チャプター4 「星と魂の煌めき」14
竜は、フィルを迎え撃つように、頭を下げ、咆吼で威嚇する。
空気が震える。
怯むわけにいかない。
魔法使いと戦おうと、狼の姿をした守護獣と戦おうと、そこに恐怖心がなかったわけがない。それでも戦うことができたのは、アストルムがいてくれたからだ。
今、隣にアストルムはいない。
竜が左前脚を大きく振り上げた。放たれた爪撃を前のめり気味の姿勢でフィルは滑り込みながら回避する。頭の僅か上を爪が通り過ぎていく。
彼女を助けるために、一歩でも前に進まなければいけない。
眼前に亀裂が入った竜核がある。
無我夢中で、竜殺しの氷結剣を振るった。
「っあああああ!!」
閃光爆ぜる中、フィルは力を込める。
そして、その時がきた。
割れる音が小さく鳴り、赤い竜核が真っ二つに割れた。
竜は咆吼を上げる。
巨体を作っていた魔力がサラサラと風に舞った。
「はぁ……はぁ……やった……やった!」
竜殺しの氷結剣を杖代わりにして息を整える。
「やったな、フィルくん」
自身もボロボロのセリックは、そう言って、フィルの背中を叩いた。
その反動でフィルは倒れ込んだ。
フィルは身体を動かして、大の字になって、満点の夜空を見上げた。
「全身が悲鳴上げてますよ」
「それは僕も同じだよ。でも、これで勝ったわけだから、この痛みも勝利の証みたいなものさ」
『……ル……フィ……フィル聞こえる?』
声を届ける者からマリスの声が聞こえた。
「ああ、マリス。今、竜を倒した。これで……」
『喜びに水を差すようで言葉にするのも心苦しいわ。あの伝承は――』
フィルの身体に影が落ちる。
そして、咆吼が聞こえた。
「……嘘だろ……」
身体を起こしたフィルの正面に、それはいた。
「――!!!」
右目を負傷している竜だ。
『倒すべき竜は一頭じゃない。二頭いたのよ』
「目の前に現れたよ」
『最悪ね。――五分……いや、三分稼げる?』
「やるしかないか。けれど、三分稼げるかわからないぞ?」
「俺も手伝います」
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