チャプター4 「星と魂の煌めき」26
アストルムが目を開けると、そこは見慣れた天井だった。
ゆっくりと身体を起こす。
「……工房ですね。先ほどまで、フィルがそばにいたはずなのですが……」
自分の記録情報を参照するが、最後の記録がプロタクラム都市群遺跡で竜と対峙したところまでしかない。
だけど、自分が確かに覚えていることがある
オルフェンスの対岸に、フィルが迎えに来てくれたことだ。
誰にというわけでもなく、アストルムは頷いた。
ベッドから降りると、窓の外を見た。
夜から朝へと徐々に染まり始めたミシュルの街が見えた。
静かにリビングに降りていく。
そこにはラピズがソファに座っていた。彼女はアストルムの姿を見ると、ニヤリと口元に弧を描いた。
「あの小僧は上手くやったようじゃな」
声量はとても小さいものだった。それはブランケットに包まって眠っているレスリーとマリスに対する配慮だろう。
「ラピズ様、いらしていたのですね」
「マリスの頼みと、それにアルスハイム翁に、何かあれば頼むと昔に言われておるからの。マリスも小娘も先ほどまで起きていたいたのだが、ご覧の通りじゃよ。――ほら、二人とも起きろ」
ラピズは二人を起こそうと揺すってみる。
「あと……五分……」
「ラピズ……どうしたの……」
マリスにしては珍しい寝ぼけた声だった。しかし、彼女はアストルムを見ると、状況を理解したようだった。
「おはようございます、マリス様」
「アストルム、身体や疑似魂含めて大丈夫?」
「はい、問題ありません」
「小娘、いい加減起きろ」
ラピズはなかなか起きないレスリーの頬を抓った。
「いっった!!!! なんですか!? って――」
「おはようござ――」
アストルムが言葉を言い終えるよりも、早くレスリーが抱きついてきた。アストルムの身体が倒れこみそうになった。
「アストルムさん! アストルムさん!!」
震える声。
彼女の顔を見れば、いくつも大粒の涙が零れていた。
アストルムは行き場に困っていた両手で、レスリーをそっと抱きしめた。
「レスリー……ありがとうございます」
「よかったー!!」
いつもの元気な声を聞いて、アストルムは胸の奥がなぜか温かくなったように錯覚した。
「さて、向こうにも伝えてあげないと。――フィル、聞こえる? ああ、よかった。アストルムが目を醒ましたわよ。お疲れさま」
もしよければ、ブクマや評価、いいね!を頂けるとモチベーションに繋がりますので、お願いします。読了でツイートしていただけるだけでも喜びます!!!




