見たところあの魔剣のダウンサイジング版っていうか、同じ構造の短剣かしら!なんてツイてるのかしらー!」
(...やめろ..。)
「どうやら貴方に投げ渡したかった見たいだけど、もう貴方は使えないのよね。だから...私がいただいてもいいわよね?答えなくても貰うけど!」
(やめろ...!!!)
「はぁ...なんて綺麗な刀身!...決めたわ、次何するかなんて考えて無かったけど、この短剣をみればカメリア・レッドペタルやスリジャ・オーカ達はどんな反応するのか気になるわ。」
(それに....。)
「きっと怒るわよね、すごく怖い形相で!それでこの短剣で斬った時は...あああなんて面白そうなの!」
(私の物に....!!)
「善は急げ、うん!早速準備をしなくちゃ...!」
(触るなぁっっ!!!!!)
ーーーーーーーーーー
暗殺部隊隊長と付き人と話したあの時...、
「凄い...そんな方法が...いや、理論的にこれなら...。」
「貴重故に保有はしても扱う事は滅多にないレアドロップに...ゴーレム回路をとは。」
「ゴーレム回路は“魔力を通しやすいミスリル鉱石を使う”か“物質に魔力を帯させないと”通す事が出来ないです。なので魔力を持っていなければ極めて貴重なミスリルを使用していない一般的な武具では回路を通せません。ゴーレム自体はエネルギーコアで魔力を帯びていますので動きますが...そのコアの縮小化は未だ進んでいません。」
詰まる所、魔力を通しやすい環境または状態じゃなければ回路は通せない。
「襲撃ボスのレアドロップは魔力を帯びています。鎧だと魔力を纏うと部位に合わせた箇所が強化されたりっていうのは知っているでしょうか?」
「ああ、パッシブにもよるが聞いたことがある。」
「例えば...そうですね、王女殿下の持つアルビオンヴァイパーのドレスはしなやかさ。誕生パーティの護衛中に見た事ありますが、姫殿下がダンスをされる際、魔力を纏われた途端ドレスが体をサポートする様な魔力の流れしたのを感じました。」
「ふむ...ならこのゴーレム回路は。」
「魔力の流れの主軸となる部分に回路を通す事で基本的な動きを強化する...と言った感じです。」
「なるほど...。しかしゴーレムと違いコアを使ってないから魔力切れを早く起こしてしまうのでは。」
「そうです。なので、これを機能させるのは一定時間のみ、常に発動させるわけじゃありません。」
1.相手を追い詰めた際に発動。
2.魔力の流れを調節し行動する瞬間的に機能。
3.緊急離脱時の補助。
ただしこれら発動後の魔力回復のためにポーションが必要となる。
「...と言った感じです。」
「2.は相当な技量を必要とするが...1と3であれば可能だな。」
「所持しているポーションの回復量を把握しておけばなんとか意外となんとかなるぞ...凄い、凄いです。待てよ...これをあーすればこうしてこうなって...。」
「あの...シンゴさん?」
「すまない、こいつは技術開発部門も勤めてる上にこんな性格でな.....。」
「ああ...。」
なんで今これを思い出したのか。
走馬灯にしてはむさ苦しいぞ。
体に魔力が残ってる内に...。
魔力?
ーーーーーーーーーー
「...ぷはっ、この体悪くはないのだけど魔力回復のポーションを定期接種しないといけないのは面倒よね...。改良しなくちゃ。」
ズバッ
ドサッ
「...へ?」
何かが落ちた。
足元に転がるのは...テルンの左腕。
「....!!??」
痛覚は遮断している、
生身ではないので後で“直”せる。
問題はそこじゃない。
斬られた。
誰かに斬られた。
「なん...で...どうして...!?」
目の前にそれは立っていた。
「なんで...立ってるの...動いてるの...なんで...なんで!!??」
その動きはどこか操り人形の様にぎこちなく、脱力感が見える。
あまりにも不気味。
その体には“赤い魔力の流れ”が浮き出ている。
「それ...ゴーレム回路...あんた...自分の身体を!?」
「...そう...だ..け..ど..。」
「一体どうやって...人体には魔力回路は通せないはず...第一そんな膨大な魔力をどこから...赤い色の魔力...まさか!?」
テルンはアイテムボックスからロストを取り出す。
なんとロストに帯びる光がサフラの方向へ流れているのだ。
同時に気づく、さっきかけた幻痛で神経そのものが刺激を受けた事で魔力を通せる状況...幻痛の魔力で神経が回路を通せる状態になったのだ。
そしてロストはサフラに呪いという魔力を与えている。
サフラは本能的に気付き魔力を取り込み、体に流し込んだ。
ギチギチと小さく音が聞こえる。
肉体に回路が広がっている音。
その手には翡翠色に光る刃...疾風の短剣。
パッシブは[加速1]、[トップスピード]。
加速1は自身の素早さを1.5倍に上昇。
トップスピードは毎ターン最初に行動する事が出来る。
「...あ...ん...てす...てす...マイクテスト...良し。」
「あ...ああ...。」
私はテルンが奪った蛮蜘蛛の短剣を拾い上げた。
ああ良かった、特に汚れてない。
肉体に通し始めている回路も順調。
ロストの呪いは解除しない限り永久に発動する。
つまり“無限の魔力”。
誰からも忘れ去られる...そんな世界そのものを巻き込めるレベルのアイテムだ、凄まじく膨大な魔力が私に与えられている。
膨大すぎて浮き上がる回路から魔力が漏れ出てるけどね。
でもロストが与える不死の力ってのは自然治癒的なものが含まれているのか、私の体は崩壊していない。
私は背中に魔力排出を意識する。
そしたら魔力はロボットアニメのビームウィングの様に放出され始めた。
うん、案外すぐわかってきたぞ。
「...ロスト、私はここだぞ。」
「!?...ロストが!」
ロストは私の元へ飛んできた。
そして...溶け込む様に私の胸部へ取り込まれる。
胸部の表面にロストが嵌め込まれた様に浮き出ている。
本格的に人間じゃなくなった。
ロストが私と接続した事で魔力の流れが加速した。
気づけば幻痛もない、私とロストの魔力がテルンを上回ったか。
「さて...反撃させてもらうよ。」
「...悪魔...悪魔が!!!」
その目は赤黒く、左目からは厨二病の如く閃光の様に魔力が溢れている。
「あの時の...お掃除の後始末くらい..つけなくちゃね。」
足音消去魔法[サイレントウォーカー]
半透明化魔法[トランスルーセント]
ヘイト増加魔法[マイヘイト]
知覚妨害魔法[フィエルジャミング]
風圧軽減魔法[ウインドスルー]
身体強化魔法[フィジカルアップ]
魔力強化魔法[マジックアップ]
精度強化魔法[ロックオン]
加速魔法[アクセル]
支援魔法強化魔法[ツインアクティベーション]
私最強の攻撃にして自慢の武法。
「さようなら、クソ野郎。」
「嫌..嫌...!!」
テルンは魔道具で私を狙う。
でも...もう遅い。
私は既に、テルンの目の前にいるから。
既に斬ったから。
武法[静寂の斬撃]。
蛮蜘蛛の短剣と疾風の短剣の二刀流。
テルンの体はコアを中心にX字に断ち切られた。
「...な..ぜ....。」
「もう喋るな。」
その刹那、
私はテルンの顔を蛮蜘蛛の短剣で突き潰した。
ーーーーーーーーーー
ああ、やっと終わった。
しかしまだ体の動きがぎこちないな、それにロストの溢れる魔力をどうしたものか。
制御出来たりして、アニメやラノベの様になんかこう...意識...。
...無理だな。
なんか勿体無いし...アイテムボックスに入れれるか?
これで意識を....って出来ちゃった。
これで余剰エネルギーはアイテムボックスに流れる仕組みになった。使い道知らないけど破壊光線にはなるかな?
「お主、随分面白い奴じゃの。」
「え?」
後ろにいた。
全く気づかなかった。
誰だこの少女、私と同じくらいの背だけど。
ローブで容姿がよくわからない。
「えーと...どちら様?」
「そうじゃな...案外お主と縁があるの。」
「はい?」
「それはそうと。」
その子は私の体に触れる。
「ふむ、まさかただの人間がこんな離れ技をするとは...。」
「え...え...?」
「お主、ワシの所に来んか?」
「はぁ?」
「だって今のお主は行く当ても帰る場所もないじゃろ。ややこしくなって。」
いやまぁ...考えてみればそうだな。
転移石とか持ってないから歩きや馬車とかそういうので帰った頃にはどうなっているかわかったもんじゃない。最悪、学園の不法侵入者だ。
...それにこの子...魔力の底を感じない。
膨大なんて生易しい言葉じゃないくらい。
多分シリーズⅢのラスボスですら格下だ。
「...わかりました、お願いします。」
「良い子じゃ。では!」
速攻で転移した。
凄い、わずかな違和感も衝撃もない完璧過ぎる転移。
ってか、ここどこ?(2回目)
どこかの城...?
「おーお嬢、客人か?...なんか変な気配だな。」
「お嬢、帰ったか。...む?この気配はロストか。随分“可愛いおもちゃ”を持っているんだな。」
...まじで?
現れたのは2頭の竜。
コイツらを私は知っている。
破神竜ヒドラ、滅神竜アジ・ダハーカ。
そして彼らがお嬢と呼んだこの子は...嘘だろ!?
少女はローブをバッと脱ぎ捨てる。
思い出した。
その姿はゲームで何度も見た。
ゲームのラスボスより強い破神竜滅神竜に並ぶ3大隠しボスが一角にして筆頭。
かつて世界を混沌にした災厄の女神...!
「我が名はクチナシ!この世界創生たる神なり!!ようこそ我が家へ!!!」
私...とんでもないルートに入っちゃった。
次回からようやくゲーム本編開始。おっそ。




