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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第3話「流星トロイメライ」
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チャプター4 「見えなくても伝わるもの」6

 ランドリクは話を切り上げて歩き始めた。フィルたちもその後に続く。しばらく歩いてバロンド山中腹にある鍾乳洞に辿りついた。

 入り口は三メートルほどの高さがあり、中は薄暗い様子だったフィルがリュックから魔導ランタンを取り出そうとしたところをランドリクが止めた。

「ランタンはちょっと待ちな」

「え、でも、鍾乳洞の中までは明かり入ってないですよ」

「大丈夫、大丈夫」

 困惑するフィルたちを余所にランドリクは中へと入っていく。フィルたちもその後に続いて鍾乳洞へと足を踏み入れる。入り口に比べて、内部はかなり大きく二十メートルぐらいの高さがあり、幅も百メートルほどあった。鍾乳洞の中は外よりも気温が低く肌寒さを感じるぐらいだった。しばらく歩くとランドリクが待てと言った言葉の意味を理解した。

「すごい」

 ルーシーが感嘆の声をあげるのもムリがない。

 薄暗いはずの鍾乳洞の中に光があった。

 鍾乳洞内の壁や地面が所々、淡く発光していた。

 フィルは光源の正体に気が付いた。

「そうか、蛍苔か……」

「この光景を見せておきたかった」

 鍾乳洞内に生息している蛍苔はその表面に僅かな発光物質があり、僅かな魔力で淡い光を生み出している。その光景はさながら鍾乳洞内の小さな星空のようだった。幻想的な光景に思わず息を飲んだ。

「さて、奥へと進もう。ここからは魔導ランタンが必要だ」

 魔導ランタンに魔力を流し込むと、内蔵された魔石が光を放ち、鍾乳洞を照らす。

「足元、気をつけろよ。でっぱりはもちろん、先日の大雨で水たまりとかもあるからな」

 魔導ランタンの灯りを頼りに、天井や地面に形成されている鍾乳石に気をつけながら奥へと進んでいく。

 鍾乳石は一センチ成長するのに百年ほど掛かるとも言われている。フィルの視界に点在する一メートルを越す立派な鍾乳石は、この鍾乳洞がどれほど長い時間存在しているのかを示していた。

 三人の足音が鍾乳洞に響く。時折、足音や気配に驚いたコウモリやトカゲが姿を現して、その度にルーシーが小さく悲鳴を上げていた。奥に進むほど、気温が下がり、ルーシーが両腕をさすり始めたので、フィルは自分が羽織っていたものを貸した。

 迷いなく奥を目指すランドリクについて歩き一時間ほど経った頃、ようやく鍾乳洞の最奥に辿りついた。

 そこは半球状の空間で、その中にいくつもの岩石が転がっていた。

「ここにあるのが、双子岩ですか?」

 フィルは転がっている岩石を指差して確認した。

「ああ。全部じゃないがな。鉱石系素材は新たな鉱脈などが見つかるまでその絶対数は増えないから、必要分だけ採取してくれ」

「双子岩って、ペアが決まっているんですよね?」

「そうだ。こうやって岩に魔力を込めると」

 ランドリクは地面に転がっている小さな双子岩を手に取ると、それが淡く光った。

「あー、あった。アレがこの岩のペアだ」

 彼が指差す方に転がっている双子岩が光を放っていた。あれがランドリクが魔力を流している双子岩とペアになっているものということだ。

「必要個数分の双子岩のペアを見つけるとなると大変ですね」

「いや、その必要はない」

 ランドリクは適当にもう一つ、双子岩の欠片を拾って魔力を込めると、先ほどとは別の双子岩が発光した。彼が離れていくと、二つの双子岩の光が徐々に小さくなっていき、やがて消えた。

「双子岩がペアと共鳴できる距離は、あー、十メートルぐらいか? この状態で俺の手にある欠片二つに魔力を込めると、この二つが新しいペアになる」

 フィルとルーシーが、ランドリクに近づき、彼の手にある双子岩の欠片を確認すると、確かに二つとも発光していた。

「ペアの書き換えが可能なのは知りませんでした」

「素材屋で売る時は一組セットで売ってるから、この特性を知らない魔導技士も多いんだよ。お前らに必要な量なら転がっている双子岩で十分だろう?」

「ええ、小石程度のものを拾っていきます」

「じゃあ、拾って帰るか」

 フィルたちの目的は番い人形の関節部と自身の関節を連動させることにある。脚部と腕部、それに首などに使うことを考えると、双子岩の欠片は番い人形二体分で十三組は必要になる。

「これで大丈夫か?」

 ルーシーは双子岩の欠片が入った革袋を確認して頷いた。

「大丈夫よ、帰りましょう」

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