チャプター4 「星と魂の煌めき」15
アルスハイム工房の裏庭、満月と星が広がる夜空の下で、ロープを羽織り、杖を持ったマリスは渋い顔をした。
声を届ける者をしまって、マリスの様子を眺めているラピズに声を掛けた。
「予想通りの展開よ」
「そうか」
「ラピズ、付き合わせて悪いわね」
「よい。お主の魔法を拝めるのであれば、この程度の遮蔽結界ぐらい安い物じゃ」
アルスハイム工房の周囲には、薄い膜のようなものが張られている。これはラピズが展開した遮蔽結界だ。今は結界以外からアルスハイム工房で起きていることを見ることはできず、それは五感情報だけでなく、魔力の流れすら知覚することができない。
マリスは杖の先端に特殊な塗料を付けて、複雑な紋様を描いていく。
「マリスさんは何をされてるのですか?」
「魔法陣の構築じゃ。極大魔法を行使するにはこういった陣を用意し、魔力を研ぎ澄ませ、詠唱し、発動させる必要があるのじゃ」
「手間は掛かるけどその分威力は保証されるわ」
「さっきマリスも言っておったがこの遮蔽結界でも、極大魔法の発動直前までしか誤魔化せん」
「でも、大規模な魔力の流れを感知されるのを遅らせられるわ。それだけでも十分意味があるわ」
マリスとラピズがイディニアと契約している内容には、大魔法と極大魔法の無断行使不可が含まれている。そのためこれからマリスがおこなおうとしている行為は、その契約に違反する形になる。
魔法陣の構築を終えて、マリスはその中心に立った。
そして夜空を見上げた。
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