チャプター4 「星と魂の煌めき」17
魔石を放り投げながらフィルは、二頭目の竜の攻撃を耐えているセリックを見ていた。一頭目の竜を倒すために全力を出していたセリックは、ボロボロだった。それでも彼は竜の攻撃をいなしていた。
「マリス、まだか!?」
その質問に答えるかように、声を届ける者から声が聞こえた。
『フィル、聞こえる? あと十秒もすれば私の極大魔法がそっちに着弾するから全力で逃げなさい』
それを聞いたフィルは、声を張ってセリックに呼びかける。そして自身も退避する。
「セリックさん、そこから離れて!」
竜の爪を剣で押し返し、セリックは竜から離れた。
「こっち!」
走り込んできたセリックに抱えられる形になる。
彼は竜に視線を向けたまま、アイギスの盾を構えて、城塞障壁を展開した。
フィルの視線の先、夜空が渦巻くように歪んだ気がした。
「来るぞ、備えて」
光だ。
いや、光の柱、あるいは光の奔流なのかもしれない。
夜空から光が竜へと降り注いだ。
「――!!」
竜が、咆吼を上げた。
巨体が光に押し潰されて、そして飲み込まれていく。
しかし、その咆吼すら光の飛沫にかき消されるようだった。
マリスが放った極大魔法の余波で飛ばされてくるいくつもの残骸が、城塞障壁にぶつかる度に弾かれて、後方へと飛んでいく。
やがて、光の瀑布が収束すると、そこにいたはずの竜の姿は消えていた。
「……これが極大魔法」
フィルの口から、その言葉だけが洩れた。
魔法使いが使う、大魔法、極大魔法を知識として知っていた。マリスが行使した極大魔法が、これほどの威力だとは想像だにしなかった。しかも、マリスはこの場におらず、ミシュルから正確に竜に命中させたことに驚きを隠せなかった。
『どう? 竜を倒せた?』
マリスの声は、料理の出来でも確認するかのように、軽いものだった。
「本当に一撃で……」
「僕があれだけ苦労して相手をしていた竜を、たったの一撃で倒すなんて……称賛よりも、自分の未熟さを思い知らされる気分だよ」
『私たち、魔法使いは人の理から外れているのだから、セリックがショックを受けることはないわ。――フィル、竜を倒して終わりじゃないわよ』
ここからは自分が為すべき事を成す番だ。
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