第40話 またね③
「なぜだ魔王よ!貴方は戦いを好む人間では無いはずだ!!」
「黙れ、黙れ!!!今更遅い、人族!!!」
どっひゃーすごーい。
魔王役のグレカ、勇者役のシザン。
いつ見てもすごい演技力、まるでかつての二人がそこにいるような迫力がある...っと好評である。
すごいよなぁ、まだ前半だよ?
上手くできるかなぁ、ここで名を上げれば貴族連中らとコネが出来る可能性があるし失敗は出来ないよなぁー。
思い返せばようやく大きな目標だった、名を上げて貴族らとのコネを得るを達成出来ると思うとワクワクする。
今の私にはメインキャラ達程潜在能力や才能は無く、特にこれといった権力も影響力もない。あるのはせいぜい十聖という肩書きと演劇部の主演ってことぐらい。
まだ足りない、これから始まるだろうChapter.1に現れるキャラ達相手じゃ私はきっと霞んでしまう。
モブでコソコソするのも悪くはない、しかしここはリアル。将来設計も考えておかないと社会的に死ぬのだ。
結局は現実に付き合わなければならない。
そう考えるとなんか気分が重くなるなぁ...。
(....サラ、今...大丈夫?)
ん?
(どうしたの、メリー。)
(...なんかさ、サラ緊張してるって思ったの。)
ん?
(サラの事はずっとちっちゃい時から知っているから。)
...半分当たってるかも。
なんか暗い考えになってきてたからなぁ。
(サラなら大丈夫。絶対大丈夫!私、がーんばって応援するから!!)
(応援上映じゃないから心の中で留めてね。)
まぁ、ありがと。
(あの可愛い服、期待してるよ〜?)
ブフッ!?
(な、なんで知ってんだよ!?)
(シアと私とリズで作ったからねぇ?)
(んなぁ!?) シアてめぇ...。
(大丈夫〜顔赤くなってなーい?)
(な、なってないわ!!)
(ふーん...?)
緊張が根こそぎ吹っ飛んだわ!!!あーいいだろやってやるやってやるよごらああーーー!!!
この時サフラは気づいていなかったが、後ろで裏方の人達は念話してるんだろなと察しその赤面顔にニヤニヤしていたのでした。
ーーーーーーーーーー
公演も後半に入り、いよいよ私の出番。
シアとメイクさんがすっごい衣装を手直ししてる。
あ、顔のメイクは大してしてない。
充分綺麗らしい、私モブかどうかすら怪しい存在なのに。
私は、邪神クチナシは舞台の中央から登場する。
舞台裏、数分後には表に出るこの場所に私は立つ。
すぅー、はぁー。
よし。
ーーーーー
「...なぜ...なぜだ!?我らが女神よ!!貴方様は...なぜ...人族に!!??」
「まさか...同じだったのか...!?我ら人族が讃える神と魔族が崇める神は!?」
「ありえない!!!ああ...女神よ!!嘘...嘘だとおっしゃってください!!!」
激戦の最中、彼らは知った。
己が信ずる神が、お互いが信ずる神が同じである事を。
魔王は嘆く。
勇者は愕然とする。
魔王の顔からは大粒の涙、
真実を知り、徐々に怒りを現す勇者。
「お答えを...ガーデニア様あああああ!!!」
「...どういう事だ、神よ...ケジャスよ!!!」
瞬間、ステージ中央から。
それは現れた。
黒く、美しく、お人形のようなその姿から感じるのは...絶対的な恐怖。
「あーあ。いいところだったのに。」
「お...お前は...!?」
「あ...なた...様は...!」
「我は...クチナシ。邪神クチナシ。この世界の...神なり。」
威圧が劇場を飲み込む。
劇であるにも関わらず、あまりの圧力に警備達が動揺する。
「あれが...。」
「間違いない、最も話題となっていた学園の新入生。」
「なんという力...!」
王達もその姿に震撼。
「わぁ...!!」
「ふふん、サラったらちゃんと似合ってるじゃない。」
黒と紫の生地、派手すぎないシンプルなデザイン、ゆらめくリボン。
見た目は本当に人形の様。
「ガー...デニア...様?」
「ムクゲよ....期待ハズレだったなー。」
「え...。」
「だってさー、今までの魔王がぁ、頑張って我の言うこと聞いて動いてくれたって言うのにさぁー。なーんでいい所で気づいちゃうのかなぁ?なぁーんで、手を止める?」
「...!?」
「観ていて楽しいんだよ?君達がもがき苦しみながらも生きようと必死で戦う姿が。時々天啓という形で応援してたけど...何故やめた?其方の手は既に血濡れていよう、遅くはない。争え、憎め、恨め、今からでも遅くはないぞ?」
「な...何を?」
キィンッ
「....勇者スタースよ、このナマクラはなんだ?どこを狙っている?お前も早く此奴を斬らぬか。疲れたのか?」
「ああ疲れているさ...お前のせいで...失われた命と...終わらない戦いで....もう疲れたさ!!!俺は今、倒すべき敵が誰かをようやく理解した!!!」
「...くだらん。」
クチナシは勇者を振り払う様に弾く。
「ぐあああ!?」
「...次の満月の日、この場で答えを聞こう。いい答え、期待してるよー。聞きたい事があればそん時に聞いてね。」
邪神はどこかへ消えた。
ステージは次の部へ進むため幕が一旦降りる。
幕が降りてもなお、強い拍手が聞こえる。
「ふぅ...。」
「すごーーーーい!!!」
「わっ!?」
グレカが抱きついてきた。
「何今の!学園の時よりももっと凄かった!!」
「あはは...。」
「こらこら、早く準備しなきゃだよ?」
「えー。」
第一印象は完璧だと思う。
気がかりなのはなんで警備の人達構えてたんだ?劇なのに...まさか演技力凄すぎてつい身構えたとか...なーんてないか。
次の出番まで間があるから私は堂々と休憩させてもらうよ。
「お水くださーい...、」
ピピッ
「.....!!?」
聞き覚えのある音。
あまりの事で身が止まるこの音。
「なん...で。」
「うわっ、なんだ!?」
「撮影機材が勝手に!?」
裏方に来ていた取材陣のカメラ、だがその内の一機が勝手に動いていた。
それは宙へ浮かび私を捉えていた。
そのカメラは裏の出口へ飛び去ってゆく。
「な、なんだぁ...故障か?」
「...グレカ先輩、シザン先輩。何か悪い予感がします。出番までには戻ってきます!」
「ちょ、サフラさん!?」
ど畜生が、紛れていやがった。
わかる、なんとなくだがわかる。
奴だ、熊ゴーレムを操ってたアイツが...近くに!!!
私はカメラを追いかける。
きっといる...この先に!
「あらあら、単純ね。」
私の胸から刃が突き出ていた。




