第41話 またね④
物語...終盤。
「...これで、終わりは見えるのだろうか。」
「すぐには終わらないだろう。でも、終わりは必ず来る。」
「...。」
「ほぼ1ヶ月、邪神の遊戯を打ち砕くために奔走した努力は無駄じゃないさ。小さい時から母上に言われていたよ...努力は必ず報われる、諦めないのが大切だってね。」
「...お父様にも言われていたわ。こんな形になっちゃったけど。でも、平和がいつか来るって言うなら...。」
魔王は手を差し出す。
「たとえ、塵一つの可能性であっても我は...私は信じたい、貴方を...未来を。」
勇者はその手を握った。
「ありがとう...。」
二人は邪神クチナシと相対し、ほぼ1ヶ月間国の人々を説得し続けた。
裏切り者と叫ぶ者、
蔑む者、
手を取る人、
声を挙げる人、
迷う者、
関わらぬと決める者、
形はどうであれ世界は動いた。
確実に大きく動いた。
混沌が始まる。
だがそうなって当然。
そして乗り越えるべきであると。
わかりあう時だと。
今こそ変わる時だと。
「これが答えだ、邪神クチナシよ!!!」
「私と勇者がお前を討つ!!!」
「「未来のために、我らは戦う!!!」」
ステージに響き渡る声に、
返答は何も来なかった。
「....どうなっている?」
「サフラちゃ...、」
ズドガァッッッ!!!!!
「「!!?」」
ステージ中央の壁に何かが飛んできて激突した。
壁が砕けヒビが入っている。
土煙が晴れゆく、
「えっ....!?」
「嘘...!?」
四肢に、胸に、いくつもの刃が突き刺さり、
全身は血に塗れ、
光を失い、生気のない、赤黒い目。
サフラ・アコニリンだ。
「サラァァァーーーーーーーーーッッッ!!!」
「...ッ!?」
カメリアが叫ぶ。
スリジャは声が出ない。
「ッ戦闘体制に入れ、襲撃だ!!!!」
「何をしてる、早く手当てしろ!!!」
「早く王の避難を!!!」
劇場はパニックに染まる。
その時だ。
「皆さん、お静かに。」
「....!」
そいつはステージ中央にいた。
いつの間にか。
「ご覧ください...満月の夜、数多の者を傷つけ見下し続けた邪神は虫の息、素晴らしいと思いませんか?滴る血の一滴を見るだけで憎む者は歓喜に染まって仕方がないのです。」
魔女のような風貌、
周囲に飛び回る魔道具、
「な、何故お前が!?」
「お久しぶりです、学園長。」
知っている声。
シュッ
「!」
淡い桃色のオーラを纏ったカメリアがソイツを斬る。
「危ないわね、以前の私なら真っ二つだわ。」
「余所見。」
「!」
スリジャは拘束魔法で捕えようとする。
だが、魔法陣から出た鎖をソイツはあっさり消した。
「...どこかで観た魔道具、サラへの強い殺意の籠った攻撃。ええ貴方ならサラに恨みは持っていますよね、ただの逆恨み...自業自得なのに。」
「...!!」
飛び回る魔道具がカメリアをあらゆる方向から炎の魔法で焼き尽くそうと砲撃、カメリアは剣を振りかき消す。
スリジャは十聖達とバリアを張り皆を守る。
「逆恨み...自業自得....ふざけた事を言うんじゃないわクソガキがあああ!!!!」
「すぐに冷静さを捨てる...“以前の試合”から何も変わっていませんね...テルン先生。」
ーーーーー
テルン...元学園教師。
サフラ・アコニリンが持つ魔剣[蛮蜘蛛の剣]を教師という立場を利用し奪おうとした。最終的に魔剣を賭けた試合で負けた後、他に問題を起こしていた事がわかり学園を追放された。
「悪いのはサフラ・アコニリンよ!!!魔剣をさっさと渡していれば!!!こう!!!ならなかったものを!!!!」
「ッ!?」
いかにカメリアといえど相手は元学園教師でありレベルも上。魔道具の集中砲火で一度後退する。
「メリー!!!」
スリジャがカメリアを回復する。
「....ふぅ、取り乱しちゃったわね。でも案外呆気なかったわね、サフラ・アコニリン。」
「...っ!!!」
「ダメよメリー!まだ回復が終わってないわ!」
カメリアもスリジャもブチギレ。
だが冷静さを捨てては負ける、二人はなんとか止まる。
「テルン、目的はなんだ!!」
「目的?決まってるじゃない、そこで磔になってる小娘に仕返しに来ただけだわ?いつ仕返してやろうか考えてたけどこの劇場の主演の主演の一人で出ると知って思いついたの。だって最高のステージで死ねばさぞ無念でしょうし、何より見ていて絵になるわ。見てみなさい、まるで私が邪神を討ち取った英雄みたいじゃない!」
「...たったそれだけのために??」
「そうよ?だからなんなのよ、別に私はそこの王様の命なんて興味ないし劇も代役使えば続けられるじゃない。」
「...!!」
「だから皆さんもそんな身構えなくっていいわよ?もう少し痛めつけたら帰るわ。」
「....転移。」
「させないわ。」
会場に謎のフィールドが広がる。
十聖ダチュラ・ワイスはサフラをこちらへ転移させるつもりが発動しなかった。
「転移阻害魔法、邪魔しないでもらえるかしら。」
「貴様ぁ!!!」
ワブキとクフェアがテルンに攻めかかる。
ワブキは大剣を構え正面から、クフェアは背後に回り込む。
「何かしたかしら?」
「バカな...!?」
「...なんだこの斬りごたえ?」
「クフェアくん、ワブキ先輩離れてください!!」
ワイス姉弟が出る。
「今助けるわサフラさん...空間魔法[重力増加]!!」
「待ってろサフラさん!拘束魔法[アイスバインド]!!!」
「!!」
テルンの動きが止まる、
「会長!副会長!」
「ディープ・スリープ!」
「パラライズ・ダウン!」
二人はテルンを捕縛するために睡眠と麻痺の魔法を浴びせる。
だが。
「...効かないわ。」
「な...!?」
平然としている。
それどころかワイス姉弟がかけた拘束を砕く。
「だったら、クフェア!!」
「はい!!」
ワブキとクフェアは接近戦に持ち込む。
「ヘビィスラッシュ!!」
「っ!」
ワブキの斬撃は腹部を狙う。
テルンは身軽そうに避ける。
「随分わかりやすい攻撃ね。」
「隙あり、魔融合武法[突風斬]!!」
キィンッ
「金属音...?」
「へぇ、大振りの技でわざと回避させ、本命は貴方。...つまらないわ。」
「あっ..ぐあぁっ!?」
一才効かない。
十聖は困惑する、いくらなんでもおかしいと。
するとクフェアが、
「先輩!こいつ、人の体じゃない!!!」
「な、どういう事ですか!?」
「あら、もう気付いたのね。」
テルンはなんと身に纏う服を脱いだ。
「金属...!?」
その肉体...いや、それは肉ではない。
鈍い光沢の金属の体、人形の様な球体関節、青く光る線...回路。
「あれって...ゴーレム回路?」
「アンタまさか!?」
「そうよ。前の体じゃ部が悪かったからこうしたのよ。結構悪くないわ、」
「!?」
「レベル以上の強さが!!」
「がふっ!?」
「手に入ったから!!!」
「がぁっ!?」
「ワイス先輩!!!」
その速さは十聖を超えていた。
テルンは衣服を纏い言う、
「もう一度言うわ、私の邪魔をしないでもらえるかしら!」
テルンが手を挙げると魔道具が彼女の周囲を周り始め、大きな魔法陣が展開する。
「終わりよ...雷魔法[ブラッドサンダー]!!!」
『そうはさせるか!!!』
「!?」
テルンの魔法発動直前、何者かが阻止。
長く黒い髪と背中に4本の鋭い蜘蛛脚。
その爪は白銀の刃の如く。
「人...いや、誰だあの化け物は!」
「シア!!」
「えええ!?」
初めて見た姿だったが、二人には彼女がシアである事に気づいた。
『またご主人の...サラの前に現れたな!!』
「あら?貴方は...その爪...そういえば襲撃時に極めて稀に得られる装備って魔物が変質した物だったわね。爪を見る限り....もしかして魔剣の蜘蛛かしら?」
『ほぅ、随分察しが良いじゃないか。流石は元教師だけあるか。』
「なんで蜘蛛が生きてるのかは知らないけど良い所に来てくれたわ、危うく忘れそうだった。こんな小娘なんか捨てて私の下へ来なさい?もっと有効利用出来る自信があるわ。」
『はぁ...。』
シアは背中の巨大な脚を伸ばしテルンを斬りかかる。
「...何するのよ。」
『いい加減腐った口を閉じんかクズ。俺はサラの英霊にして従者にして家族。...絶対に許さない、許さないぞ、貴様ああああああああ!!!!!』




