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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第4話「オルフェンスの対岸」
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チャプター4 「星と魂の煌めき」16

「今日はこんなに素敵な夜で助かったわ。――二人とも下がって」

 マリスは大きく息を吸い、夜気を体内に取り込む。

 ゆっくりと息を吐き出す。

 呼吸を整え、集中力を高める。

 マリスの意識からミシュルの街の音が消える。代わりに心臓の鼓動が、体内を循環する血液の流れが、聞こえてくる。

 さらに肉体という境界線を取り払い、意識を自分の身体の外側へと拡張していく。

「“あなたがどこにいても、同じ星を見ていることでしょう。

 わたしがどこにいても、同じ月を見上げているのでしょう。

 この夜空があなたとわたしを繋いでいる。”」

 詠唱をしながら、フィルとセリックがいる場所を正確に探す。遠隔地にある他者の魔力を直接探知することは、砂漠で針を探すようなものだ。しかし自分自身の魔力であれば、可能になる。それでも難しいことに変わりないが、マリスにとって幾分もマシなものだった。こういう事態を見越したわけではないが、声を届ける者(カリオペイア)に自分の魔力を多少付与しておいた。

 だから、声を届ける者(カリオペイア)に付与した自身の魔力を探っていた。

 見つけた。

 魔石を起点にフィルとその周囲の魔力の流れを把握する。


 ――魔力濃度が高いわね。雑音になって仕方ないわ。


 大きいな魔力が一つ、その周囲を小さい魔力が二つが動き回っている。大きいな魔力が竜だろう。

 マリスが対象を定める。

 張り詰めた空気の中、レスリーが声量を絞ってラピズに聞いた。

「ラピズさん、マリスさんって……すごいんですか?」

 彼女の質問を鼻で笑うラピズの声が聞こえる。

「これだけ星が輝き、満月が浮かぶ夜に、あやつに勝てる魔法使いなぞ、わらわが知る限り誰もおらん。星と月の光を、そして夜の冷たさや闇を、星と夜を構成するあらゆるものを魔法として行使できる。それができる魔法使いは他にいない。だから、魔法使いは、マリス・ペリドットに敬意を込めて、星と夜の魔法使いと呼ぶのじゃ」

 魔法陣の周囲に淡い光の粒子が幾つも立ち上る。

 空気中に含まれる微量な魔力が、マリスに反応し、共鳴し、震える。それはやがて空気の流れを作り、風になる。

「“月の雫を集めましょう。

 星の光を集めましょう。

 それはあなたの手からこぼれ落ちるほどの光になるでしょう。”」

 渦巻く魔力がマリスに収束する。

 外部から取り込んだ魔力を体内で循環させていく。

 やがて、その魔力を一点に集める。

 杖を月と星空へと向ける。

夜空の全てをあなたに(オール・ユアーズ)

 詠唱を終えると、杖から眩いばかりの光が空へと放たれた。ラピズが張っていた遮蔽結界を突き破り、月と星の下を閃光が飛び、夜空に飲まれていった。

 マリスは空を見上げて、そして視線を二人に戻した。

「終わったわ」

「さすがじゃ」

「久しぶりに極大魔法を使ったから疲れたわ」

 声を届ける者(カリオペイア)を手にする。

「フィル、聞こえる? あと十秒もすれば私の極大魔法がそっちで発動するから全力で逃げなさい」

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