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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第4話「オルフェンスの対岸」
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チャプター4 「星と魂の煌めき」11

 竜の武器は爪と尻尾といった巨体だけではなく、魔力を用いた簡易的な魔法の行使も可能だ。例えば、炎の弾がそれだ。

 しかし、今、セリックの眼前で起きているのは、魔法行使とは違う。

 竜の口腔に魔力が集まり、凝縮されていく。それは魔法ではなく、ただ魔力を放出するための動きだ。

 直接、竜と対峙したことがないセリックでも、その攻撃を知っている。

 数多くの英雄譚と神話に登場し、英雄たちを苦しめた竜が放つ最大の攻撃。

竜の息吹(ドラゴンブレス)!」

 竜から色彩鮮やかな光が放たれた。

「間に合え!」

 セリックが用意した盾の名前は、アイギスの盾だ。

 アイギスの盾を起動する。

 障壁が展開される。

 それは対人に用いられる対魔法障壁や対物理障壁ではない。城塞障壁フォートレスガードと呼ばれ、都市防衛戦に使われる障壁である。本来は多人数の魔力を使い広域に展開するものだ。

 当然、セリックひとりの魔力で起動できる代物ではない。出力を落として、さらに展開範囲を絞ることで城塞障壁の起動を可能とした。

 それでも、セリックが通常展開している対魔法障壁や対物理障壁よりも格段に高い強度を持つものだ。

 竜の口から放たれた極光により魔力と光の奔流が生まれる。

 盾を構えるセリックの視界が真っ白な光で埋め尽くされる。

 展開した城塞障壁がバチバチと音を鳴らし、魔力を散らし、光の欠片をいくつも作り出す。

 城塞障壁は攻撃の威力に応じて、その強度を増す。しかし、それにはアイギスの盾を使用している人間――セリックにより多くの魔力を要求することになる。

 魔力を絞り出すように、セリックが声を上げる。胸の、さらにその奥が焼き付くような錯覚を覚える。

 セリックの身体がずるずると後方へと押し込まれていく。

 負けられない。

 自分は、宣言した。

 竜に勝つと。

 嘘になんかしない。

「負けて……たまるか……!!」

 竜の息吹がセリックを飲み込んだ。

 夜を照らしていた竜の息吹が収束した。

 土埃の中、セリックは片膝をついていた。

「はぁ……はぁ……」

 纏っていた鎧は何カ所も穴が空き、構えていた盾はそのほとんどを失っていた。そんな状況でもセリックが片膝をつく程度のダメージで済んでいたのは奇跡と言える。

 竜の息吹を受けた城塞障壁は崩れ落ちたが、すぐに対魔法障壁を展開して、どうにか致命傷を防ぐことができた。対魔法障壁で受け止められたのは、竜の息吹の威力を城塞障壁でほとんど減衰できたからこそだった。

 しかし、竜の息吹に対抗するために展開した城塞障壁には、多くの魔力を消費した。その反動か、セリックの鼻から一筋の血が流れる。頭の奥で、鈍色の味がするような錯覚がある。

 アイギスの盾は、城塞障壁の展開で生じた内部機構の熱を外へと逃がすため、夜気へ排気する。

 再度の展開はすぐには無理だろう。

 もう一度、竜の息吹を撃たれる前に、決着を付けなければならない。

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