表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第2話「星に選ばれた子」
46/146

チャプター5 「魔法使いの誕生」1

 ルブシーチの街はイディニア西部に位置している。この街の多くの住民はミシュルを始めとしたイディニアの大都市へと働きに出ているため、大陸横断列車や各都市への乗り合い馬車など多く出ている。

 フィルたちがそんなルブシーチに着いたのは、ミシュルを出発してから丸一日と少しが経った頃だった。

「わかっていても、丸一日列車で過ごすのも結構大変だな」

 列車から降りて、駅の改札を抜けたところでフィルは背中を伸した。

「それでも一等車だからいい方ですよ。二等車だとベッドが固いので身体中バキバキになりますよ?」

 隣でレスリーが苦笑している。

「エレナちゃんは大丈夫かい?」

「私は大丈夫です。ただ遅くまでいろいろやっていたので眠いですけど」

 そう言ってエレナは欠伸を噛み殺した。

「まだここからアンテサリアの森まで行かないといけないから長いよ。道中の馬車で寝てな」

 さて。と駅から出て、アストルムの姿を探す。彼女にはアンテサリアの森に向かう馬車を探してもらっている。

 あたりを見渡してアストルムを見つけて、手を挙げる。

「アストルムー!」

 声を掛けると彼女はこちらに気が付いて、こちらに戻ってきた。

「アンテサリアの森に行ってくれる馬車を手配できました。こちらです」

 アストルムについていくと、一台の馬車の元に着いた。

「おー、あんたたちかい。そこのお嬢さんから話は聞いてるよ。アンテサリアの森に行きたいんだって?」

「そうなんだよ、どのぐらい掛かる?」

「時間か? 料金か?」

「どっちも」

「アンテサリアの森までは半日掛からないだろうから今から出れば夕方には着くよ」

「ちなみに森の奥に湖があるって聞いたけどそこまでどのぐらい掛かる?」

 フィルが確認すると、御者は右手で顎を触りながら、

「あー、馬車で行けるのは森の入り口まで。入り口から歩いて1,2時間だな。あんなところになんか用事があるのかい? そんな子供まで連れて。アンテサリアの森なんてただでさえ、なんもないのに」

 御者はエレナを見て顎でしゃくって見せた。

「イディニア国内の自然調査をしてるんです」

「学者さんかい? それは結構なことで」

「アンテサリアの森近辺で宿場とか一晩泊めてくれるところあるか?」

「馬車で少し行けば、俺が知ってるやつが経営してる宿場があるよ」

「助かるよ。なら、アンテサリアの森まで、その宿場、宿場からルブシーチまで頼めるか?」

「まいど」

「じゃあ、料金だけど」

 フィルは御者と料金交渉を始めた。移動手段、今日の宿泊先の確保ができるなら多少値が張っても許容範囲内だろう。

「このぐらいでどうだ?」

 多少は高くてもと考えていたが御者が提示したが金額は想定よりも高いものだった。

「さすがに高いでしょ」

 と何度かやり取りして、料金がまとまった。

「じゃあ、さっそく行きますか。――お嬢さんたち荷物は俺の方で積み込みますよ」

 仕事が決まって上機嫌な御者は率先してアストルムたちの荷物の積み込み始めた。

 準備が整ったところで馬車に乗り込んだ。

 快調に進む馬車に揺られながら、アンテサリアの森に着くのを待っていた。揺れ具合が眠気を誘ったのかエレナはすぐに眠りに落ちて、静かに寝息を立てていた。アストルムは読書に耽っていた。レスリーはと目を向けると、彼女はうとうととし始め、首がゆっくりと上下していた。

「アストルム」

 小さな声で向かいに座っているアストルムに声を掛けた。彼女は読んでいた本に栞を挟むとこちらを見た。

「なんですか?」

「他の二人がこの状態だからさ、少し話し相手になってよ」

「わかりました、起こさない程度の声量でお相手します」

「アストルムは大陸横断列車で、ミシュルから出てどうだった?」

「そうですね……」

 彼女は思案するように窓の外の風景に視線を向けた。つられてフィルも外を見る。ルブシーチの街から離れ、馬車は街道を行く。街道はある程度整備されているが、そこから外れると草は生い茂げ、奥には森や山、川の流れが見える。

「……世界の広さを知りました。絵や文章を通して知っていました。それによって想像はしていました。ですが、大陸横断列車で、馬車で見る光景は想像を越えるのものでした。私にとって世界は、ミシュルであり、アルスハイム工房でした。だから――」

 彼女はこちらを向いた。

 ゆっくりと笑みを作り、微笑んだ。

「世界はこんなにも広かったのですね」

「まだまだ知らないことがある。本当はミシュルから出て、アストルムとレスリーをいろいろなところにつれて、俺自身も含めて見聞を広める機会は作りたい。でも、魔導技士の仕事、工房運営を考えたら難しいんだ」

「いろいろなところに、足を運べるといいですね」

もしよければ、ブクマや評価、いいね!を頂けるとモチベーションに繋がりますので、お願いします。読了でツイートしていただけるだけでも喜びます!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ