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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第4話「オルフェンスの対岸」
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チャプター4 「星と魂の煌めき」20

「ありがとう」

 しばらくマリスと話ながら進んでいると、声を届ける者(カリオペイア)の光が弱くなった。

『それ……ジェームズ翁……は……』

「マリス? 声がはっきりと聞こえない」

『……もう……そろ……ね……しっか……フィル……』

 マリスの声がそれっきり途切れた。

 エリシオンの門を潜ってから遠くに来たのだろう。

 マリスとの会話のあと、どれだけ走っただろうか。

 竜との戦いの後、走り続けた足には疲労が溜まり、動きも鈍くなった。

時折、歩くことで息を整えて、また走り出すということを繰り返した。

 何もない空間では時間を把握することができない。

 数十分、数時間、数日だろうか? いくら走っても、景色に大きな変化がないことが余計に時間感覚を曖昧にさせていた。

 終わりが見えない。

 肌寒さが孤独を加速させる。

 ただ走る。

 走るしかない。

 無心で走る通路は、時に上へ、時に下へ、或いは左右へと方向を変えていく。

「あれは……?」

 視界の奥に、白い何かが見えた。

 近づいてくると、白いものはドアだとわかった。

 ぽつりとドアがある。

 ドアの近くまでくると、フィルの耳に何かが聞こえた。

「波の音?」

 ついに幻聴が聞こえたのかと、耳を澄ませば、やはり波音が聞こえた。

 ドアノブに手を掛けて慎重にドアを開けた。

 フィルの視界に、青い海と白い砂浜、そして星空のようなものが広がった。

 周囲を見ると、波打ち際に佇む一人の女性――見間違えるはずがない空色の髪をしたアストルムがいた。

「アストルム!」

 彼女の名前を呼んで走り出す。

 アストルムの視線が水平線からこちらへと向いた。

「迎えが来たようだよ、アストルム。僕はここでさようならだ。君に逢えてよかった」

 誰かの声が聞こえた。

 聞き覚えがある、しかし、フィルが浮かべた人物と違う誰かの声だった。

 だが、その声の持ち主はアストルムで隠れているのか、見ることができない。

 彼女はいつものと同じ落ち着いた表情で佇んでいた。

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