第42話 またね⑤
ある時の夜....、
「う〜ん....、」
『どうしたの主よ。』
「シアの人間体って実体化なんだよね。」
『そうだが。』
「なってみて。」
『?』
170cmの美女形態。
『これでいいかの。...もしかしておr..私を抱いて寝たいのか?』(口調が馴染まない)
「暑いからヤダ、そう言う話じゃない。」
『だったらなんだ。』
サフラは剣に指を指す。
「この魔剣ってシアの体が変質した物でしょ。」
『うむ。』
蛮蜘蛛の剣は魔物だった頃のシアの遺体...いや死骸?が変質し生まれたもの。ゲームでは無かった演出だが、生々しい。
「そして今にシアは英霊っていう新たな肉体的なのを得ている。」
『うむ。』
「そこで思ったのだけど、英霊って憑依能力があるって多分言ったっけ?」
『いつかは覚えてないが言ってた。適合性によってはさらに強くなるであってる?』
「そう。シアの英霊必殺は武器強化だけど、この剣も“シア”ならさ...。」
『!...そう言う事。』
シアは蛮蜘蛛の剣に溶ける様に纏い憑依。
しかしその後から何も反応が無かったので本を読み5分ほど経った頃。
カタッ
「お?」
蛮蜘蛛の剣から糸が出て、繭の様に剣を包む。
その中から現れたのは、赤と黒のゴシックロリータ服で背中に4本の鋭い蜘蛛脚を生やした美女。爪は蛮蜘蛛の剣と同様の白銀の刃で出来ている。
その目はアメジストの様な煌びやかな紫色。
『...驚いた、新しい姿だと言うのに何から何までが馴染むぞ。』
「わーお大成功。ちなみにその服は?」
『ん?ふーむ...なんだろうね?』
「もしかしてこの前貸した本からじゃない?」
『おーそれだ!』
アイテムボックスから本を取り出しページを見せる。
実はシアもアイテムボックスが使える。
実質カバン二個持ちチート。
ちなみに貸したのは序盤で入手出来たり、見た目だけ適用されるオシャレな装備のカタログ。学園が休みの日にカメリアとスリジャに内緒でそれが拾えるエリアに行ってたのだ。
破廉恥な本じゃあるまい、誰だ森に捨てたの。
(ゲームあるある)
「シアが大幅強化にはなるけどこれだと私が魔剣使えないな。」
まぁ私はナイフ術も使えるから多少はなんとかなるかな。
でもナイフの魔剣は無いんだよなぁ。せめて速度上昇のパッシブが付くレアドロップ品の疾風ノ短刀が欲しいよね...。
『そうだな...。』
ブチッ
「ええっ!?」
なんとシアは背中の脚一本引き抜いた。
そしてもう脚が生えた。
引き抜いた脚は変質し...なんと蛮蜘蛛の剣によく似た短剣になった。
蛮蜘蛛の短剣...
攻撃力、20
切れ味、90
重さ、15
強度、80
属性、無属性
パッシブ、[酸毒付与][酸毒耐性]
[麻痺毒付与][出血毒付与]
「火力は下がってるけど...凄いな。」
『私がこの姿の時のみに使える武器だ、これでいいか?』
「良すぎるさ。でもこの力はまだ隠しておこう。」
『そうだなぁ、主の身に何かが起きた時...緊急事態に使うとしよう。』
「決まりだ、その時は頼むよ。明日は1学期最後だし。」
ーーーーーーーーーー
『...許さない、許さないぞ、貴様あああああああああああ!!!!』
「っ!?」
その見た目に反し凄まじい速さ。
ブチギレたシアは一瞬にしてテルンの魔道具を破壊したのだ。
「嘘っ!?」
『でやああ!!』
「がぁっ!?」
シアは蜘蛛糸を使った変則的かつ高い速さを活かした高機動接近戦で戦う。
「痛いわね何を!!!」
『遅い。』
「えっ、ぐぅっ!!?」
加えて眼。
人間体になるとどうやら8つ分の目の視力がが2つに凝縮されるらしい。その結果かなりの動体視力を持っており、ハエ程度じゃ箸で当たり前の様に捕まえられる程。
(衛生的に悪いから真似しないでね)
「良い気にならない事よ、魔道具はまだ!!」
「きゃあっ!?」
「うわあ、なんだぁ!!」
客席の方からも現れる魔道具、
「視界魔法[フラッシュ]!!!」
『!!』
劇場が激しい光で溢れる。
「目が痛いでしょう!!」
『甘い。』
「がはっ!?」
しかし、シアには効かない。
元ボス蜘蛛なのだ、魔物特有の気配察知能力は人なんかと比べ物になるはずがない。
同時に、テルンのゴーレムボディはそう言った能力は無いことに気づく。
「なら、ブラッドサンダー!!!」
『これはどうだ。』
ドガァアアッ
「え...。」
テルンの雷魔法はシアどころか誰にも当たらなかった。雷は壁や屋根にに向かい外へ放出された。
シアは可能な限り頑丈な蜘蛛糸を生成しそこへブラッドサンダーを誘導したのだ。
「嘘...嘘!!!」
『瞬影。』
「!」
『武法[カトルクロー・スラッシュ]!!』
「ぎゃああああっ!!?」
テルンのゴーレム回路の色が乱れ薄くなる。
「な、体が!?」
『そろそろ終わりだ。』
「っ!!」
圧倒的だ。
サフラの隠し玉、とっておき。
逆鱗に触れた結果。
「間に合った!」
『お。』
十聖モネが杖を掲げる。
シアが戦っている間、魔法発動の準備をしていたのだ。
「しまっ...!」
「回復魔法[ウルトラ・ヒール]!!」
サフラの体が眩くも優しい光に包まれる。
この魔法は発動までに時間がかかるが、対象の体力を完全回復させる事が出来るのだ。技術を上げれば時間短縮が可能。
「な...何やってんのよおおおおおお!!!!」
傷が癒え、刺さった刃が抜けてゆく。
ダチュラが空間魔法でサフラを観客席まで浮かし移動させる。
『ふぅ、主は無事な様だ。これでお前の負けだな。』
「あ...ああ.....。」
『ある教訓からお前もこの場で即刻殺してやりたいが、色々気になる事が多すぎる。....全部吐いてから死んでもらうぞ?』
「あ...く...ぅ...ははは。」
『ん?』
「はは...あっはは...!」
「シア!!!サラ...サラが!!!」
『!?』
サフラは傷は癒えた。
でも、心臓は...動いていなかった。
『主...ご主人様!!!』
いや、それだけではない。
「...?」
「な...なにこれ?」
「?、どうしたのですか先輩!」
「“この子”は....?」
「え...?」
「サフラさ...“サフラ?”」
「な...何言ってるんですか....!?」
明らかに皆のサフラに対する反応に異変が起きている。
ーーーーーーーーーー
少し前...、
「あ...き...貴様...!!」
私は後ろから魔法の刃で刺された。
「...どっかで見たな。」
「!!...もう忘れたの?」
「そんな厄介彼氏彼女みたいな...ああ、魔剣の時の。」
「...刺されているのに随分余裕ね。」
そうでもない、今にも意識が飛びそうだから記憶が安定しないんだよ。
「貴方が私を忘れたっていうなら...ちょうどいいわ。」
テルンは何かを取り出す。
“それ”を私は知っていた。
今にも飛びそうな意識が一気に戻る程。
「この魔石、面白いの。」
血の色の様な赤黒い宝石...魔石。
私はこれを知っている。
ってか、なんでお前が持っているんだよ...!?
この魔石の名は[ロスト]。
ディスティニーブレイブⅢストーリー後半にてパートナーがいる時のみに発生するイベントの中で、これがある。
その効果は...存在の忘却。
敵の魔の手によりロストを使われたパートナーは時が経つにつれ周りから忘れられていく。
さらに経てば一度会った人間にすら数秒後には忘れられ、認識されなくなる。誰からも、親しい人からも、家族からも。
そして最後には...永遠に誰にも認識されない
生き地獄が待ち受ける。呪いにより死ぬことも許されず解除も出来ないし、本人はどう足掻こうが誰にも気づかれないし、“接触”も出来ない。
もはや歴史においてその人は最初からいなかったと同然。死なんかよりもずっと恐ろしい。
本作に於けるバッドエンドルートの一つ。
途中でそのキャラが使えなくなる点からクソゲーと呼ばれる由縁となっている。
解除の方法...それは誰かが、親しい誰かの深い愛が魔石の力を上回れば魔石は機能を停止し、何もかもが元に戻るのだ。
それだけ。
ロストはその間もバッドエンド後もずっと稼働し続ける。伝説級アイテム扱いだから破壊は絶対に出来ない。
そして私には彼氏なんていない。
ロストを打ち砕く程の愛は並大抵以上程度じゃどうにも出来ない。
何より忘却が始まってからは今の私には...。
「ロストよ、サフラ・アコニリンに悲劇を!」
「っ!!」
「ああ、もう一つ。」
「....!?」
なんだ、体が動かない...!?
「さっきの刃、新種の毒なの。」
「...!?」
「毒の効果はすぐに切れるけど、効果は神経を荒らして身体機能を停止させる様改変するの。貴方の体はほとんどが不随、なのにロストで死ぬ事も出来ない、誰にも気づいて貰えず治せないそもそもこの毒は改変、治療は絶対に不可能よ、弄った所でポーション使えば不随の体に元通り...くくく...あっはははは!!私に毒を味わせた罰よ!!...永遠に苦しみなさい!!!!」
ああ...畜生。
何か...ないのか。




