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アルスハイム工房へようこそ  作者: 日向タカト
第4話「オルフェンスの対岸」
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幕間 「21グラムの奇跡」2

「ジェームズ。質問があります」

 右腕が接続された上半身だけのアストルムは、作業中のジェームズにいつものように声を掛けた。

「なんだい?」

 ジェームズは金色蚕の糸を縒りながら言葉を返した。

「なぜ、私を作ったのですか?」

 質問を聞いたジェームズは作業の手を止めて顔を上げた。

 ジェームズは白髪混じりの髭を弄りながら、しばし考えて答えた。

「探究心だ。――21グラム、この数字がなにかわかるかい?」

 アストルムは、記憶情報から21グラムで連想されるものを引き出す。

 野菜や果物、調味料、日用品や文具が出てくる。

 しかし、彼の問いに対しての回答として、決定的なものはない。

 だから、否定のために首を振った。

「いえ、わかりません」

「人間が死んだときに、失われる質量だよ。老若男女問わず、等しく21グラム失われるだよ」

「その正体は一体なんですか?」

 疑問の言葉にジェームズは手を打ち、アストルムを指差した。

「それが始まりの疑問であり、そして私の探究心を掻き立てたものだよ」

 ジェームズは決して大きな声を出したわけではない。しかし、声に籠もる熱量から、彼が興奮していることは伝わってきた。

「正体を言ってしまえば、魂の質量だ。人間は21グラムを失う。他の動物でも消失する質量に差異はあれど、一定の質量が消える。じゃあ、その質量はどこに消える? 空気か? 水か? 土か? その疑問の答えを、私はマリスとラピズ、二人の魔法使いから教えてもらった」

 彼の表情には悔しさが滲んでいた。

 自分の疑問に対する答えに自身で辿りつけなかったことが心残りなのかもしれない。とアストルムは表情から推定した。

「生命は星を巡る。魂は星から生まれ、星に還る。これが魂はどこから生まれるのかを示し、そして、人がなぜ魔力を持っているのかの答えだった。この星は魔力を持っている。生命が芽吹くとき、星の魔力を纏った魂をその身に宿す。それが私たちが使う魔力の正体だ」

 だが、彼の熱を帯びた言葉は、アストルムの疑問を解決していない。

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