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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第3話「流星トロイメライ」
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チャプター5 「星祭りの夜に」2

 星祭り当日を迎えたミシュルの街は、朝から賑わっていた。普段から人通りが多い中央区の大通りは夜になって、いつも以上に人で溢れかえっていた。夕方ぐらいから大陸横断列車で各地からミシュルに着いた観光客や前乗りしていた人たちが外に出てきて、星祭りを楽しんでいた。夜になり、賑わいは更に増していく。人々の声は夜に響く。その声に応えるように、極大を控えたケルサス流星群は幾つも星を流していた。

 フィルたちがいるのは中央区の迎賓館のエントランスホールだ。

 天井から吊されている大きなシャンデリアに始まり、調度品の数々がその豪華さを表わしていた。多くの人たちが、受付を済ませたり、顔なじみと言葉を交わしたりしていて、声で溢れていた。

「それにしても……あんたのそういう服装、初めてみた気がするわ」

 ルーシーが笑いながら指摘するのも無理もなかった。

「俺だって落ち着かないけど仕方ないだろ」

 今日のフィルの服装は黒いジャケットと同色のパンツ、白いシャツに、薄いラベンダー色のネクタイと普段着慣れないものを身に付けており、髪型もいつもの無造作さなものと近いしっかりと撫でつけられていた。

「ルーシーはパーティードレス着慣れている感じだな」

「そうでもないわよ」

 肩を竦めてみせたルーシーは、長い赤い髪をハーフアップにまとめ上げ、メイクも普段以上にしっかりしていて、特に唇の赤いルージュが目を引く。ドレスも彼女の髪色に近い赤色のもので、背中をぱっくりと露出しているが、それがいやらしさがあるわけではなく見事に彼女の魅力を引き出しているように見える。

「フィル、アーティファクトは一時的に預かってもらいました。お二人の出番近くで私とレスリーが引き取ってお持ちします」

「フィルさん、早く行きましょうよ!」

 アストルムとレスリーの二人には、レセプションパーティーで使用する番い人形と共鳴の珠を運ぶのを手伝ってもらい、スタッフに預けてもらっていた。

 今回の一件を請けるときにランドリクに二人も出席できるように頼んでいたが、それをランドリクはちゃんと通してくれたらしく、アストルムとレスリーも今回のレセプションパーティーに出席することができた。二人もフィルとルーシーと同じように服装はパーティーにあったものにしている。

 アストルムは空色の髪を編み込んで後ろ側でアップに纏めている、空色よりは海色に近いシックなドレスに身を包んでいた。

 一方のレスリーは露出は控えめなオレンジ色のドレス、メイクのおかげもあってか普段より大人っぽく見える。

「ルーシー、あとでトニーさんにお礼を言っておいてくれないか。俺の分だけじゃなく、アストルムとレスリーのドレスやメイクまでしてもらって助かったよ」

 今回トニーが、フィルが着ているジャケットも、女性陣三人のドレスとメイクアップ含めた用意や準備までしてくれた。本来、参加者の誰かが準備しておくべきことだったが、アストルム以外の全員がアーティファクト作りで手一杯だったので手が回っていなかった。アストルムに頼んでおけばよかったのだが、フィルにその余裕すらなかった。トニーが前日にアルスハイム工房に来てくれなかったら、今日をバタバタで迎えるところだった。

「トニーさんもレセプションパーティーに参加するから自分で言いなさいよ」

「そうするよ。それにしてもこの迎賓館もそうだけど、場違いな気がしてならないな」

 エントランスを見回すだけで何人もの著名人の姿が確認出来た。魔法理論学の権威であるダスティン・サンダース教授、アーティファクトの先端研究者のチャールズ・ファロン博士などフィルでも知っている人物の姿があった。それだけでフィルは内心興奮状態だった。本当は声を掛けて話を伺いたいところだがそれを自制する。他にも新聞や雑誌で写真や名前を目にする著名人を多く見かけた。

「私だって同じよ。――ほら、早く大ホールに行きましょ」

 先陣を切って歩き出したルーシーの後を追って迎賓館の奥へ進む。時折、耳に入ってくる会話は、政治や投資など、フィルたちが普段いる世界と異なるものだった。大ホールに着くと既に多くの来賓の姿があった。

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