チャプター4 「星と魂の煌めき」5
セリックとフィルが乗った馬車は、プロタクラム都市群遺跡近郊までの行程を概ね予定通り進んだ。プロタクラム都市群遺跡へは森を抜けていく必要があるが、馬車では森を抜けることができないため、荷物を背負って踏破しなければならない。二人がプロタクラム都市群遺跡の地下遺跡、前回、竜と戦った場所に向かう大扉の前に辿りついたのは、夜空に月が浮かぶ頃だった。
「この先だ」
「フィルくん。事前に話したように、竜とは僕が戦う。君は魔石を使った支援を頼むよ」
「わかりました。でも、効果はないかもしれないですね」
「確かにダメージは期待できない。でも、注意をそらせるから、それで十分だよ」
セリックは答えながら、身体を伸ばした。
右手には炎の魔剣、左手には盾、腰に竜殺しの氷結剣。これらがセリックが竜を倒すために用意した装備だ。
冒険者が装備して扱えるアーティファクトの総数は、自身の魔力総量と魔力操作精度に依存する。多くのアーティファクトを身に付けたところで、それらを待機状態で維持し、戦闘状況に応じて、出力調整しつつ起動できるのかどうかに掛かってくる。
それらを考慮すると、セリックが装備できるアーティファクトは、前回同様の対物理障壁や加速、魔剣に加え、対魔法障壁、身体能力強化と盾の六つまでだ。
セリックが呼吸を整えている横で、フィルが声を届ける者を取りだしていた。
「マリス、聞こえる?」
『ええ、問題無いわ。そっちはプロタクラム都市群遺跡に着いたのかしら?』
「これから竜と対峙するところだ」
『ラピズが調査してる伝承の全貌はもう少しでわかると思うからわかったら連絡するわ。あ、ちょっと待ってね、レスリーちゃんがひと言あるそうよ』
『フィルさん! セリックさん! がんばってください!』
割れんばかりのレスリーの声に、セリックとフィルは顔を見合わせて笑った。
「ああ、行ってくるよ」
「がんばってくるよ、レスリーさん」
フィルが声を届ける者をしまうのを確認して、大扉の前に立つ。
大きく息を吐いて、セリックが大扉に手を掛ける。
「いいね?」
「はい」
重たい大扉をゆっくりと開ける。
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