チャプター4 「星と魂の煌めき」13
フィルの視線の先に竜殺しの氷結剣がある。
セリックの声が聞こえた。
「フィルくん! 君がやれ!」
フィルの身体は、その声よりも先に動いていた。
竜殺しの氷結剣を拾う。
魔力を込めて、氷の刃を作ろうとする。だが、いっこうに剣身が作られない。フィルは竜殺しの氷結剣を確認する。
「握りの作った容器が壊れてる……」
高濃度の魔力水が生成することができないのだから、いくら氷魔法が発動しようが意味が無い。
「そんな……」
フィルは打ちひしがれるが、竜はそれを許してくれない。
荒れ狂う竜は爪や尻尾を向けてくる。
それを寸前でどうにか躱していく。
しかし、無傷で済んでいるわけではない。
爪先が身体を掠め、傷を作る。
尻尾が床を叩き、石が飛び、頬に一筋の傷を付ける。
「いや、まだやり方はある!」
エリシオンの門に向かって走る。
竜は、逃がすものかと炎弾を撃ち出す。フィルの足元に何発か着弾する。床が破裂する衝撃でフィルは転倒する。すぐに起き上がり、再び走り出す。
「これでもっ!」
腰のポーチに手を突っ込み、無造作に魔石を取りだす。魔力を込めて起動させて、竜目がけてに投げつける。
だが、竜は魔石による攻撃に怯むことなく、長い尻尾を振った。
対物理障壁を展開する。
しかし、竜の尻尾の威力に耐えきれず、フィルの身体が吹き飛ぶ。
フィルの身体はゴロゴロと転がる。
対物理障壁のおかげで直撃自体は避けられたが全身に痛みが走る。
うつ伏せで呻くフィルの指先に、水が触れた。
竜に吹き飛ばされたことで、エリシオンの門の周囲にある魔力水のすぐ近くまできていた。
身体の痛みに耐えながら立ち上がる。
竜殺しの氷結剣の柄を魔力水に突っ込む。魔力を込めて起動させる。魔力水の生成はできなくても、剣身を作り出すための機構は生きていた。
この遺跡には潤沢に魔力水がある。それも発光するほどの高濃度のものだ。竜殺しの氷結剣が魔力水を生成できなくとも、それを利用すればいい
柄を引き抜くと氷の剣身が姿を現した。
「これで!」
フィルは竜殺しの氷結剣を携えて、竜へと走り出す。
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