チャプター4 「星と魂の煌めき」9
「プロタクラム王朝の時代を起点に遡りながらいくつかの時代に手を伸ばしてみた結果、オルフェンスの対岸に関わる伝承はいくつかあった。どれも竜を倒し、オルフェンスの対岸から死者の魂を連れ帰るものだ」
「私とフィルさんが知っているものと同じってことですか?」
「前にも話したと思うけど、伝承は語り継がれていくなかで微妙にその形を変えてしまうことがあるの」
「だから、伝承の源流を探した。全く、骨が折れたぞ」
「それがこれというわけね」
「えっと……?」
レスリーがガラスの板に顔を近づけて、そこに書かれている文字を読もうとした。しかし、それが一体何を意味しているのか、全くわからなかった。すぐに渋い顔をして、マリスとラピズを見た。
「なんて書いてあるんですか?」
「諦めずに読め。と言いたい所じゃが、古代語を読めというのは酷な話じゃからな。ここにはこう書かれておる」
『ここに辿りつきし者。
失った者を取り戻したければ、二頭の竜の試練を乗り越え、
門の向こう、命の満ちる海を目指せ。
そこで汝が望む者に再び会うことができるであろう』
「二頭の竜……」
レスリーはその言葉を反芻した。
「多くの伝承の中で、これにだけ二頭の竜の存在が書かれている。マリスから聞いた限りでは、エリシオンの門の門扉には二頭の竜が描かれておったのじゃろ? それと符号することを考えても、これが源流と判断してよいじゃろう。おそらく伝え残していく中で、他の伝承では消えてしまったのじゃろう」
「フィルさんとセリックさんは二頭の竜を倒さないといけないんですね」
「そうなるわね」
「でも――」
竜を複数相手にすることなんてできるのだろうか。
そんなことを想定した準備をしてきてない。
「わかってるわよ」
レスリーが全てを言い切る前に、マリスが立ち上がった。
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