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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第4話「オルフェンスの対岸」
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チャプター4 「星と魂の煌めき」7

 胸を張り、竜を見る。

 竜と対峙する。この状況は、まるで英雄譚のようではないか。

 ああ、楽しい。心が躍る。

 魔剣を握る手に自然と力が入る。

 長く息を吐いて、走り出す。

 爪と剣、炎と対魔法障壁、尻尾と対物理障壁、繰り返される攻防は洗練されたものではないが、まるで英雄譚の一幕のようだった。

 フィルが魔石を投げる度に炎、雷、氷、石礫が竜を襲う。しかし、それらは竜にダメージを与えることはできないが、時折鬱陶しそうにうなり声を上げている様子を見て、セリックは内心でほくそ笑んでいた。

 どれだけ攻防を繰り返しただろうか。アーティファクトの補助があるとはいえ、セリックの体力も消耗し始めていた。

「はあああ!」

 攻撃の度に息が上がり、自分の足の動きが鈍くなっているのを感じていた。だから、飛びかかって放った斬撃は竜鱗に弾かれ着地する際に、僅かに足がもつれた。

 その隙を見逃さないとばかりに竜が、その巨大な足でセリックを踏み潰そうとする。

 セリックは焦る表情を出さず、魔剣を横に構えて、竜の足を受け止める。全身が悲鳴を上げる。セリックの足元、石で出来ている遺跡の床が陥没する。

「あああああああああああああ!」

 身体能力強化と対物理障壁のアーティファクトを最大出力で稼働させる。皮膚がところどころさけ血が流れる。出力を上げるために自身のうちにある魔力を絞り出す。その成果、頭の奥が痛む。

「っっぅらあああああああ!」

 セリックが竜の足を弾き返す。

 竜の巨体がぐらつく。

 視線の先に、胸元の竜核が無防備にさらけ出されている。軋む身体を強引に動かして、跳ぶ。

 腰に手を回して、竜殺しの氷結剣を抜こうとする。

 だが、巻き起こった風と共に竜核が遠のいた。

 竜が背中の両翼を羽ばたかせて、空へと舞っていた。

 セリックは舌打ちした。

 距離を取られる。

 竜を見据える。

「逃がすか!!! ――魔剣アグニ完全解放!」

 柄に埋め込まれた炎の魔石が輝く。

 魔剣には装着されている魔石を暴走状態にし、一時的にその出力を向上させる完全解放状態がある。

「シリウス・ブレイズ!」

 魔剣アグニの完全解放により、その剣身に纏う炎の熱量を高め、その色を赤から白へと変化させて斬撃を飛ばす。

 この完全解放状態の行使によって、魔剣アグニの柄にに装着されている魔石は砕け散った。

 セリックの斬撃によって描かれた白炎の弧は、斬撃を撃ち出すようだった。

 神速の一閃。

 しかし、竜は翼で(くう)を打ち、回避をおこなう。

 竜の胸部へと吸い込まれるはずだったシリウス・ブレイズは、右の翼を切り落とし、背後の外壁を切り裂き、夜空に消えた。

「――!」

 咆吼を上げ、竜が落下する。

 セリックは走り出そうとしたが、その足を止めた。

 追撃を諦めたわけではない。

 また風が竜へと向かっていた。

 いや、違う。

 それは魔力の流れだ。

 この空間を満たしている高濃度の魔力が竜へと向かっていく。

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