チャプター4 「星と魂の煌めき」6
魔力濃度が高い空気が流れてくる。
あの時と同じように、巨大な門と中央の石碑とそこに続く道、それを囲うように発光している魔力水が流れている。
「竜がいない?」
「いや……来るよ」
セリックはフィルの疑問をすぐに否定した。
魔力が渦巻くような気配が頭上にあった。
視線を夜空へと向けると、魔力が収束して作られる竜の姿があった。
「――!!!」
咆吼が響く。
竜が降り立つと、その質量で遺跡が揺れた。
セリックの両眼が、竜を見据える。
「あの時の右目の傷は癒えているのか」
あれが自分にとって、確かな手応えの証拠だった。それが綺麗に消えているのことはショックであった。
だが、今回は傷一つを付けに来たわけじゃない。
あの竜を倒しにきたんだ。
竜の胸元に赤く輝く竜核がある。あれを壊す。それだけだ。
魔剣アグニを抜き、構える。
「いくぞ」
小さく、はっきりした言葉。
それに応えるように竜が咆吼し、空気を震わせる。
先手は竜だった。
竜の周囲にいくつもの魔法が展開され、それらは炎となり、弾の形になると同時に射出された。
「っ!」
セリックは対魔法障壁を起動しながら、距離を詰める選択をした。
脚のアーティファクトはセリックが得た速度を循環させて、さらに加速させる。
初戦と同様に巨木のような右前脚に向かって剣を振り上げる。
「まずは挨拶だ!」
身体能力強化のアーティファクトを起動する。セリックの上腕部に、魔力により擬似的な筋肉が生成され、さらに彼の力を増幅させる。
魔剣アグニが炎を纏う。
赤色一閃。
セリックの一撃に、竜はたまらずといった様子で声を上げ、しかし、振り払うように右前脚でセリックを蹴り上げた。
咄嗟に左手で対物理障壁を展開して、正面に構える。だが、その身が宙を舞った。セリックが姿勢制御していると、真正面から追撃の凶爪が迫ってきた。対物理障壁はまだ生きている。
対物理障壁の破砕音が鳴った。
竜の二撃目に耐えられず、対物理障壁が砕ける。
鋭利な爪はセリックを吹き飛ばす。外壁の魔石に突っ込む。
「くっそ……」
魔石の欠片に埋もれたセリックが剣を杖代わりに立ち上がる。対物理障壁のおかげで竜の爪の直撃を回避できたのは幸いだった。直撃を受けていたら、腕が使い物になっていなかっただろう。
額から流れる血を拭う。おそらく魔石の欠片で切ったのだろう、出血の割に痛みはない。指先についた自分の血を軽く舐めて、セリックは笑った。
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