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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第2話「星に選ばれた子」
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チャプター4 「旅立ちの日」4

 朝から夜まで賑わいの声が聞こえるミシュルだが、早朝のこの時間はまだ街全体が眠っている。日の出まではまだ少し時間があって少し肌寒い。フィルはレスリーとアストルム、そしてマリスと一緒にエレナの家に向かっていた。マリスを除いたフィルたちは大きめカバンにアンテサリアの森に向かうために準備した荷物を詰め込んでいる。エレナを送り届けるだけなら、それほど準備はいらないが霊脈とされるアンテサリアの森では守護獣との戦闘が想定されているため、フィルも腰のポーチに夜染(よぞ)めの箱、指には星加護の指輪をしている。

 エレナと彼女の家の前で合流して、大陸横断列車の始発に乗って、アンテサリアの森の近くルブシーチの街を目指すことになっている。

 住宅街をしばらく歩いていくと、

「あれが、エレナちゃんの家です」

 先頭を歩いていたレスリーが、一軒の家を指した。

 二階建てで、庭付きの白い家だ。

 フィルは懐から懐中時計を取りだして、時間を確認する。約束の時間には少しばかり早い。

「時間より早いか」

「遅れるよりはいいさ」

「マリスまで来ると思わなかった」

「ミシュルから出ることはできないけど、彼女の旅立ちを見届けたいからね。今日は早起きした分、お店はお休みだけどね」

「よっぽど、あの子のことを気にしているんだな」

「私も魔法使いになったばっかりの頃はたくさん苦労した。だからこそ、同族として出来る限り手助けしてあげたいのよ。彼女と長い時間を過ごすのは私やラピズだと思うから、少しでも仲良くなっておきたいじゃない?」

 マリスがそう言うと、玄関のドアが開いた。

 小さな女の子が大きなトランクを片手に持って出てきた。

「すみません、お待たせしました」

「丁度時間ですので問題ありません。エレナさん、トランクをお持ちします」

「あ、お願いします」

 エレナはアストルムにトランクを渡すと、彼女が重そうに持っていたトランクをアストルムは軽々と持った。

「もういいのかい?」

「えっと……はい、大丈夫です」

「そうだ、頼まれていた封映玉手に入れたよ。今、渡そうか?」

 フィルがルーシーに頼んでいた封映玉は必要だった4個を手に入れることができた。彼女がアルスハイム工房に封映玉を持ってきてくれたは二日前の夕方頃だった。相変わらず疲れ切った顔で「ほら、どうにかしてきたわよ」と封映玉が入った袋を差し出してきた。彼女にお礼をいうと「別にいいわよ、頼まれたことをやっただけだから」と言葉を残して代金を受け取るとすぐに帰っていった。

 今回の件はルーシーに借りだと思っている。だから、いつか彼女に返す時が来たら、その時は彼女の力になろう。

「いえ……あとで列車の中でお願いします」

「じゃあ、大陸横断列車の駅までいこうか。あと三十分ぐらいで始発だ」

「はい、行きましょう」

 歩き出したその時だった。

「待ちなさい。エレナちゃん、どこにいくつもりなの?」

 声は後ろからだった。

 怒気を孕んだ声だった。

 振り返れば、エレナの自宅の玄関前にカミラの姿があった。薄手のカーディガンをパジャマの上から羽織って、両腕を組んでいた。

「ママ……」

 呼び止められたエレナは足を止めた。

「エレナ、戻りなさい。家出でもするつもり? それにしては大きい荷物ね。――フィルさん、レスリーさん、あなたたちもなんなんですか? うちの娘の家出を手伝うつもりですか? それとも誘拐ですか? どちらだとしてもこの時間に未成年を連れ出したことで、警察を呼びますよ」

「すみません。待って下さい! 誤解されているのではないですか」

 怒りの形相のカミラに慌てて、弁明をしようとする。

「私たちはエレナさんから――」

「言い訳はいりません」

 これは誤解以前の話じゃないか。

 話が食い違ってるわけでもなさそうだ。

 隣にいるエレナに

「……ご両親に話してなかったのか?」

 小さな声で確認した。

「すみません……」

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