チャプター4 「星と魂の煌めき」10
「だから、これからは私が手を貸すわ。そのためにここに来たのよ」
「わらわたちの古い友人のためじゃ」
レスリーは、部屋を出ていこうとする二人の背中に、問いかけた。
「でも、マリスさんもラピズさんも、国との契約は大丈夫なんですか?」
二人は顔を見合わせて、回答の代わりに笑ってみせた。
「私たちの立場が悪くなって、金銭的な罰則を受けるでしょうね」
「それらよりも、一番の影響はイディニアとわらわたちの信頼関係じゃな。じゃが、それは小娘が気にすることではない」
「私だって積極的に契約を破りたいわけじゃないわ。だから、アストルムの危機でも私は直接手を貸すことを選ばなかった。でもね、私はアストルムを救いたくないわけじゃないのよ」
マリスのその言葉を聞いてラピズが意地悪そうな笑顔を作った。
「今回の一件で、もしも最後の最後まで、お主ら竜を倒せないなら、こやつは手を貸すつもりでおったわ。大魔法や極大魔法の無断行使は契約違反なのにな」
ラピズの言葉にマリスは居心地が悪そうに視線を外した。
「仕方ないじゃない。アルスハイム翁からフィルとアストルムのことを任されているんだから、その約束ぐらいは果たすわよ。だいたい大魔法の無断行使は、あなたの方が昔からやってるじゃない」
マリスの指摘にラピズはとぼけるように手を振って見せた。
「わらわの屋敷内でのことじゃろ。わらわの屋敷がある空間には許可がない者は立ち入ることはできんし、外から監視することも不可能じゃ。つまり、バレなきゃ問題ないというわけじゃ」
ラピズはケタケタと笑って見せた。
「これから使う極大魔法の発動は、ラピズに手伝ってもらって直前まで隠蔽するわよ。発動さえしてしまえば、こっちのものよ」




