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ゲーム世界に転生したので物語介入を始めます!  作者: 亜土しゅうや
Chapter.0
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第43話 またね⑥

 伝説級レジェンダリーアイテム:ロスト

 ・古の時代、ある悪魔が作り上げた呪いの宝珠。

  この宝珠の呪いは忘却。

  呪いにかかった人間は時と共に忘れ去られ、いつしか認識すらされなくなる。家族であっても友人であっても、大切な人であっても。永久に。


  乗り越えたくば呪いを超える愛を見せよ。

  命を救えるのは命、愛を救えるのは愛だ。

  


 「...意識はあるんでしょう?貴方の事だから魔法か何かでギリギリ生きてるってところかしら?」


 ああ、あるさ。

 ギリギリ。


 残った魔力と気力根性で下手くそな念力使って血液動かしてんの。


 畜生、さっき刺さってたの[アジ・ダハーカ]の鱗じゃん。あいつの直接攻撃は防御を無視するんだよな...。


 「...いいわ、これだけ邪魔されたらもう面白みもないわ。」


 シアが爪刃をテルンの首に当てる。


 『帰すと思うのか?』

 「質問で返すけど、来たのが私だけだと思うの?」

 『っ!?』

 「きゃああーーーー!?」

 

 カメリアとスリジャの目を通して見えたのは会場に現れた狼の魔物。だが、脚部や頭部が金属で出来ている。

 熊の次は狼ってか。


 ガシッ


 あら?


 「なっ!?」

 『主様!!!』

 「それじゃあ帰るわ、この小娘も連れてね!」

 『貴様あああ!!!』


 シア達は全力で阻止しようと追う。

 だが。


 「う、うわああ!!」

 「パパ!!!」

 「ダメだリップさん!!」

 『!?』


 王様や貴族がいる特等席の出入り口にも狼ゴーレムが現れた。


 やられた、狼は元が群れで生きてるから連携が取れてるしゴーレムへ改造されたことで色々強化されてる。何より数が多い、会場の外含めて何十匹いるんだこれ?


 「ガルルル!!!」

 「ガォーーーー!!!」

 『くそっ、くそ!!!』


 私が遠ざかっている。

 皆んなから遠ざかっている。

 

 せめて何か言いたいけどなぁ、声どころか念話すら使える余裕もない。


 ここまでか...。

 

 「サラ、サラあああーーーーーー!!!!」

 『主様っっ!!!』

 「じゃあね。」


 テルンは転移の魔法石を使い、私を連れ去った。



ーーーーー


 それから少し時間が経ち、テルンのゴーレム狼は掃討された。


 だが、誰も喜ぶ者などいなかった。


 王様や貴族は無事でこそあったが、避難した生徒の中には怪我人も出ていた。


 ゴーレム狼の強さに教師陣や十聖達、王を守っていた騎士団ですら手こずる光景から、彼らの信頼無さよりも未知なる敵の恐ろしさに怯える者達。


 十聖は己の不甲斐なさを痛感する。

 でもそれ以上に、悔しく、悲しく、怒りを抱く。


 「なぜだ...なぜ...思い出せない!!!」

 「サラ...サラ...ちゃん...!!」

 

 目の前で“誰か”が拐われた。

 でも何故か思い出せない。

 サラに関する記憶が消え始めていた。


 名前は微かに覚えている者、

 容姿を覚えている者、

 既に何もかも記憶から霞み始めている者。


 「だめ...副会長...!」

 「嫌よ...嫌よ!![フラッシュバック]!...ォエ゛ッ!!?」


 キリスは無理矢理でも思い出そうと何度も禁術フラッシュバックを使う。だがどう見ても耐えられていない。


 そのメモには覚えている事、思い出した事がぐちゃぐちゃに書かれている。所々涙で滲んでもいる。


 「怪我人の状況は!」

 「警戒を解くな!!」


 他の皆は安全確保や状況確認で手一杯。

 当然だ、“彼女”だけを考えていても全てが解決出来るわけじゃない。


 (状況はどうなっているんですか...サフラさんは!?)

 (落ち着けルヴァ、まだ調査は始まったばかりだ!)

 

 クフェアは部隊に連絡し動いているが焦りがおさまらない。


 『...。』


 そしてステージ上には、皆に背を向け膝から崩れ落ちているシア。何も喋らずただ静かに涙を流している。


 時々何か小さい声で言っていたが、何を言っていたのかは誰もわからない。


 その姿は悲壮そのものだったという。


 私は、

 友達を...親友一人、守る事が、

 出来なかった。


 ああ、私って弱いんだ。



 [ 消失新星ロストスター事件 ]

 国王の前で堂々と起きた最悪の事件として、後にそう呼ばれる様になった。


ーーーーーーーーーー


 9月5日、夏休みが明けた。


 あの事件以降、サラは見つかっていない。

 名前は覚えている、黒い髪も赤い目も覚えている。

 でも声が思い出せなくなってきた。

 耳にたこが出来る程聞いた声なのに。


 あの事件後、学園から事を知ったサラの家族は泣いていた。


 もう一人娘がいた。

 部屋もある、服もある、この手で抱いた事もある。

 なのに思い出せない。

 愛する我が子が思い出せない。

  

 魔法も魔道具のカメラは持っておらず、容姿の写る物がなく。昔着ていた服を見ても思い出せる事は減ってゆくばかり。


 私は魔法で撮ったサラとリズとのスリーショットを見せてあげた。


 でも、ダメだった。


 ただ苦しかった。


 

 リズとは夏休みの間のほとんどをレベリングで埋めた。まだまだ弱い、あの子を守れなかった。


 事件後私とリズは今までより一緒にいる時間が多くなった。今のままじゃ元が弱すぎる。

 もっとより多くの知識を、より強い力を。

 ただその二つの言葉が私達を染めていた。



 シアは落ち込んだまま。

 少しは立ち直る様子を見せるも無理しているのが見てわかる。


 リズと相談した結果今は私が剣の所有者となっている。


 でも、どれだけ努力しようとサラより上手く扱う事は永遠に無理だと思う。


 

 演劇部は以前の様な活気は無い。

 事件後、休部を考えたそうだが観客はサラだけを見ている訳では無いという結論になり公演は続いている。


 あのお話...[ニンゲンの心]はあれ以降一度も公演していない、する気もないそうだ。


 

 学園長は何度かサラと関わる機会があったためか今もなんとか覚えている事が多く、その情報を元にずっと騎士団に捜索を依頼している。


 1ヶ月以上経った今も、捜索に進展は無い。



 十聖である先輩方も学業の合間に捜索に協力している。サラに助けられた恩を返すために、大切な後輩を助けるために。


 でも、こちらも進展は何一つ無い。

 


 どう考えようとも、いずれこの記憶も消えてゆくだろう。足掻くことすら叶わない日が来るのだろう。

 残したメモすら意味のわからない落書きとしか認識出来ない時が来るのだろう。

 その時は再会しても何も思わないのだろう。

 そう考えると胸が痛い。


 夏休みに入る前に考えてた3人の旅行計画も、

 今度買いに行こうと約束した服も、

 ...昔遊んだだろう記憶も、ほとんど消えたから。

 

 「...。」

 「...メリー、私達はサラを救えるよね。」

 「救えるよ...救ってみせる。」

 「私...怖い。私達は知らなすぎた、弱すぎた。」

 「そう、私達はすごく弱い。...サラから聞いたメモ、まだ覚えてるよね?」

 「うん。」


 〈レベル45までは基礎を鍛えた方が良い。それ以降は独自に鍛えれば自分なりの強さは最低限揃う。〉


 「...クレイジーフェアリーじゃレベルが上がりづらくなってきたわね。他の地域で似たような高経験値の魔物や狩場はまとめておいたわ。」

 「早いね、リズは。」

 「私を誰だと思ってるの?座学で負けたことは一度も無いわ。」

 「そうだね。」

 「だから...卒業までには“3人”で勝負をしましょ?負けないから。」

 「うん、約束だよ。」


 待っててね、サラ。


 必ず、また会えるって信じてるから。


 絶対に思い出すから。


 だって私は、貴方の一番の親友だから。

Chapter.0のカメリア達の活躍はここでおしまい。


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