第20話 裏から観る者
「転移完了、これより後に転移してくる第五学年モネ・ヴィオロ率いるパーティの監視を開始します。」
僕は王国騎士団諜報隠密特殊部隊のアスター、
階級は少尉です。
僕らの仕事は王国騎士の中でも選りすぐりのエリートかつこの仕事に向いている者だけが慣れる超特殊なものなんです。
任務は主に人や国などを裏から監視する諜報活動や犯罪者の暗殺、容疑者の確保捕縛など、国を裏から支える部隊だ。
現在学園では、とある上級生達が成績を積むため無茶な行動を起こそうと計画しており、それを事前に気づいた彼らの行動を監視するために僕は動いているのだ。
依頼の難易度が高いから彼らをいざと言う時に守る....と言うのもあるが、それなら普通に騎士団を派遣したらいい。
真の目的は監視そのもの。
僕達暗殺部隊は命令一つで誰であろうと親友だろうと疑い調査する。
そいつがこの国に不利益をもたらそうなら僕は斬る事を構わないと命令を受けている。平日授業を公欠してまでこの依頼を受けて事態を抑えようとする姿勢は良いけど、それが奴らが良い奴だって言う判断にはならない。
個人的に気になるのはサフラ・アコニリン。
奴が入学し起こした事態が十聖の設立に繋がった。聞くところによれば60体近くの襲撃をたった一人で倒したという。それは奴が何かしら大きな実力を隠している証拠他ならない。
お前の動向、観させてもらうぞ...。
ガサッ
「!!」
「キッ?」
なんだ兎か、
驚かせやが............
ザクッ
「....え?」
目の前にいた可愛らしい兎が真っ赤になった。
真っ黒い何かに胴体を貫かれ赤い液体を流す。
「ッッッ.........!?!?」
私は口を押さえる。
その凄惨な光景に。
「....気のせいかな。」
今のは光魔法の影討、
発動したのは...サフラ・アコニリンか!?
バカな、このうさぎは温厚で敵意や気配が少ないはずなのに、まさか僕に気づいたのか!?
そんなはずはない、奴は一体なんなんだ!?
「みんな、行くよ。」
モネ達が動き始めた。
今は僕も追いかけないと。
ツンッ
「プギャッ!?」
っっっっっーーーーーーー!?
こけた、こけちゃった!?
...あれ、バレてない。
ってそうだ、隠密系の魔法を重ねて使ってるからバレるはずがないんだ。
いってて、今何かに引っかかった気が...あれ、何もない...?って追いかけないと....ふぎゃっ、また!?
ーーーーー
それから7回転んで8回起きた頃、ようやく彼らに追いつきその光景を目にした。
それは森の中央辺りにある広い草原の空間、中央にはギチギチとサソリが密集しているのだ。
はっきり言ってきしょい。
あれは脱皮だ、イビルスコーピオンは脱皮の時期になるとあーやって密集し、脱皮時期じゃない個体を配置したりでお互いを守ろうと生存率を上げている。
加えてあのサソリはそう言った生態が原因で増えすぎている。近頃騎士団の何人かが毒にやられ戦闘が出来ない、専門の駆除家も数の増加に追いついていない。
だから今こんなふうに依頼が出ている、
報酬金が少なくて受ける奴がおらず結果見栄を張りたい奴らが発生してしまった。
だが...あんなにいるなんて聞いてないぞ!?
なにあれ...うじゃうじゃ...ギチギチ...。1.5倍はいてもおかしくない、助けに入りたいが立場上それは出来ない。
彼女らはサソリの動向を観察中、えらいぞ!
そのまま下手な行動はするn.....
パキッ
「ん?」
「ごめんリズ、サラ、先輩。....枝踏んじゃった。」
「...あぁ。」
...嘘でしょ?
「キシャアアアーーーーーーッッ!!!!」
「あ゛ーーーーーー!!!!」
うわああああーーーーーしくじりやがたったあの女の子!えーとあれはカメリア・レッドペタルか、って考えてる場合じゃない!
ひいいいいいーーーーー!!!
彼女達は....ぅえ!?
「こっち来んじゃねぇよサソリがあああ!!」
サフラ・アコニリンが焦りながらもイビルスコーピオンの神経節や胴体に頭、それも急所の一つとなる部位を的確に斬りつけている。
流石は最年少の十聖と言うべきだが、サソリは生態上脳やどこか一箇所潰しただけでは死なない。やるならば水没や焼き尽くす、または全身を潰すなど徹底しないと簡単には死なない。
種類によっては自爆し毒の爆弾を破裂させる種類もいると聞く。イビルスコーピオンは違うがやるならば徹底しないと....
ジュウ......
「ん?」
...斬り口が溶けて神経を焼き溶かしている!?
これは...酸か!
それだけじゃない、神経に強い麻痺作用が起きているあたり麻痺毒も含まれている。
なんだあの剣、凄まじい魔剣と聞いてはいたが想像以上だ。切られたら解毒薬を複数摂取しないと死に至るだろう。考えるだけでゾッとする。
「(これじゃまずいな、ちょっと不安だったカメリアは剣に魔法で炎を纏わせてるし火力自体はまだ問題ないが...数が多いな。ちょっと不安だが頼ってみるか...。)」
「モネ先輩、ちょっと下がります!」
「わかったわ!」
ん?こっちの方に向かって来て.......え?
気づけば僕の腕や足は糸が巻きつけられ動かせなかった。
「...ちょっと手を貸してください、暗殺部隊の人。兎より気配が大きくて助かりました。」
やっぱり気づいていやがったこのガキ!!?
私がこけたのはこの糸か!?
コイツ本当に何者だよーーーーーーーっ!?
「ああ大丈夫、この事を漏らしたら私も身が危なくなるので言いませんよ。ただ手が足りないので手伝って欲しいのです、予想以上に数がいましたので。」
「...!」
「何より単純実力はそちらの方が上のはずです。では。」
そう言って少し離れた位置で水分補給を堂々とかまし始めた。
...舐められてる。
僕、すごい舐められてるよね....!
ああいいだろ、いいだろう、もう吹っ切れた。
変装するが手伝ってやるよもう。
えーと緊急時用の表向き身分証は....。ガサゴソ...
「モネせんぱーい!」
「あ、戻ったわね。」
サラは水分補給し戦闘に戻ってきた。
...妙に笑顔で。
「先輩、救援です!」
「へ?」
ズバッ
「キシャアアアーーーーーッ!?」
「え!?」
「だ、誰!?」
そこには剣を持った人影。
「...僕は王国騎士団特務兵、中尉のリクスと申します。」
それはなんとも綺麗な...ボーイッシュな女性だ。
「き、騎士団さん!?」
「イビルスコーピオンの調査に来ていましたが、先程そこの彼女に救援を頼まれて駆けつけました。加勢します。」
「あ、ありがとうございます!」
「リクスさんはそっちお願いします!」
「了解しました。」
リクスの攻撃は圧倒的なものだった。
一度の斬撃でサソリの頭や尻尾などを斬り捨て確実に殺す。その太刀筋はブレが一切無く確実に命中している。
驚く事に魔法による身体強化を一切していないのだ。
凄まじい、レベル40以上は確実だろう。
「リクスさん、後ろ!」
「っ!」
背後からイビルスコーピオンが飛びかかって来た。
「よいしょっと。」
そこにサラが毒液たっぷりの剣で斬り捨てる。
「...見事です。」
「派手な魔法は使えませんが腕に自信はあります。」
「であれば右をお願いします、殲滅を開始します。」
「はい!」
この後イビルスコーピオンを2分も無く殲滅した。
ーーーーーーーーーー
「...本当に私の事は内密にお願いしますよ?それとこの件は当然本部に報告させていただきます。」
「それでいいですよ、私も死にたくないし気配に関してはそっちの落ち度ですので。」
「殴られたいの....?」
私達はイビルスコーピオンの討伐を完了した。
今は素材の確保をして報告をする前だ。
それで騎士団の人と話すと言う名目で茂みで暗殺者と話す私。
「まぁ置いといて、ご助力本当にありがとうございました。」
「はぁ....、出来ればこれっきりにしてくださいよね。私達は立場上この仕事中はこう言う事が出来ません。もう、貴方が何者なのかがますますわからなくなりましたよ...僕らの事をどれだけ知っているのですか?」
「さぁ?裏で動く部隊としか...。」
「...もういいです、さっさと学園に戻ってください、シッシッ。」
ちっ、しゃーねぇ。
そろそろ戻るか。
「みんなー!」
「話は終わったみたいね、じゃあ学園に戻しましょうか。」
ーーーーー
王国騎士団本部.....
...ふぅ。
「お疲れ様、ア...ああ、リクス。」
「そっちこそお疲れ、リブ....。」
すぅぅぅーーーーーー.......
「う、うわあああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
「え、ちょっ、リクスぅ!?」
突然大声で泣き出すアスターまたはリクス。
「私もう終わりだぁ!!!やらかした、やらかした、失敗したああーーーーー!!!暗殺者失格だよおおおおおお!!!!」
「お、落ち着いて!何があったの!?」
ギャンギャン泣き出す僕っ娘、
さっきまでの真面目な姿勢はなんだったのやら。
「この命で償ってやるぅーーーーーーー!!!!!」
「わ゛ぁーーーーーー早まるなあああーーーーーーーーーー!!!」
この後慰めるのに2時間かかったそうな。




