幕間 「21グラムの奇跡」1
「そうか。君は魔導技士の工房で働いているんだ」
「はい。まだ三年ほどですが」
アストルムはオルフェンスの対岸で出会った男に、アルスハイム工房でのこれまでのことを話していた。
「工房で働くのは楽しいかい?」
「楽しいものだと考えます」
「ならよかった」
アストルムの回答を聞いた男は満足そうに頷いた。
「じゃあ、工房で働く前はなにをしていた?」
「それは……」
アストルムは答えようとしたが、しかし、自分のことを話していいのか判断を迷った。
「話せないならそれでもいいよ」
男はアストルムの悩みを見抜いたかのようにそう言った。
「けれど、このオルフェンスの対岸では、沈黙は意味をなさないんだ」
彼の右手の上に、拳大より大きい気泡のようなものを出現させた。それは表面をさまざまな色に変えているように見えた。
「これはオルフェンスの対岸に還ってきた魂の記憶の断片が入った珠なんだ。これを割ると記憶を追体験できる」
青年が気泡を割った。
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